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『 』色  作者: エゴの塊
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少年K#1

 ー僕には、憧れている人がいる。僕だけじゃない。僕と同じくらいの人たちは、みんなその人に憧れているはずだ。その人は、強くて、かっこよくて、優しくて…そして、僕の命の恩人だ。

 僕は、クレオメという小さな村で、クフェア母さんとエキザカム父さんの間に生まれた一人息子だ。隣に住んでいたゲウムとは、よく遊んでいた。

 12才のある日、いつものように遊んだ後、木陰で寝転んで休んでいるとき、

「そういえばクロッカス、お前あの噂知ってるか?」

と、ゲウムが聞いてきた。


「ぅん?あぁ、あれだろ、『ユウシャサマが強力な魔物を倒して下さった』ってヤツだろ?今度は何を倒したって話になってるんだ?」

「お前さぁ…まぁいいや、ドラゴンらしいぞ」

「ふーん…そんなに強いユウシャサマが本当にいるなら、とっとと魔王を倒してくれりゃいいのにな。ま、結局のところ、ただの詩人の作り話で勇者なんていないんだろ。」


 『ユウシャサマ』とは、最近突然名を聞くようになった青年のことだ。何でも、魔物に襲われた村を救ったり、強力な魔物を討伐したりしているらしい。が、僕はこの『ユウシャサマ』の話を全く信じていなかった。だってそうだろ?人間でドラゴンより強いヤツがいるなんて誰が信じられるんだ。でも、ゲウムはそうじゃなかった。


「そんな事はない!特に今回のドラゴンはジニアによく出ていたやつだし、実際その話が流れ出したくらいのタイミングから全く目撃情報が無くなっているんだ!これは勇者様が倒したからに違いない!」

「いやいや、それってサンスベリアの事だろ。あれこそ殺せない魔物の代表格じゃないか。目撃されてないのは、ただ休眠期に入ったとか、そんな所なんじゃないか?」


 ジニアは、僕たちの村から徒歩1時間くらいの所にある町で、村から1番近い、冒険者組合がある場所だ。たまにではあるが、買い物をしに行く事もあるから、そのドラゴンの事も知っていた。サンスベリアは、『永久不滅の竜』としてよく知られている、殺せない魔物だ。そのはずなのだ。


「クッ…それは…そうだけど…。っていうか、クロッカスは憧れないのかよ、例え作り話だとしてもさ、圧倒的な力を持った人に!魔物討伐に!」

「そこまでかな。いくら強くたって、人間である以上油断したら終わりだろ。危険を冒してまで魔物を倒すだけの勇気も僕にはないし。」

 そう言うと、ゲウムは突然ニヤニヤした顔で言った。


「そういや怖がりだったな。前クロッカスが俺の家泊まりにきたとき怖くて夜一人でトイレ行けないって泣きつかれたりしたもんなぁ〜」

「ちょっと!それは昔だろ!今は全然怖がりなんかじゃないからな!」


 すると、ゲウムは勢いよく体を起こして、

「おっ言ったな?じゃあさ、今度肝試ししようぜ。」

と言った。


「えっ…と、どこで…?」

「あそこだよ。ツワブキ洞。ほら、抜けた先に魔物たちが住む街があるって都市伝説があるとこ。」

「いやいやいやいや、危ないから、危険だから!万が一本当に魔物がいたらどうするのさ!」

「『ユウシャサマ』の噂は信じないのに、都市伝説は信じるんだな。」

「っ…分かったよ、行けばいいんだろ、行けば!僕がもう怖がりではないって事、証明してやる!」

「ょし、決まりだな!来週のよr、いや、昼くらいにツワブキ洞の前に集合だ!出来れば雰囲気も重視したかったが…流石に夜行くのは可哀想だからなぁ。」

「ーっ分かった!あ、でも、護身用の武具とかはちゃんと持っていこうな…?」

「まぁ、ただの都市伝説とはいえ、用心しとくべきだよなぁ。わかった。絶対来いよな!」


 そう言うと、ゲウムは走って家へと帰っていった。

 ツワブキ洞は、大人達の中では別に立ち入り禁止というわけではないが、どことなく不気味である事から、決して行ってはいけない危険な場所と認識されていた。そのせいか、人の出入りが全くない所なのだ。そのため、誰も1番奥まで辿り着いていないし、調査も全くされていない。

