少年K #2
それからはあっという間だった。少女が少年に合流してから、戦況は一気に動き、2人は難なく魔物を倒した。僕は、安全圏からただ、その様子を眺めることしかできなかった。
魔物の剣を受け止める。魔物が一歩引いたところで少年が剣を振るう。魔物は受け止めようとするが、予想より重かったのか、体制を崩す。そこでできた隙を逃さず魔物にダメージを与える。
そんな光景に、僕の視線は釘付けになっていた。僕らを守ってくれた、そして恐怖の元を取り除いてくれたその力に、どうしようもない程に憧れた。
少女の方はよく見ていなかったが、時折視界の隅に光が映ることあったので、おそらく魔法を用いて戦っていたのだろう。
そんな、圧倒的な戦いの後、2人の救世主が僕らの方を向いた。
「ふぅ…大丈夫そうだね。それじゃあ、君たちの村に帰ろうか。親御さんが心配しているからね。」
そういって、金髪の少年は僕らに手を差し出した。僕たちはその手を取って立ち上がり、ツワブキ洞の外へとでた。外はすっかり暗くなり、星々や月がまぶしく輝いて僕らの道を照らしていた。
村への帰り道、ふいに少年が声をかけてきた。
「そういえば、まだ自己紹介していなかったね。俺はオドント・ターコイズ・グロッサムだ。勇者って言った方が分かりやすいかな。村までは俺たちが守るから安心してくれ。」
「私はカルミア・ユージアライトよ。名前くらいは、聞いたことあるんじゃないかしら。」
グロッサムさんに続いて、少女の方も名乗った。ユージアライトさんは、にこりと笑って僕達2人の顔を覗きこんできた。カルミア・ユージアライト…って、聖女様の名前じゃないか!なぜこんなところに?勇者とともに魔王を倒す旅の途中だと聞いていたけれど…たまたま通りかかった?よく聞く英雄譚は真実なのか?それから、それから…
僕が勇者と聖女に聞くことを考えていると、ゲウムが声を上げた。
「カルミア・ユージアライト…さんって、あの聖女様ですか!?それに勇者様までいるなんて…!あの、俺、1度でいいから勇者様の冒険譚を聞いてみたいと思ってて、その、えっと…あ!俺、ゲウムっていうんですけど、」
「ちょっと、落ち着こうか、ゲウム君。俺も一度に沢山聞かれても困っちゃうからね。」
勇者様がゲウムにそう言うと、ゲウムは何度も深呼吸をして落ち着こうとしていた。その間、聖女様が「私には聞きたいこと無いの!もう!オドントばっかりずるい!私ももっと慕われたいし色々話きかれたいんだけど!」と不満を口にしていた。
少し落ち着いたのか、ゲウムがややテンション高く聖女様と勇者様に問いかけた。
「えっと、サンスベリアを倒したというのは本当ですか?そのときの話を詳しく聞きたくって…」
「ええ、本当よ!あの時のオドントといったら、もうほんっとうにかっこよくって勇敢で!たとえばね、あのドラゴンと初めて目にしたとき、私はその巨体に少しだけ、怖いなって思ったんだけど…」
「カルミア、頼むから俺の…戦い方とかあまり話さないでくれないか。恥ずかしいから。」
聖女様が目を輝かせながら少し早口で勇者様の話をしようとしたところを、ゲウムの質問が発せられた時から少し暗い顔をしていた勇者様が止めた。話はこれからだと思っていたゲウムと聖女様はひどく不満そうな顔をして勇者様を見つめた。
「あの時は、あの、その…そう!今と比べるとまだまだ未熟だったからさ!黒歴史みたいなものだからさ。…どうしても話したいなら、せめて俺がいないところにしてくれ。」
と、勇者様は焦った様子で理由を話した。すると、聖女様とゲウムは、不満げな顔をしつつも納得した。
