第八話
シルヴァン·ルキリエ。攻略対象。私の幼馴染。......攻略対象!?!?
どうしよう、今しがた攻略対象たちに嫌われないようにしよう、と決意したばかりだったのに。頭をフル回転させて考える。シルヴァン来たけど、何て言えば良いんだ!?というよりも、
「何でいるの!?」
まずい!心の声が漏れてしまったー!!テンパってるってば!しかもシルヴァン、私のこと嫌いな設定だー!
どう返事が返ってくるだろうかとひやひやしながらシルヴァンの方を見ると、意外にも、彼は嫌そうな顔はしていなかった。それどころかちょっとむっとしたような顔で、しかも少しばかり顔を赤くしながら
「頭打ったって聞いたから大丈夫なのかなあって思って心配してやったのに、なんだよ」
と言った。
ーあれ?もしかして私のこと心配してくれてる?ん?そしてなんか照れてる?ー
今のシルヴァンの様子を見る限り、どうも私のことを嫌っているようには見えない。でも、あすぷりの人物紹介の所には、「彼女の歪んだ性格を昔から嫌っており……」と書かれてあった。この頃のフェリシアは、まだ歪んでいなかったということなのだろうか。
と、そこまで考えてハッとした。フェリシアの性格が歪んでしまったであろう理由に行き着いたから。
それはきっと、昨日の誕生日の件だ。私が防げたから良かったものの、もしそのまま事故が起きていたら、私はやはり歪んでしまっていたのだろう。前世の高校生である私と、フェリシアの記憶とが混じり合ってしまっているにしろ、私は「私」であり「フェリシア・バートランド」なのだ。たった1つの選択で今後の人生が大きく左右されるというのは、何年生きても恐ろしいことなのだと思った。
しかし、「今は嫌われていない」というのが現状なわけだから、この好感度を維持しようと決意する。
「ごめんごめん、心配して来てくれたんだよね?ありがとう」
シルヴァンが私のことを心配してくれているというのは、少し意地悪そうにも取れる彼の口調からも伺えたので、純粋にお礼を言うと、
「え、いや、べ、別にっ?あっ、てかお前!け、怪我したばっかだろ!?とっとと寝ろ!安静にしとけよ!じゃあな!」
そう言って窓からひらりといなくなってしまった。顔を真っ赤にしてテンパりつつも、優しさと思いやりは忘れないシルヴァン、最高!
もっと仲良くなりたいなぁ。
そう思った私は、シルヴァンに怒涛のアプローチ(という名のダル絡み)を試みるのである。