 それもあってか、根も葉もない都市伝説が生まれている。

 ゲウムが言っていたものの他にも、最奥には金銀財宝があるとか、ドラゴンの亡骸があるとか、色々な噂がある。その真偽が分かるかもしれないと考えるとワクワクする。

 が、やはり魔物の噂が頭をよぎる。危険だと、行くべきでは無いと、そう警鐘を鳴らしている気がする。でも、ゲウムは前からツワブキ洞に行きたがっていた。僕が行かなくても、ゲウム1人で探索してしまうだろう。それで、もし魔物がいたら…!僕は、これ以上揶揄われたく無くて勢いで引き受けたが、そのせいで悲惨な事が起きたら…!そんな悪い未来が頭をよぎる。行くキッカケは僕だ…なら、行く、しか無い。

 行って、入り口の近くを探索して、帰ろう。そうすれば、大丈夫だ、きっと。そう結論づけて、僕は家に帰った。道に咲く黄色いカーネーションがやけに目についた。



 肝試し当日になった。集合場所に着くと、剣を持ったゲウムがリュックを背負って待っていた。

「おい、クロッカス遅いぞ!恐怖で足が重くなったのか?」

「いや、時間通りなんだけどね、僕。ゲウムが早すぎるだけだよ。そんなに行きたかったの?」

「そりゃ、宝があるかもしれない場所なんだぜ?行きたく無いやつの方が少ないだろ!」

「…まぁ、それもそうだね。」

「話すのはこれくらいにしてさ、早速入ろうぜ!目指せ、最深部!」

 そう言って、早歩きででツワブキ洞に入っていた。


「待ってよ、入り口付近なら兎も角、奥まで行くのは…」

「『今は全然怖がりじゃない』んだろ?だったら日和らずに奥まで行こうぜ!それにさ、俺らは今武器を持ってる。なら魔物の1体や2体くらいは倒せるんじゃないか?」


 まずい、かもしれない。奥まで行かずに帰るようゲウムを説得する口実が思いつかない。嫌な感じが消えてくれない。


「…あー、それとな?サンスベリアを倒したって話、最近聞いたものなんだよ。だから、まだこの辺に勇者様がいる可能性はあると思うんだ。」


 きっとゲウムは、僕を少しでも安心させようとしてくれているのだろう。でも、この感覚が拭えない。覚悟もできない。


「万が一があっても何とかなると?」

「まぁ、楽観視し過ぎだって言いたいのも分かるけどよ、過度に恐れるのも良くないと思うんだよ。俺だって、お前を俺のエゴに付き合わせている以上、保険もない状態で行く事はしねぇし。だから…」

「あーもう!分かったよ!今日この辺りを探索している冒険者がいる事を確認してあるって事だろ?」

「それを確認する為に昨日わざわざジニアまで行ったからな、間違いないぜ。」

「じゃあ行くよ、奥まで。けど、少しでも危険を感じたらすぐに引き返す。それでいいか?」

「構わないぜ。親友を危険に晒すほど酷い人間ではないからな。」


 正直、恐怖はまだある。嫌な予感もする。けど、それだけの理由でゲウムは止まらない事を知っている。今まで、行こうとすれば僕に止められるからと我慢していたのを知っている。キッカケを作ってしまったのは僕だ。だから…


「ょし、い、行こう!」

「おおぉぉぉ!!」

 そうして、僕達はツワブキ洞の探索を始めたのだった。



 探索を始めてから、どれほどの時間が経ったのだろう。日の光が届かず、手元の頼りなく揺れる灯り1つで周囲を把握しているから、わからない。


「結構歩いた気がするけど、何もないね…」

「なんていうか、拍子抜けだよな。もっと、こう…心踊る冒険が待っていると思ってたんだが…」

「あれ、行きたかったのって冒険だったの?てっきり財宝探しの方かと思ってたんだけど。」

「いやまぁ、それもあるけどさぁ。」


ゲウムはそう言葉を区切ると、くるりとこちらを向いて、

「一番はやっぱ冒険だろ。未知の土地を探索し、強大な敵と戦い勝利したり、宝を見つけたり…って考えるとさ、なんかワクワクしてこないか?」

と言った。


「僕は恐怖の方が勝っちゃうな。ワクワクしないってわけじゃないけど。ていうか、前向いてよ。危ないじゃん。」

 そう言うと、ゲウムは不服そうな顔をしながら前に向き直った。少しして、また僕に話しかけてきた。


「あー、だからかもな。発案したのは俺だけどよ、正直乗ってくるとは思わなかったからさぁ。なんでだろって思ってたんだよ。どっかで冒険がしてみたいって思ってたんじゃないか?クロッカスも。」

