第十八話:『白銀の疾風』と受付嬢の愛
「ロドルフ様ぁ! お耳、お耳がちょっとだけ左にピクッてしたわ! ああ、もう最高……!」 「……おい、ミリー。あまり触ると毛並みが乱れる」
帝都本部の受付カウンターでは、もはや日常となった光景が繰り広げられていた。 冒険者として登録してから数週間。三人の快進撃はギルド内でも噂の的となっていた。アルヴィンの二つ名になぞらえ、いつしか彼らはこう呼ばれ始めていた。――『白銀の疾風』、と。
だが、その華々しい躍進の影には、受付嬢ミリーの凄まじい「優遇」があった。
「いいですか? 次はこの依頼です! 帝都西側の森に現れた大イノシシの討伐。報酬もいいし、何より移動時間が短い優良物件ですよ。……その代わり、帰りにもう一度だけ尻尾をモフらせてくださいね?」 「…………。……ああ、わかった。好きにしろ」 ロドルフは遠い目をしながら、悟りを開いたような顔で頷いた。その横でアルヴィンがくすくすと笑う。
「報酬を稼ぐためだ。耐えてくれ、ロドルフ。おかげで僕たちの財布はあったかいんだから」 事実、『白銀の疾風』の稼ぎは異常だった。アルヴィンの的確な指示、ロドルフの雷光ハルバード、そしてルピーネの魔導スリング。三人の力が噛み合った時の制圧力は、既に中堅冒険者のレベルを優に凌駕していた。
宿に戻り、一番広いアルヴィンの部屋に集まった三人は、テーブルの上に戦果を並べた。 「一、二、三……。ロドルフ、これでもう金貨百五十枚を超えたわ」 「すごいわね。一ヶ月前までは宿代を出すのも厳しかったのに」 ルピーネは輝く金貨を見つめながら、しみじみと呟いた。自分一人では決して辿り着けなかった場所だ。
「これだけあれば、工房のツケも払えるし、新しい武器や防具も買えるね。ルピーネ、明日は職人街に行こうか」 「ええ! 私、もっと良い剣が欲しい。今の剣じゃ、ルークの雷やロドルフとの連携についていけなくなりそうだもの」「俺も防具を新調したいな」
「きゅいっ!」 自分の名前を呼ばれたルークが、ルピーネの膝の上で跳ねる。 「そうね、ルークも一緒に選ぼう。あなたは『幸運の竜』なんだから」
一方、ギルドの隅では、『白銀の疾風』の大成功の噂を聞きながらザムエルが顔を歪めていた。 「……ケッ、モフり好きの年増に媚を売って稼いだ金かよ。いつまでその幸運が続くか、見ものだな」
そんな毒づきも、今の三人には届かない。 翌朝、彼らは意気揚々と、再びあの頑固なドワーフたちの待つ職人街へと向かうのだった。




