プロローグ:スタートライン
X(旧Twitter)の方で先に言ったんですが、「ぼっちの学校」一から描き直そうかと思います。
前のがダメというより、自分と小説との向き合い方を考え直しまして、ノリで書くのではなく、「しっかり考えて書いていきたい!」という自分ごとです。
昔描いた方はそっちの最新の進捗に到達次第削除とさせていただきます。
小説家としてはまだまだ初心者なれど、誰かに面白いと思ってくれるような作品制作を心がけていきます。
ここから水銀の新しい「スタートライン」です、知ってたよ〜って人も知らないという人もどうか読んでいただけると幸いです。
「うぅ〜〜さっむ!舞鶴に比べれば全然だけどさぁ〜、流石に寒すぎる、確か0度より低いんだっけ?」
寒空の下まだ春に片足を突っ込む少し前の2月のこと。1人坂道を歩く少年、彼の名前は桂一名、少し前まで中学生だった彼は今受験会場であり、志望校である史然高校の手前に長々とある、と思われる坂道を寒さを堪えながら歩いていた。史然高校は最近というか昨年の10月頃できた私立高校で、京都府の乙訓市、昔は長岡京市と呼ばれていた場所の西端に位置する。
「それにしても結構長〜い、もう5分は登ってるけどまだ一番上は見えないし⋯⋯これ車前提で作ったな?まぁ情報自体まだ少ないからどうしようにもないんだけど⋯⋯」
私立史然高校は昨年できたために生徒は0人、しかも10月に建物は出来たけれど、そこから必要な家具や道具、機械、他にも人事配置などもあってか説明会なども行えず、生徒の募集と、受験日時、場所の開示などは正確に行われた、がそれ以外は一切不明。
「まぁ、この高校を選んだの僕だからなんとも言えないんだけど⋯⋯、中学の先生にも迷惑かけたな〜、ほんとギリギリのギリギリまで粘ったからなぁ、10月にギリ史然高校の募集が出てよかったよ〜」
懐かしくて慌ただしい、中学の唯一の思い出。
「いや〜、懐かしい本当に⋯⋯はぁ〜、それが唯一の思い出とは我ながら悲しいというか、虚しいというか⋯⋯」
そう、彼桂一名は、友達が今までの人生の中で“0“、いわゆるぼっちと呼ばれる人種なのである。それには理由が⋯⋯理由が⋯⋯理由が⋯⋯⋯⋯ない。驚くほど心当たりがない。
小学校の頃からそれなりのコミニュケーション能力はあった筈だし、授業中しか話した記憶ないけど⋯⋯まぁ別に友達が居なくたって特段困ったこともないけども!!それとこれとは話が違うんだよな〜。
「まぁでも友達を作るためにこの高校を選んだんだし!⋯⋯中学の頃の人たちと同じなのが気まずいってのもあるけど⋯⋯まぁとにかくまずは目の前の受験を頑張ろう!!」
手を挙げて「オー!!」と声を出しながら自分を鼓舞する。1人で。
「さてと、そろそろ歩こう、このままじゃ一生辿りつかないや、ん?」
止めていた足を動かそうとした時一名とは違う足音が先ほどまで、騒いでいた一名の声が消えた静かな空間に響く。音の方向、後ろに目を向けるとそこには、当然ながら全く知らない女性の姿があった。
誰?まぁ地元じゃないし知らない人であることは間違い無いんだけど⋯⋯。制服着てるから多分同じ受験生かな?あんま見すぎるのもよくないし行こう。それにしても⋯⋯。
無表情いや顔に変化がないというべきか⋯⋯特に表情を変える必要がある場面ではないのだが、それにしても、だ。寒い中、どんな人でも多少は寒いんだろうな〜という顔はする、がそれなのに一切変化のない表情、まるで氷のような⋯⋯。