「…わからない。僕自身も不思議に思ってたけど、適当に理由をつけて片付けてたし。」

「ふーん…そうなんだ。ーっ!」


 話題に対する興味が無くなったのか、気のない返事をしたゲウムだったが、次の瞬間に足を止め、周囲を警戒し始めた。視線は暗く先が見えない道の奥へと注がれる。


「足音…?それに、あの灯りは…」

「人…かなぁ?けれど、ここに来る人なんてそうそういないと思うけど…。」

 足音がする奥の方からは、人の背丈よりも明らかに高い場所に光源があり、音と共に近づいて来ていた。

「加えて、魔法でないと有り得ないような位置に光源があるな。」

「えっと…つまりは…」


 魔物は魔法なるものが使えるらしいと聞いた事がある。人間にも使える人がいるが、それは聖女とかそう言った特別な人に限った話である。そして、こんな場所にその様な人が来るわけがない。

「まぁ、そう言う事だよな。クロッカス、撤退するぞ!これ以上は…」

 ゲウムがはっきりとした声で撤退を呼びかけたその時、奥から低い雄叫びが響いてき、続いて複数の足音が聞こえてきた。


「言われなくても!"2人で"逃げ切ろう!」

「それを守れる自信はないけどなぁ!」

 そう言いながら、ゲウムも僕の後ろを走った。出来れば前、そうじゃなくても横を走って欲しいのだけど。それを言う余裕はなかった。



 それから僕達は、逃げて、逃げて、逃げ続けた。まだ入り口は見えてこない。どうやら思っていたよりも奥の方まで歩いていたらしい。

 途中から、僕と比べればまだ体力に余裕のあるゲウムが僕の腕を引いて走っていた。が、限界が近そうだ。僕達は人間だ。体力は無限ではないし、走る速度も疲労が大きくなるにつれて遅くなっていく。

 後ろの足音が、走り出した時よりも大きくなっている。話し声も微かに聞こえてきた。そんな状況でも外が見えない事に危機感と恐怖を感じていると、不意に

「……ごめんな?」

と聞こえてきた。次に、グイッと腕を引っ張られ、僕とゲウムの位置関係が反転した。

「…?ーっ!」


 一瞬何がおきたか分からなかったが、ゲウムが何をしようとしているか気付いた瞬間、声をかけようとした。だが、それよりも前にゲウムが口を開く。


「ー俺は!武器を持ってる!だから大丈夫だ!すぐに合流してやるから、今お前ができる最高速度で逃げろ!」

 ゲウムは覚悟を決めた顔で、前を見据えながらそう言った。だが、僕は、その言葉に従う事はできない。覚悟を決めて、親友に言葉を返す。

「僕だって剣を持ってきてるよ!だから戦える!ゲウムを犠牲に僕だけ逃げるなんて、僕にはできない!親友を守りたいのは、僕も、そうなんだから!」

 そう言い切ると、ゲウムは驚いた顔でこちらを見た。

「っ…アッハハ!そうだよな。悪い。2人で、だもんなぁ。走り続けてもジリ貧だ。なら…」

「一か八か、だね!」

「ああ!やるぞ!」

 僕とゲウムは、剣を構えて足音がする方向を凝視した。


 しばらくすると、相手の顔が見えてきた。どうやら2人組のようだ。どちらも人間の様な姿をしている…背に生えた黒い羽と、猛獣を思わせる様な鋭い牙を除けば。どうやら彼らも僕たちを発見したらしい。2人組の片方が口を開いた。


「なぁ、ビンカ、ガキ2匹が俺らに剣を向けてるぜ?どうするよ。」

 ビンカと呼ばれた魔物は、その言葉に対し、

「それは捕えるのか、それとも殺すかということかい?もしホリホックがさっきの奴らに対する交渉材料が欲しいっていうなら捕える1択だけど。」

 と答えた。さっきの奴らとは何だろう。別の魔物だろうか。どちらにせよ、こいつらが僕らを害そうとしている事実は変わらないが。

「ぁ〜、確かに材料にはなりそうだが…今は長旅で腹が減ってるんだ、丁度いい食材があったら取らなきゃだろ?」

「そうだね。可食部は少なそうだけれど…空腹を紛らわすくらいはできそうだ…!」


 そして2人の魔物は剣を抜き、僕らに襲いかかってきた。僕とゲウムは何とか攻撃を剣で受け止める事ができた。

「ぉ、重い…!」

「所詮はニンゲンの子供か…弱いな。安心しろ。一欠片も余す事なく食べてやる。これでも、食材にはそれなりの感謝を持っているからな。」

 魔物は少し離れてから、飛び上がって天井スレスレのところまで行くと、一気に僕に向かって降下してきた。僕はギリギリのところで避けたが、休む暇もなく追撃が来るので、このままではいずれ殺されてしまう。


