伝書バト 最後のシゴト
ここは全てが未知のエネルギーや電気で構成された科学未来都市だ
もちろんこの都市には紙媒体などの手書きの情報はなく 脳伝導により動く
人間はその指示された情報により理解し活動していった
俺は伝書バトをしているものだ 昔はと言うと人から人に伝えるものは伝書バトぐらいであったが 情報機器の登場 科学や超能力でますます便利になる世の中でまるっきりその機会は訪れなくなった
そのおかげかもうこの世界で伝書バトを使うやつは俺だけになったのだ
今日も仕事の依頼がない俺は伝書バトのハトにエサをやることぐらいの エサやり迷惑おじさんとなっていた
時には練習のためにハトを空に放たなればならない 伝書バトは離してやれば必ず帰ってくるわけではなく 同じチェックポイントを日々 毎日の積み重ねの往復によってハトも学習してやっと帰ってくることができるのだ
「ハトにエサをやるのはもうやめてもらえます!? ベランダにフンをするので困ってるんです!」
隣人が俺のハトでうんざりしているらしい
昔はハトは神聖な鳥と言われたが今ではもう厄介者の代表になってしまっている
「すみません」
俺は深々と誤る 隣人も奥様も俺の誠意ある対応で許してくれたがもう後はないだろうとは思った
「さて、どうするか」
俺はハトの前でため息を吐く
俺は昔を思い出していた 昔は違っていたと
俺が生まれるずっと前から先人たちが積み上げてきた歴史 古代エジプトからローマ帝国にかけては王族 貴族へと伝令として 機械レーダーにも映らない事から戦争の時は軍事連絡に活用されたこともあったが
今ではドローンというものがあって 不確定要素が強いから使われなくなってしまったが
俺の幼い頃は「鳩レース」といった余暇もあったが 今では廃れている
「もう終わりかな」
こんな絶望的な状況でやっていくことは困難であること 通信手段としての役割を終えたと判断した俺は 代々続いてきたことをやめるのは心苦しかったがやめることを決意した
俺は最後にハトに問いかける
「俺たち、頑張ったよな!?」
どこまでも無関心なハトは俺を1点にを見つめたままそれをそらすことはなかった
伝書バトをやめてから1ヶ月が経った
1番悲しかったのは辞めても誰も「やめないでほしい」といった声がなかったことであろうか
俺は仕事がないので部屋で寝転ぶ 暗い天井から ふと 外の空に視線をずらすと待ちぼうけしたのか元伝書バトのハトがこちらをみつめていた
「今日は訓練は無しだぞー?」
それが伝わったのか否か ハトはさみしそうだった
(今日だけじゃなくてずっとなんだけどな」
ハトもいいだろう もう第1帰巣本能支部と第2帰巣本能支部への長距離飛行もしなくてもよいのだから
「ん?」
気づいたら夜になっていた 俺は知らない間に眠っていたのかもしれない
窓が全開で空いていたので閉めにいくと とても幻想的な光景が目に入ってきた
緑や赤、青などのさまざまな色が混在しその輝きに引き寄せられる
「オーロラか?)
記述なので理解していたが実際にみるのははじめてだったからとても感動した
確か 太陽からのプラズマ粒子:太陽の表面で起こる爆発(太陽フレア)などによって、電気を帯びた微粒子が太陽風となって宇宙空間に放出されるとか
「ん?待て ここでオーロラってことは?」
俺は危機感を覚え周りを見渡すように未来都市をみた
未来都市から光が消え まるで世界が終わったようであった
俺は手をかざし電気をつけようとする
「え?)
俺は慌てて部屋の電気を点灯させるが反応はなかった
俺の嫌な予感は的中した
「太陽フレアか」
太陽フレアは、太陽表面の黒点周辺で発生する大規模な爆発現象であまりの高エネルギーにより通信・放送の広範囲な途絶、大規模な停電、人工衛星の故障や落下、そしてGPSの機能不全などが発生し、社会機能が数週間にわたり麻痺するとされた
「これはマズイな ここは科学都市だぞ」
家を出た
案の定 人工ロボットやドローン Ai装着
顔認証による 乗り物なども全て使えなくなっていた
隣では隣人がメニューを選べばその料理が出てくるテーブルクロスも使えなくなってうなだれていた
周りの人たちは急な当たり前が失われ 路頭に迷っている
「このオーロラ現象は全土なのか はたまたこの第1帰巣本能支部だけなのか情報はまるっきりない俺たちはそれを伝える方法はない のか?」
(俺には伝書バトがあるじゃないか!)