「まっ、人にはそれぞれあるからね〜、もしかしたら同じクラスになるかもしれないし、友達になることもあるかもしれないからね⋯⋯多分」
とにかく今は、受験会場、史然高校の校舎がある場所に向かう。
「⋯⋯⋯⋯それにしてもやっぱり長い!!!」
約10分後。
「やっと、ついた〜」
長い長い坂道の終着点、史然高校の入り口にあたる校門に着く。校門の前には簡易的な案内図が描かれた看板が置いてあった。
「えっと、左手にある建物が校舎で右側はそのまんまグラウンド、あと奥に部室棟など、で中央の最奥には寮⋯⋯寮、寮!?そんなのも造ってたのか!」
あ〜本当だ、奥に2棟のマンションが見えるわ、しかも何階建て?あれ?それはまぁいいとして受験会場は校舎の2階、2ー4教室ね。
「ではいざ行かん、未知の地へ!」
ダッシュとまではいかないが、小走りで校舎の入り口に向かう、幸い道中も矢印のマークが描かれた看板が置かれていたので迷わず下駄箱のある昇降口に着くことができた。
「ここかぁ、校舎の外装もそうだけどキッレー、さすが新設校、下駄箱っていうかあれだよね最新技術でどうたらこうたらみたいなやつ、私立すげぇ〜」
外装は白を基調としバランスの良い色合いで美しいバランスに出来上がっている、下駄箱は、もはや下駄箱ではないのだが、自転車を地下の倉庫で管理するシステムを応用した、靴を管理するシステムで、特定のコードを読み込ませることで個人の靴を管理できるそうな。
「今の僕には関係ないけどね」
カバンを下ろして上履きを取り出して靴を袋にしまい、廊下に上がる。周りはよくも悪くも静か。
「2−Dは、看板あるじゃん、助かる〜、で数字のまま二階にありますよっと」
看板に感謝の意を示しながら、さっさと階段を駆け上がる、何気にあと10分以内に教室に集合しなければいけない時間なので急いで教室に向かう。
あった!2−D!2−Dと描かれたプレートを見つけて急いでいく、そして教室の扉を開ける。そこにはすでに19人の知らない生徒。いや1人は顔は知ってるか?さっき見たってだけだけど。それにしても19人に余ってる席は一つ、あそこに座ればいいのはわかるんだけど⋯⋯えっ、受験生これだけ?
まさかなぁ、と思いつつ空いている席に座る。同時に試験官と思われる教師2名は入ってくる。そして何やら準備をしてから第一声を上げる。
「皆さんおはようございます、本日は史然高校の受験日です、では本日の詳しいスケジュールをお伝えします、まず午前に三教科の筆記試験を受けていただきます、その後二教科の試験を受けた後、我が校の校長による個人面談を受けていただきます、試験はそれぞれ50分と10分休みの60分で、昼休憩は60分、面談は1人10分を予定しています」
ふむふむ、じゃあまずは試験に集中すればいいと、で面談あるんか〜そうか〜、一旦忘れよう。
「それでは5分後試験を開始します、荷物を外に置いて試験の準備をしてください」
指示のもと荷物を外に出して、試験の体勢を整える。
「それでは開始!」
そうして試験が始まる、過去問も何もない未知の試験を今始める!!
え?何この問題?※非常事態発生!非常事態発生!!序盤は確かに一般的な問題が、よく過去問で見る、基礎問題が続いていたし、多少難しいのがあっても応用が効くものがあった!でも後半何これ!?数学で知識を一切使わない問題って何!!?最初は文章題だと思ったら、全然数字出てないし!しかも解答欄もう国語じゃん!!Aくんが対岸に渡るにはBくんはどうすればいいでしょうって!それっぽい問題で中身全然違う。これ知識関係ないじゃーん!!