 2対2だから、ゲウムと協力して魔物を倒す事が難しい。それに、2回目の攻撃でゲウムと距離ができた為、連携すること自体が難しい。何とか、倒せはしなくともこの場から生きて帰る術はないか…

「チッ…ちょこまかと逃げて…更には考え事をする余裕まであるとはな。雑魚は雑魚らしく、とっとと肉片になればいいのに、なぁ!」

「っ!」

 攻撃が、今までのものより重くなった。受け止められたのも奇跡と言えるレベルだ。腕が痺れる。次は、無い。そう確信できる1撃だ。死の恐怖が、途端に実体を持って目の前に現れた。瞬きをした次の瞬間、死神が、鎌ではなく剣を持ち、僕目掛けて再び振り下ろさんとしていた。


「その努力だけは賞賛しよう。…無駄な足掻きだったけどな。」

 膝から崩れ落ち、ギュッと強く目を瞑った。僕は、死んでしまうのか。ゲウムは、どうなんだろうか。あいつは剣の訓練とかしてる時あったからなぁ。案外、生き残れてたりしないかなぁ。

 …にしても、まだ痛みが来ない。一瞬で死んだからだろうか。苦痛がなかったというのは、少し、救いなのかもしれない。死それ自体は、絶望以外の何者でもないのだけれど。そんな事を思っていると…声が、聞こえた。


「っ…ぶないな。君、大丈夫かい。とりあえず、後ろに下がってくれ。」

 僕は…生きている?恐る恐る目を開けると、そこには…救世主が、ヒーローが、魔物の剣を剣で受け止めていた。金髪碧眼で、立派なアーマーに、柄に竜をあしらった剣を持った自分より1つか2つしか違わなそうな少年だった。装備と動きから、確かな強さを感じる人だった。


「は、はい…あっ!ゲウムは…僕の友達は!?」

「ああ、あの赤髪の子かい?それなら大丈夫だよ。君も危なそうだったから、仲間に任せてこっちに来たんだ。無事で良かったよ。後は俺に任せてくれ。」

 ゲウムは無事らしい。チラッと後ろを見ると、確かにゲウムが、息を切らしながら地面に座っていた。近くには、淡いピンク色の髪に紫色の瞳を持ち、白い服を纏った少女がいた。結界を張ってゲウムと自身を守っている様に見える。ということは、彼女は聖女なのだろうか。ゲウムが相手していた魔物は、結界内に手を出せないと分かったからかもう1体の魔物と合流しようと移動していた。

 とにかく、あの結界のところまで下がればいいのだろうか。そう思い、走って向かおうとしたが、


「っえ…?」

 立ち上がって1歩踏み出したところでコケてしまった。足を見ると、生まれたての子鹿の様に震えていた。それを見た金髪の少年が、聖女らしき人に支持を出した。

「カルミア!彼を赤髪の彼のところまで運んでくれ!」

「わかったわ!その間、支援するのが難しくなるから、敵の攻撃には十分気をつけてね!」

「ああ!分かってる!」


 その会話の後、聖女らしき少女が僕の方に走ってきた。ある程度近づくと、少女は何かを唱えた。すると、僕の体が宙に浮きだした。

「流石に自力で運ぶのは大変だから…気持ち悪いかもしれないけど、少し我慢してね。」

 そう言って少女は結界の方へと走り、それに追従する様に僕の体が移動した。彼女は、移動中の魔物から守るために僕にも結界を張ってくれた。

 別に気持ち悪くなる事はなかったが…何というか…ありがたいような、情けないような、そんな心境だった。


 結界内に着くと、僕の体はゆっくりと地面に降りた。

「あ、ありがとうございます!」

「元気そうでなによりね。酔わなくてよかったわ。さて、私はオドント…あの金髪の人の支援に行ってくるけど、この結界から出ない限りは安全だから、安心してね。」

 少女は僕達に声を掛けた後、結界を僕ら2人が入って、かつスペースに少しだけ余裕が出るサイズに張り直してから金髪の人の元に向かっていった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ストーリーが…書きたい事を書いていったら展開が早くなりすぎてしまった…!思いついたら、こっそり間のストーリーを追加しておきます。

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