「はぁーい。オドントがそう言うなら、後でにするよ。あ、ゲウム君だっけ?村ついた後って、時間ある?」
「それって…はい!あります!なくても無理やり作ります!」
聖女様がゲウムに出した魅力的な提案を、ゲウムはこれ以上ない程に目を輝かせて受けた。
「よし、それじゃあ、後で宿に…って、それはまだ決まってなかったっけ。それと後、えっと、そっちの子も。よかったらどう?」
聖女様は僕の目を見ながら優しく手を差し出し、同じ提案をしてくれた。
「いいのですか!?ぜひ、お願いします!」
「君たちねぇ…できれば、そういう約束も俺のいないところでして欲しいんだけどなぁ。そのような時間を作るのは難しいと思うし。」
「ちょっと!決めつけるのは良くないって!うまい事話せば、依頼人さんだって許してくれるかもじゃん!」
「カルミア、そう言ったって、子供たちだけで危険な洞穴に入ったという事実はどうやっても覆せないよ。」
「じゃあさぁ、…」
勇者様と聖女様が僕達が英雄譚を聞く時間が作れるか作れないかを言い合っている様を、僕達は頭に「?」を浮かべながら聞いていた。
村についてから早々、勇者様達はまっすぐ僕の家へと向かっていった。
「この子達で間違いないでしょうか。」
「えぇ、間違いなく私の子とその友人です。本当に…無事で良かった…!見つけてくださりありがとうございます。」
そう言って、母さんは僕達を引き取った。
「お礼になるかは分からないのですが…これを。私が冒険者時代に愛用していた剣です。…予備のものですけれど。」
「良いのですか!?ありがとうございます。また、何かあれば言ってください。暫くはこの辺りにいる予定ですので。」
「でしたら、小さいですが村の入り口付近に宿があるので、お使いください。話は通しておきますから。」
「…!ありがとうございます。ありがたく使わせていただきますね。」
そんな会話を終えて、勇者たちが宿に向かい始め、僕達もそれに続こうとすると、母さんが鬼の形相で僕に声をかけた。
「クロッカス?家はそっちじゃないわよ?」
「い、いやほら!僕は、勇者様方を宿の場所まで案内しなくちゃ!この村にはまだ詳しくないだろうしさ!」
「ならその役目はお母さんがやります。子供だけで案内するのは危ないでしょう?お家の中で待っていなさい。ご飯も用意してあるから。ね?」
「ぅぐ…。」
何も言い返せない。このままだと、勇者様の英雄譚を聞くことができない…!だいたい、子供が案内するのが危ないって、それを言ったらゲウムも…って、家あっちの方だった!ズルい!
「お返事は?」
「はーい…」
「ゲウム君も、すぐお家の方に帰りなさい。きっと、お父さんお母さんが心配しながら待っているはずよ。」
「はーい!じゃ、またな、クロッカス!話は後で聞かせてやるよ!」
ゲウムは笑顔で手を振りながら、彼の家…ではなく宿に向かって走っていった。どちらにせよ行く方向が同じなので、母さんは家に向かったと思ってるようだ。…やっぱ、あいつズルくない?僕はというと、母さんの目を避けて宿に向かうのはほぼ不可能なので、おとなしく家に入った。
家に帰ってご飯を食べてから暫くして。鬼…もとい、母さんが帰ってきた。ニコニコしているが、目が全く笑っていない。いや怖。
「クロッカス?大事なお話があります。こっちへいらっしゃい。」
断ったら後が怖いので、おとなしく従うことにした。なぜだろう、無いはずの角が生えている気がする。すみませーん、ここに、世にも恐ろしい魔物がいまーす!誰か倒しに来てくださーい!