その後も英語、国語、歴史、理科。全ての問題で似たり寄ったりの問題が最低一問あった。特に英語は英文で書かないといけないのでそれはそれは大変だった⋯⋯いや本当に⋯⋯。とはいえ、なんとか試験もやり切った!となると次は面談!もう1人行ったし、多分席順のまんまだから僕は8番目かな?
しばし待つ。1人10分だし最大80分くらいかな?苗字が桂、カ行でよかった〜。意外と早めに帰れそう。
「桂一名さん面談の時間になりますので三階校長室まで来てください」
おっし僕の番だね、一つ前おんなじ苗字の人がいてびっくりしたけど、とにかく荷物を持って面談の場所に行こう!
荷物をまとめて校長室に向かう。初めの人の時に説明された通り道中看板いやホワイトボードに矢印が描かれたものはあり、道中同じ苗字の桂化菜くんともすれ違ったが、何はともあれ校長室にたどり着いた。
「ここか⋯⋯」
目の前には、先ほどまでの感じとは毛色の違う、洋の世界観から一転した和の世界観。
「荷物はここに置いてけばいいのかな?」
横にある木箱にカバンを入れて、服装を再度整えて。
「よし!」
いざ行かん、面談へ!ふすまをノックしてから。ノック?ままええわ。横にスライドし、空間を遮っていたものを失くす。すると電気ではない暖かい陽の光が眼前にくる。陽の光の中には和で統一されたものが並びその一角、畳とその上にある机。いやちゃぶ台か?そしてそこに座る人。
「いらっしゃい、取り合いずそこに座ってね」
「はい!」
50〜60代ぐらいに見受けられるその人、校長先生?の手の指す机を挟んだ対面に座る。緊張感がないわけではないが木の香りや校長と思われる人の柔らかい表情で意外と平静を保てている。
「それでは面談を始めるね、名前は桂一名くんで間違いないかな?」
「はい!桂一名と言います」
「うん!元気があっていいねぇ、それでは私も、私の名前は史然尊義この高校の校長を勤めているよ」
校長であってたぁー!!漠然とした安心感がある。
「それではまずは軽く自己紹介をしてもらっていいかな?」
「はい!名前はさっき言ったので省略します、出身は京都府の舞鶴で趣味はゲームと読書が好きです、特技等はまだないと思います」
あれ口調こんな感じでいいんだっけ?なんか諸々ダメな気がするけど⋯⋯まっいっかぁ〜。
「はい、では次に志望理由は何かな?」
「えっとですね」
う〜ん、友達云々の話はしたくないというか、するほどの話でもないし、でもここに来た理由ってのも⋯⋯あれ?これ詰んでね!?
想定外の詰み要素。まさか志望理由で悩むことになるとは⋯⋯しかもだいぶしょうもないところで、ていうかそもそもだけど高校に志望理由もクソもなくない?この高校に限った話じゃないけど、部活以外特にないじゃん!大学と違って専門的なものもないし!!いや知らないけどね?だいたい近いからでしょみんな!それをなんとなく希釈して話してるだけでしょ!⋯⋯おっと話が脱線した、今はとにかく志望理由⋯⋯志望理由ダメだ出てこない⋯⋯詰んだ。
完全な詰み、というわけではないが実質的な詰みに絶望していると。
「はっはっは!!」
突然腹の底から出てきたようなとても大きな笑い声、そしてその声の元は言うまでもなくこの部屋にいるもう1人の人物、史然校長。
「いや、すまない馬鹿にしているわけではないんだ、流石に意地悪な質問だったね、ほとんど情報が出てないのに志望理由を聞くのはね、すまないかれこれ8人目全員に同じ質問したんだが、みんな似たり寄ったりな反応をしてね、面談の基礎なんだすまないね」
笑顔で謝る校長先生。でも怒りも何も湧いてこない、人でこうも人の心を柔らかくできる人もそういないだろう。
「さてでは、本当の理由、君の心根を聞いてもいいかな?」
「え?」
