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第二十話:昇級試験と二ヶ月の奇跡

帝都冒険者ギルドの訓練場は、異様な熱気に包まれていた。 今日は、異例の速度で依頼をこなし続けてきた新進気鋭のパーティー、『白銀シルバー疾風ゲイル』の新人二人がランキング試験を受ける日だ。


「おい、見たかよ。あの狼娘の新しい剣……ミスリル製だぜ」「隣の赤毛も、ハルバードからヤバい魔力を出しやがる。本当に登録して二ヶ月の新人かよ」「あの『疾風のアルヴィン』が、あいつらとパーティーを組んだだけのことはあるな」 周囲のベテラン冒険者たちが遠巻きに噂する中、ルピーネとロドルフは、いつものように淡々と準備を整えていた。


「緊張してる?」 後方で見守るアルヴィンが、楽しそうに声をかける。 「……これだけ見世物にされれば、嫌でも心臓が鳴るわよ」 ルピーネが苦笑いしながらミスリル剣の柄を握り直す。一方のロドルフは肩を回しながらボヤいた。 「こっちは準備万端だよ。大体、あんたの指導が厳しすぎるんだ。連日、目的地までの往復に倍以上の距離を歩かされて、その間に余計な魔物とも戦わされたんだからな」 「あはは、あれは僕が道を間違えた……んんっ、英才教育だよ。おかげでスタミナも実戦経験も、普通の冒険者の数倍は積めたはずだ」



「試験を開始する!」 ギルド長バレンティンの号令と共に、試験用のゴーレムが起動した。魔力で強化された岩の巨躯が、地響きを立てて二人へ襲いかかる。


「ロドルフ、行くわよ!」 ルピーネが地面を蹴った。以前の安物の剣とは比較にならない軽さと鋭さ。彼女が踏み込んだ瞬間、ミスリルの刃が白銀の軌跡を描き、ゴーレムの分厚い腕を紙のように斬り飛ばした。

「ハッ!」 続くロドルフがハルバードを叩きつける。『雷光の戦斧』から放たれた白銀の稲妻が、ゴーレムの体を貫き、その核を内側から焼き砕いた。


静寂。 そして、爆発的な歓声。 本来なら数人のチームで挑むはずのDランク上位のゴーレムを、二人はわずか一分足らずで「解体」してしまったのだ。


「……文句なし。二人とも、本日付でCランクへの昇級を認める」 バレンティンが満足げに頷き、周囲に向かって宣言した。 「登録から二ヶ月での三ランク昇級。これは帝都本部の創設以来、最速の記録だ!」



「Cランク……これで、私たちも一人前ね」 ギルド証のランク表記を書き換えてもらったルピーネは安堵のため息を吐いて、ロドルフに微笑みかける。 「きゅいっ!」 ルークが興奮してフードから出てきて、白銀の鱗が煌めいた。「あれが噂の『幸運の竜』か」周囲の見学者から嘆息が漏れる。


一方、受付の隅ではザムエルが怒りに震える手で書類を握りしめていた。 「三ランク昇級だと……? そんな馬鹿な、あり得ん……!」 もはや「運がいい」という言葉では片付けられない現実を突きつけられ、彼は歯噛みをした。


「おめでとう、二人とも。これでやっと手応えのあるクエストが受けられるね」 アルヴィンらしい祝福の言葉を聞きながら、ルピーネは胸に抱いたミスリル剣の冷たさを心地よく感じていた。 だが、この快進撃が、同時に『幸運の竜』を狙う者たちの目を引き始めていることに、まだ彼らは気づいていなかった。

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