「そんなに怖がらなくてもいいのに。お母さんも人のことはあまり言えないからね。ただ、それでも貴方には危険な目にあってほしくないのよ。」
「…うん。」
僕の母さん…クフェア母さんは、僕が3歳くらいの時まで冒険者をしていて、指折りの実力者だったらしい。ただ、ある日、魔物討伐に苦戦したらしく、傷だらけで帰ってきたことがあった。その時、僕はその姿を見て泣いてしまった。あまりに痛々しい姿だったから。悲しかったから。傷ついてほしくなかったから。その後、いつも母さんに甘い父さんが、僕が心配してしまうから、僕が大人になるまでは休業しないか、と言ったらしい。その結果、母さんは一時的に冒険者をやめた。やめてすぐの頃は、僕が立派な大人になったら再開すると度々言っていたが、最近はその言葉を聞いていない気がする。ともかく、「人のことを言えない」というのは、この冒険者時代のことを指しているのだろう。
「冒険に憧れる気持ちは分かる。なんて言ったって、親がお母さんだからねぇ。今回は無事だったからよかったけれど、あなたはまだ冒険ができるほど強くはない。ゲウム君もだけれどね。」
「……」
「自覚あり…というよりかは、今日何かあって知ったって感じかな。」
母さんは、しばらく無言で僕を見つめてきた。今日のことは…話したら、怒られそうだなぁ。多分それを聞きたくて待っているんだろうけど。僕は、ひたすら口を閉じて下を向いていた。
「まぁ、言いたくないこともあるわよね。お母さんは、クロッカスがまだそこまで強くないからこそ、こうして心配して、そして怒ってもいるの。」
「ご、ごめんなさ」
「だけど、ダメって言われても、冒険をしたいって欲はなかなか抑えられるものじゃないわよね?」
「…っえ?」
僕が謝ろうとすると、それを遮って母さんは纏う空気を変えて質問をしてきた。なんでいきなりそんなことを?確かに、冒険はしてみたいとずっと思っている。けれど、今の話の流れでなんで急にそんなことを聞かれるんだ?僕が混乱しているうちにも、母さんは話を続ける。
「お母さんもそうだったもの。自由気ままに、世界中を旅したくて。まだ誰も言ったことのない場所を冒険したくて。だけど、母…えっと、おばあちゃんとおじいちゃんにはそんな危ないことはするなって止められて。だから、ひたすらに訓練をして、強くなっていったの。2人が心配することがないように、強さを理由に夢を追いかけるための説得をするために。お母さんだって、最初から強かったわけじゃないのよ?えーっとね?つまり何が言いたいのかっていうと…」
「もしもクロッカスが冒険することを望むなら!この、元A級冒険者のクフェアさんが鍛えてやるって話よ!」
「……?」
「あれっ?…こほん。もしあなたが望むなら、この元A級冒険者のクフェアさんが鍛えてやるって話よ!」
「聞こえてる!聞こえてるから!ただ、突然すぎてびっくりしているだけで…」
母さんは、危ないことはするな、という話をしていたはず。それが、どうして急に僕を鍛えるって話になったんだ?っていうか、元A級!?初耳なんだけど!
冒険者にはE~Sまでのランクがあり、実績を積んだり、実力を図る試験において一定以上の成績を残すことでより高位のランクが与えられる…らしい。噂ではあるが、Sランクのさらに上のランクも存在するらしい。そんなランクは見たことも聞いたこともないが。
元とはいえA級だなんて、とてもではないが信じられない。確かに実力者であることは聞いていたけれど、僕の中での冒険者時代の母さんは、あの日の傷だらけの母さんのイメージが強い。
が、よく思い返してみれば、傷一つなく、疲労すらもないかのような笑顔で帰ってくることの方が多かった。
もし、そんな強者の手ほどきを受けられるのなら。もし、強くなることで冒険に出ることを許してもらえるなら。
「なんだ、聞こえてたのね。で、どうする?この提案、受ける?受けない?」
母さんが、笑顔で僕に訪ねてくる。その目は、僕の答えが既に分かっているとでも言いたげに見つめている。
僕の、答えは…
「受けるよ。」
「うんうん、そういうと思ってました。じゃ、明日にでもクロッカスの武器を買いに行きましょう。」
母さんは、機嫌よさそうにうなずきながら、そう言った。僕を鍛えるのを楽しみにしているのが伝わってくる。語尾に音符でもついていそうな口調だ。僕に背を向け、今にもスキップしそうなくらい上機嫌で歩いていった。