俺は急いで部屋に戻り 伝書バトに近づく
ハトはそんな恐ろしいシナリオさえも知らないで 頭を傾げている
(もう丸々1ヶ月も第2帰巣本能支部へは行っていない 行けるのか?)
「50年ぶりの仕事だぞー?」
相変わらず首を傾げるハトちゃん
(えっと 確かここらへんに あった!)
最後に見つけた紙にメッセージを書き込みハトの足につけた
「頑張ってくれよな」
「よし!行け!」
ハトは混沌とした状況の中 全てを思いを乗せて飛び立った
一方その頃 遠く離れた第2帰巣本能支部は幸い軽いシステム障害は見受けられたが業務には差し支えなかった
「暇っすねー」
「あんたねぇー もっと仕事しなさいよね!」
第2帰巣本能支部の事務はこの2人 近年は全てAiがシステム処理をしているためか人の仕事はほぼないに等しかった
「相原さん?なにか飛んできますね?」
「ドローンじゃないの?」
「いや、ハトっすね」
「ハト?」
私は直人くんに手招きされながら窓の外をみた
遠くから羽ばたくそれは迷うことなく私たちの方へ向かってきた
「えー?ハトですね!
「伝書バト?」
「伝書バト?俺はじめてみました」
「私もよ」
伝書バトの足にはなにやら手紙のようなものがくくりつけてあったのでそれを開いて読んでみる
「た、大変!第1帰巣本能支部が太陽フレアにより全ての電気機器 Ai装着が停止ですって!」
「それは大変だ!すぐに救援しないと!」
「そうね 直人くん?書くものってある?」
「書くものっすか?そんなのないっすよ 全部電子機器ですから」
「そうよね、仕方ないわ」
「ガブ!」
「相原さん!?何を?」
決まってじゃん!メッセージを書くのよ!」
思いっきり噛んだ指先は赤い血で染まっていた
「これでメッセージを送れるね?」
「ハトさん!ここは大丈夫ってことを第1帰巣本能支部伝えてね」
ハトは少しうなづき再び第1帰巣本能支部に帰っていった
「相原さん!だ、大丈夫っすか?」
「大丈夫じゃないよー」
「でもさ これはAiにはできないよね?(笑)私たちは生きてるんだから」
一方 第2帰巣本能支部へ伝書バトを送り届けた俺は右往左往としていた
「頼む!帰ってきてくれ!」
前にも言ったが伝書バトは帰ってこない確率のほうが高い
迷子・道に迷ったりすることや飛行中に事故にあったり、病気になったりして帰巣できなくなることも多くある特に1000kmでは、帰還率が1割程度と少ない
「あ!」
俺は感動した真っ暗な世界から木漏れ日のように光が差したようなそんな感覚だった
「よく帰ってきてくれたな お前はもう厄介者じゃないよ 正真正銘「平和と希望の象徴」だ」
俺はハトの足にくくりつけられたメッセージを読む どうやら第2帰巣本能支部は問題ないらしい
メッセージによるとあと2日あれば復旧するらしいという一報だった
「あっちも少し被害はあったらしいけど支障はないみたいだ」
俺は少し安堵の表情をうかべる だがここ第1帰巣本能支部の人たちは混乱し騒ぎだしていた
俺が大丈夫と言ってもこの無秩序は収まることはないだろう
いつしかこの内乱は食料の争奪戦となり最悪人が死んでしまうかもしれない
2日後には全ての電気は復旧するんだ そのことを伝えられれば人々も安堵し解決するのに
しかし今は全てのエネルギーが使えない状況 もちろん携帯電話も情報共有もできない そんな状況 で一気に伝える方法は
(あの人しかいないか)
俺は一筋の光を胸にあの男の家に向かったのだった
俺の家よりももっともっと麓の少し古びた極地にあるその家は 近代化から取り残されたと言ってもよい 死んだ言えだった
そんな死んだ家に入る 中はシンプルな作りをしていて今どき珍しくテレビが置いてある
