第十七話:ギルド長と従魔の竜
影狼の牙を手にギルドへ戻ると、受付ではミリーが今にも泣きそうな顔で待っていた。
「よかった、皆さん無事で……! ザムエルさんがあんな意地悪な依頼を出すから……」 「無事どころか、お釣りが出るくらいだったよ。はい、これ」 アルヴィンが牙の詰まった袋をカウンターに置く。その様子を遠くから見ていたザムエルは、「チッ……運のいいガキどもだ」と忌々しそうに顔を背けた。
「皆さん! ギルド証ができています。それと……」 ミリーが声を潜めて続けた。 「ギルド長がお呼びです。アルヴィン様が戻られたと聞いて、直接お会いしたいと」
ギルドの最上階にある重厚な扉を開くと、そこには白髪混じりの髭を蓄えた、眼光の鋭い老戦士――ギルド長のバレンティンが待っていた。 「早かったじゃないか、アルヴィン。報告書には討伐完了から帰還まで三十分とあるが、貴様のことだ、またどこか別の街の門を叩いているかと思ったよ」
「信用ないなあ。今回は優秀なナビゲーターが二人もいたから、最短距離だよ」 アルヴィンが肩をすくめると、バレンティンはルピーネとロドルフを値踏みするように見た。 「ほう……なるほど。貴公がパーティーを組むとは珍しい。これなら、この支部からSランクが出るのも夢ではないな」
「Sランク……。アルヴィン、あなたはどうしてAランク止まりなの?」 ルピーネの問いに、アルヴィンは窓の外を見ながら嘯いた。 「Sになるとね、国から強制召集がかかるんだ。戦争や災害のたびに呼び出されるのは僕の流儀に反してね。……まあ、半分は一人だと目的地に辿り着けないからだけど」 (やっぱり……)と二人の視線が突き刺さる。
その時、ルピーネの肩のあたりが、もぞもぞと動いた。 「きゅいっ!」 退屈したのか、ルークが我慢できずにフードからひょっこりと顔を出してしまった。 「あっ、ダメよルーク!」
「……む?」 バレンティンの目が点になる。白銀の鱗に、澄んだ瞳。 「こ、これは……白竜の幼体か!? しかもこの魔力……」 「あはは、見つかっちゃった。ねえギルド長、この子をルピーネの『従魔』として公式に登録させてくれないかな。変な奴らに狙われないように、庇護者が必要なんだ」
バレンティンは驚愕に震える手で髭を扱きながら、まじまじとルークを見つめた。 「……リントヴルムか。滅多にお目にかかれぬ伝説の一端だな。よかろう。ギルド長の儂が直々に登録を許可しよう。ただし、表向きは『珍しい翼竜の変種』ということにしておく。 『幸運の竜』を抱えるパーティーか……面白い」
ルークはバレンティンの指を甘噛みをして、上機嫌に喉を鳴らした。 正式なギルド証を受け取ったルピーネのカードには、はっきりと『従魔:ルーク』の文字が刻まれていた。