「あ~久しぶりだなぁ。かわいい初心者君に剣を教えるのは。最後にそれをしたのはエキザカムだったっけ。あ、でも剣を選ぶとは限らないかぁ。じゃあ知り合いにも声をかけようかしら…」
「あ、母さん、もう一つ、お願いがあるんだけど、」
僕は、母さんが思考の海にダイブしそうになっているところに声をかけた。
「ふぇっ?あぁ、ごめんね、なにかしら。」
「ゲウムと、一緒にやりたいなって思って。いいかな?」
すると、少し考えているような間が空いてから、母さんが答えた。
「分かったわ。ゲウム君にも声をかけておくわね。参加してくれるかどうかは、彼次第だけれど。」
「…!ありがとう!母さん!」
冒険に行きたいと願っていたのは、僕だけじゃない。むしろ、ゲウムの方がその思いが強いはず。なのに僕だけ訓練を受けるのは違う気がしていたから、母さんが聞き入れてくれてよかった。
僕は明日に備えて早く寝るため、駆け足で自分の部屋に向かった。後ろから、考え事を再開した母さんの声が小さく聞こえていた。
次の日。僕は誰よりも早く起き、急いで母さんの部屋へ行った。
「母さん母さん!朝になったよ!はやくはやく!」
「ぅう~ん…。大丈夫だよ、武器や素材は逃げな…いや、素材は逃げるなぁ…。」
母さんは眠たそうにしながら声を発し、より深く布団をかぶった。あ、寝ようとしてる。
「ちょ、二度寝しないでよー!」
「ぇえ~あと5分…いや、1時間くらい寝れるって…。」
「母さーーん!!!」
結局、30分後に母さんは目覚め、ご飯を食べた。僕が不満げな表情で食事をしていると、母さんが声をかけてきた。
「いくら楽しみだったからって、5時半に起きることはないでしょう。お母さんはいつも通りの時間に起きましたー。後、こんな早くに起きてもお店は開いてませーん。」
「…前、四六時中開いている、冒険者の味方!的なお店があるっていってなかったっけ?」
冒険者時代の話を聞いたとき、名前が挙がったジニアにあるお店を思い出しながら話した。街の出入り口付近にあるから、冒険に行く前の準備によく使っていたという。依頼や討伐する魔物によっては、朝早くや深夜に出ることもあり、その時間となると開いている店や工房がほとんどないから助かった、とも言っていたっけ。
「あー、あるにはあるけど…武器はそんな種類ないのよね、あそこ。本当に強い武器が欲しいなら鍛冶師に依頼した方がいいし、訓練用にしては強力すぎるし…何より、武器は剣や短剣しか置いてないし。」
「じゃあ、なんで冒険者の味方って言ってたの?」
「武器や防具の品ぞろえはいまいちだけど、それでも予備の予備くらいにはなるし、メインはそっちじゃないからね。」
「…?メインは、武器じゃない…?」
「ふふん、せっかくだから、冒険者志望のクロッカス君に一つ質問をしよう!冒険者にとって最も大切なものはもちろん自分の身を守れる武器や防具。…ですが、それと同じくらい大切な、冒険に行く前に準備しておきたい物は何でしょう!」
武器と防具以外で大切な物…。えぇっと、冒険するときに無いと困るのは…携帯食、とか?
「えっと…食べ物、かな?」
「あー近い!確かに、遠出したり、長期間の冒険なら欲しくなるけど、一番はアイテム!特に薬草だね。他にも、一時的に武器を強化できる魔法薬とか、簡易テントとかあるけど…とにかく、冒険や戦闘を補助するアイテムの品ぞろえがめっちゃ良いんだよね!食材は、最悪現地調達できるからねぇ。覚えておきなさい。薬草は、冒険者にとっては命綱なんだから!」
薬草は、接種することで傷の治りが早くなるアイテムだ。新鮮であればある程、そして加工されていなければいない程、早く治るらしい。しかし、さすがに草をそのまま食べるのは抵抗がある人が多い為、エキスを抽出した液体タイプが広く出回っている。液体タイプは、薬草の濃度が高い程効果がある。
「そうそう、あの店のは液体タイプでも薄めてなくて、品質がいいから大丈夫だけど、店によっては水で薄めて安売りしている効果が薄いやつもあるから気を付けてね。どっちを飲んでも美味しくないから、ちゃんと効果で選びなさい。」
「はーい!」
薬草って、まずいんだ…。母さんがよく、「怪我はなるべくしないこと!いざという時は仕方ないけど、あれはあんまり口に入れたくないのよね。」と言っていたのは、そういうことだったのか。
「それからね、あの店のすごいところは、無加工の薬草も売っているのよ!しかも、効果だけで考えたら一番お得!一番まず…美味しくないタイプでもあるんだけどね。たぶん、素材そのまんまの薬草は、お母さんたち以外買ってなかったと思うけれど。今も売っているのかなぁ。」