「おーい!おーい!大変なんだ!」
俺は家の住人に声をかけるが反応はない どこかへ行ってしまったのだろうか
俺も会うのはもう久しいからな
「なんだー」
2階から声が聞こえる 俺は階段も久しかったので疲れたがようやくあがることができた
その住人は1人でお酒を飲んでいた
「瓦屋ー久しぶりだな」
「その呼び方はやめてくれ もう江戸時代で終わった)
彼は瓦屋 瓦版を作っている、瓦版は事性・速報性の高いニュースを扱った印刷物のことをいう
江戸時代の日本で普及していたが新聞の対等により見る機会もなくなってしまった
今や新聞屋も撤退してしまったが
江戸時代 相当の前だ 今は書物も全て脳内組み込められているのですぐに頭から開くことができる
「たのむ!今 未来都市は全てのエネルギーが停止していて大変なんだ 協力してくれ」
「断る!お前もそうだろ?近代化から取り残された俺たちは化石扱いだ 今困ったから助けたとして明日にはまた笑いものになる」
「わかってる 俺も隣人たちに散々にされてきた この騒動も終わらばまた見向きもされないかもしれない 多分 これが終われば 太陽フレアの対策がなされ 俺たちの時代は終わる」
「だから最後にやってやるんだ 使い古されたからって新しいものにすればってものじゃないってことを」
「そうか この代になって 私の番が来るとは夢にも思わなかった」
「やってくれるのか!?」
「あぁ 最初で最後の仕事か 腕がなるぜ」
「木版って! この時代にあるんだな!」
「もう俺しか使ってないけどな」
「でも紙はどうするだよ 今は製造してないはずだ」
「紙はここにたくさんあるぞ?)
「化石って言われるのがわかる気がする(笑)」
「先々代からの贈り物だよ」
俺たちは夜通しで 1枚1枚の紙に木版印刷していった
朝になり 人々はさらに混乱が強くなっていた 電気がなければ 料理もできない お風呂もはいれない 買い物もできない 介護ロボットも動かないという絶望的な状況の中 俺たちは昔懐かしい 掲示板を貼り 街を練り歩いた
「瓦版ー!瓦版ー!瓦版ー!瓦版ー!」
未来都市ではあり得ない 人間らしい声に人々は集まっていった
そして丹精込めて木版印刷した絵のはいった物を手渡す
人は人から人に渡されるのがはじめてだったらしく少し戸惑ったがしっかり受け取ってくれた
それは未来都市全員に配るまで続いたのだった
後ろから よかったわ という安堵した声が漏れる それがなんとも嬉しかった
はじめて感謝された瓦屋は思わず目から涙がこぼれていた
その2日後 無事にオーロラは消えて 全てのシステム設備は復旧したことを確認した俺たち2人は最後のいとまごいして帰っていった
「待ってください」
俺たちに声をかけたのは第2帰巣本能支部の相原さんだった
「やめちゃうんですか?やめないでください!」
「でも、俺たちはもう」
「また太陽フレアがあるかもしれないじゃないですか!」
「政府も言ってただろ?太陽フレアの対策のために未来都市全土にバリアーを設置するって これで太陽フレアがきても停止することはなくなった」
「さ サイバー攻撃とか あるじゃないですか!」 システムの関与のない伝書バトならまだ」
「サイバー攻撃はもう対策されてるだろ!」
「いてほしいです!ずっと当たり前があってほしいんです」
「また新しい当たり前を作っていけばいいさ」
「でも もしも また 紙が恋しくなったら また伝書バトが役に立つかもしれないしな」
「そうですね!」
これにより紙が再評価され 年賀状 便箋 回覧板など 新レトロブームがはじまったのであった




