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第十三話:雷光の戦斧と魔導投石器

「あ、ルークの方ね。ちょっとこのハルバードに触れて、ゆっくり雷の魔法を、ピリピリするやつね、流し込んで欲しいんだ。できるかな?」 アルヴィンは、ルピーネの肩に乗っている子竜に指を向け、事もなげに続けた。


「…………」 踏み出した足が、空中で止まる。 「……あ、ルークのことね。紛らわしいわよ!」 ルピーネは、爆発しそうな羞恥心を隠すように、鋭く言い返した。 (何考えてるのよ、私のバカ……っ!) 真っ赤になって俯くルピーネを余所に、呼ばれたルークは「きゅい?」と首を傾げながら、いそいそとアルヴィンの元へ這い出していった。


ロドルフがハルバードの柄を握り、アルヴィンが刃に術式を刻んでいく。ルークは、その刃に小さな前足でそっと触れた。 ドォォン! 低い衝撃波と共に、銀色の火花が三人を包んだ。ロドルフの手には、赤黒い鋼に白銀の雷光が脈打つ、伝説級の重兵器が握られていた。


「……悪くない。これなら、どんな巨獣が相手でも倒せそうだ」 満足げに素振りを繰り返すロドルフ。 「また借りができたな」 「これはほとんどルーちゃんの手柄だね」 アルヴィンの言葉に、ルークは自慢げに胸をそらした。職人たちがわらわらと集まってきたが、誰も子竜には興味を示さず、ハルバードの魔術式を夢中で書き留めている。流石の職人気質だ。


その後、ルピーネのスリングの加工が終わるまでの間、隣接する武器屋を覗いて武器や防具をチェックする。 「君にはこのミスリルの剣とかいいと思うけど」 「そんな恐ろしい値段のもの買えません!」 結局、冒険者になって報酬を得てから再訪することにして、店を出た。


いよいよ仕上げの終わったスリングで試射を行う。 シュッ、という風切り音と共に放たれた石礫は、二十メートル先の鉄の標的を貫通し、さらに後ろの石壁まで粉砕した。 「すごすぎるわ……。これならワイバーンの鱗も打ち抜けそう」 感動するルピーネに、アルヴィンは目を輝かせて「改良案その二」を提示した。


「ねえルピーネ、次は後ろにも石を飛ばせるようにしようか! 四方八方に乱れ撃ちだ」 「やめてよ! 自分が死んじゃうわ!!」 「あり得ん。馬鹿なことを言うな」 ロドルフも即座に割って入った。


ハルバードの改良には職人の手を借りなかったため、結局今回の支払いはスリングの改造代と、――そして勢い余って粉砕してしまった「石壁の修理代」のみとなった。 (……ごめんなさい、工房長さん……) 新たな借金(と修理代)の重みにルピーネが心の中で手を合わせていると、アルヴィンが「後でまとめて払えばいいさ」と軽く笑い、宿へと歩き出そうとする。


だが、その肩をロドルフがガシッと掴んだ。 「待て、エルフ。……案内は俺がやる。工房長に道は聞いた」 ロドルフは、未だに「あっちだっけ?」と逆方向を指差そうとするアルヴィンの襟首を軽く引きずるようにして、真っ直ぐに歩き出した。


「もう同じ轍は踏まん。全員、俺についてこい」 夕闇迫る帝都の街並みを、若き戦士は一切の迷いなく突き進んでいった。

魔道具まどうぐ・魔法武器:魔法術式を介し、使用者自身の魔力や魔石、あるいは従魔じゅうまなどの魔力を消費して魔法現象を発生させる道具や武器。魔法そのものを「生み出す」ことが主眼に置かれる。


魔導具まどうぐ・魔導武器:広義には魔道具に含まれるが、より複雑な構造や機械に「魔導回路」を組み込んだものを指す。魔石などを媒介に、その道具や武器が本来持っている能力・威力を飛躍的に増幅させる。魔力を持たない者でも扱えるよう設計されているものが多いのが特徴。

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