話している内に、ご飯を食べ終えた僕達は、軽く身支度を整えて家を出た。
「じゃあ、ゲウム君に声をかけてから武器を買いに行きましょうか。昨日持ってた剣じゃ、ボロボロすぎるしね。クロッカスが持って行ったあれ、お母さんのお古なのよ。しかも訓練用。」
「えっ、そうだったの!てっきりちゃんとした武器かと…」
「実戦で使う剣の刃が、あんな丸まってて何が斬れるっていうのよ…。」
「うっ…おっしゃる、通りです…」
「まぁ、それ以外にも、剣よりクロッカスにあう武器が見つかるかもしれないからっていうのもあるんだけれどね。」
僕はゲウムの家に向かう途中、どんな武器を買うかを考えていた。やっぱり王道の剣か?いや、大剣を振って戦うのもかっこいいな…。短剣で縦横無尽に駆け回りながら敵を切りつけるのもよさそうだ。あるいは斧を使ってずっしりと構えて戦うのも捨てがたい…!いや待て、二刀流っていうのも夢があってかっ…
「なに考え事してるの。ついたわよ。」
「ふぇっ?…あ、うん。おーい!ゲウムー!起きてるかー!」
母さんによって現実に引き戻された僕は、ゲウムの家の戸をノックしてから、大声で呼びかけた。
「ま、ゲウム君も昨日は夜遅かっただろうし、さすがにまだ寝て…」
「おー!おはよう、クロッカス!あれっ、お母さんも一緒なのか。」
僕らの後ろから、ふいにゲウムが話しかけた。僕と母さんは驚いて固まり、ゲウムは不思議そうに僕ら2人を見た。
「珍しいこともあるもんだな。で、えっと…クロッカスのお母さんは俺に何か用事でもあるんですか?」
「っえ、ああ、そうね。実は、クロッカスが冒険者になりたいって言うから、特別にお母さんが鍛えてあげようと思ってね。よかったらゲウム君もどうかなって。」
母さんがゲウムに要件を伝えると、彼は驚いた顔をした後、僕の方をじっと見つめてきた。視線で「マジ?嘘じゃないの?」と、僕に聞いてきたので、僕が小さくうなずくとゲウムはさらに驚き、戸惑った。
「本当ですか!それはとても嬉しい、です、けれど…」
「あら、もしかして、実力を疑っているの?」
「…はい。クロッカスから、元冒険者だという話は聞いていたので、知っているんです。でも、強さに関してはなにも聞いてないから…。」
「なるほどね。だけど、その点に関してはご安心!なんてったって、私は元A級冒険者なんだから!あ、これ当時の冒険者証ね。一応、持っておいてよかったわ。」
そういうと、母さんはカバンから一枚のカードを取り出した。そこにはクフェアという名前と、職業、そして……
ランクAを示す金色のマークがあった。
「…おい、クロッカス。これマジなのか?聞いてねぇんだけど。知ってたなら言ってくれよー。」
「僕だって、母さんのランクを知ったのは昨日の夜なんだよ!」
ゲウムはカードを見るとすぐに僕の近くまできて、小声で話しかけた。僕だって聞いてなかったんだ。そんなことを言われても困る。何なら、母さんの冒険者証を見たのは今日この時が初めてだ。あれ?なんで昨日見せてくれなかったんだ?…まぁいいか。
「それで、ゲウム君、どうする?こんな機会、そうそう訪れるものじゃないわよぉ。」
母さんが、すごく機嫌がよさそうな顔でゲウムに問いかけた。なぜか、この母さんの表情と今の状況に近い場面にあったことがある気がする…。いつって?昨日くらいかなぁ。僕がそんなことを思っていると、少し何か考えていそうだったゲウムが口を開いた。
「ぜひ、お願いします!俺、強くなって、いつか勇者様みたいにいろんなところを旅して、魔物を倒して、誰かを助けて…そんな冒険者になりたいんです!」
「よし、決まりね。それじゃあ、ジニアにあなたたちの武器を買いに行きましょうか。道中はこのクフェアさんが2人を守ってあげるからね。安心して、何の武器にするかでも考えていなさい!」
ゲウムの答えを聞き、母さんは満足そうに1つうなずいてから、腰に下げた剣の柄に手を添えてそう言った。
そうして、僕達3人は目を輝かせ、ウキウキとした気分でジニアに向かって歩き出した。
…シッソウシナイヨ、ホントダヨ。ちょっとずつ書いていって、7000字以上いって切りよくなったら公開する、といった感じでやろうと思っています。だとしても、更新頻度が遅すぎるって?ま、この作品は作者のエゴ100%でできていますってことで…。失踪だけはしないから!ゆるして!