「志望理由に近しいものはあるんだろう?悩むような表情や仕草が見てとれた、こう見えても人を見る目はあるんだ」
何もかも見透かされている、まぁ詳しい内容までは流石にわからないみたいだけど、それでも僕の表情、仕草だけでそれだけの情報を見抜いている、いや〜それだけでわかるなんてすごいな〜社会勉強になるな〜、ってそうじゃなくて、う〜んそこまで見透かされているとはいえ、話すのは⋯⋯う〜ん。
「そうだね、少し小話をしよう」
悩んでる様子を見兼ねてか、先生は話を始めた。
「私は昔とある会社を経営していてね、色々な人と関わることがあったんだがどうも会話をするのが苦手だったんだ、一会社の社長がだよ?だから会社も初期は従業員は3人で営業もなかなか好調にはならなかったんだ、当然といえば当然だ」
苦笑を交えながら話を進める。
「でもね、人と人の縁は繋がっているものでね、地元で会社の経営をしていたんだが、近所のよく話した少年たちが、僕の会社に入社したいと言ってくれたんだ、経営が伸び悩んでいる会社に入りたいという人はよほどでもない限りいない、そんな中でも入りたいと言ってくれた彼らの存在は本当に嬉しかったよ、そこから従業員も増えてね、暗い道が晴れ渡り道が一気に見えたんだ、それで私は会社でやりたいこともできた、でも私は欲張りでね会社の中で新しい夢ができた、そして息子に会社を引き継ぎ今の立場、校長になったと言うわけだよ、とまぁ長々と話したが要するに、話してみて欲しいんだ、ここで話したことがいつか縁となって未来の自分のためになるかもしれない、ここで話すことで何かが変わるきっかけになるかもしれない、初めの一歩をスタートラインを超えて欲しいんだ⋯⋯話は終わり、君の心根とは違ったかもしれないけどね、私の今までを知ることで、人を知ることで話しやすくなればいいと思うよ」
校長の言うとおり、それは一名の人生とは似ても似つかない、全く別のもの、だがその中にも繋がるものはある、確かな決心はついていない、それでも話すきっかけは、道は作られたならその道を進んでみるのもいいかもしれない、行動を出来なかった過去の自分との決別をするために、変わるために。
「そうですね、志望理由と言うまでもないんですけど、生まれてこの方、記憶にないところはわからないんですけど、友達がいなかったんですよね、15年間0人ですよ!?それで気まずさもありますけど、新しい何かを求めてこの高校を選んだんです、だいぶ自分ごとですよね」
「ふむ⋯⋯いいじゃないか」
「へ?」
「十分だよ、高校に入る理由としては十分立派だ!諦めるのではなく、未知への挑戦を選んだ、それだけで十分だ、まぁ友達に関しては私が何かできることはないかもしれないが、その挑戦の心を持っている君なら十分可能なことだと思うよ」
肯定、何がどうであれ今までの自分を否定することなく評価してくれる、それは何よりも嬉しいことだ。
「はい!」
「よし、時間もそろそろ10分だね、じゃあ面談は終わりかな」
「あれ?もうそんな時間ですか?」
「残念ながらね、では一名くん楽しい面談だったよ、それではさようなら」
「はい!ありがとうございました!」
精一杯の感謝を伝え校長室を後にする。
そして数日後。
「届いた!」
受験後にくる、天国と地獄への分かれ道を決める合否発表。
「さて、何気にこの高校以外希望出してないからやばいんだけど⋯⋯ええいこう言う時は勢いが大事!!」
言葉通り勢いよく開け、中の紙を取り出す。そこに書かれていたものは。
「ごっ、合格⋯⋯!!⋯⋯よかった〜〜!!」
合格それは高校におけるスタートラインでしかない、でもこの日確かに一名はそのスタートラインを踏んだ、挑戦の心を持って、今までのぼっちの学校生活からの脱却、友達を作る小さく確かな夢を持って。




