第三話
2話目です。
目を覚ますとそこは、さっきまでいたお花畑ではなく、だだっ広くて豪華な部屋の中だった。1度部屋を見ただけで、前世とは違うと分かる。転生したんだ、という実感が少しだけ沸いた。
それで、それでだ。私が起きた時1番に思った事。
え、最高かよ。
まず、ベッドが大きい。なにしろキングサイズ以上ある気がする。しかもふっかふか。ここで1日くらいは余裕で過ごせる自信がある。。そして部屋が広い。広い。そう、広いのだ。ほんっとうに広すぎる。私が住んでいたマンションの〇号室1つ分くらいはあると思う。それに調度品が豪華だ。ソファもあるし…。ダメだ。ここは私を廃人にしてしまう…!!ただ、1つ思ったのは、色合いに悪意があるということだろう。金に赤の組み合わせは目がチカチカする。悪役令嬢の部屋みたいだ。
と、ここまで考えるとのどが渇いてきた。何せ目覚めてから1度も水を飲んでいなかったのだ。私はベッドの上から、すぐそばに置いてあった水差しを取った。…はずだったが。手が空振った。
あれ、おかしいぞ??腕の長さが足りないんだけど?
ここまできてようやく、私はこの違和感に気付いた。よくよく見ると、手が小さく、ふっくらしている。
え゛っ、ここはどこ私は誰!!??
慌ててベッドから飛び降り、鏡を見ると、そこには。
絶世の幼女がいた。えっ、幼女!?
幼女かぁ…。私はてっきり、学園に行く直前に前世を思い出すとか、それか本当に0歳からのスタートだと思っていた。正直すっごくびっくりだ。
見たところ6・7歳くらいだろうか。それにしても本当に美人だ。アイスブルーのさらさらロングストレートにミルクティーみたいに甘い瞳。
「こりゃあ将来が楽しみだわ~、まあ、私なんですけどねぇ、......っ!?」
ズキッ
突然激しい頭痛に襲われ、思わず目を瞑って蹲る。と、脳内を様々な映像が駆け巡る。スクリーンのようなものに、それがダイジェストのようにどんどん映し出されていく。
豪華な自室。
まだ年端もゆかぬ女の子が、使用人を怒鳴りつけている。
『ちょっと!どうしてこんな簡単なことができないのよ!クビよクビ!!!』
晴れたのどかなティータイム。穏やかな時間のはずが、メイドに熱い紅茶の入ったティーカップを投げつける女の子が1人。
『ほんっと、愚図ね。鈍間の不能。あんたみたいなの、どこの家も採ってくれないわよ。感謝しなさい?』
何なの、これ?幼い女の子から吐き捨てられる罵詈雑言に吐き気がしてくる。どうしてこんな理不尽に、自分の感情を周りにぶつけているんだ?かくいう私も、前世で散々ひどいことをしてしまったので何も言えない。でも。
流石にこれはひどい。
映像はまだ続く。
おそらく誕生日なのだろう。綺麗に飾り付けられたホールの誕生日席に、あからさまに不機嫌そうなさっきの女の子が座っている。女の子に似た母親らしき人と、父親らしき人が近付いてくる。母親が優しそうで嬉しそうな顔をしながら、女の子にプレゼントー綺麗なお人形ーを渡して、言う。
『誕生日おめでとう、フェリシアちゃん』
それを見た女の子はますます不機嫌そうな顔になり、言った。
『こんなの、私にふさわしくない!買い直してきてよ!』
母親は悲しそうな顔になった。女の子はその顔を見て更に不機嫌になり、ホールを出て自室に向かう。階段を上りもうすぐで登りきる、という瞬間に視界がぐるんと回り映像が途切れた。
そうか、それで私は自室に運び込まれて、目が覚めたら前世を思い出した、という形になって今ここに居るのだろう。
それにしても。
これが私なのか。ひどすぎる。やばいわ、こんな性悪見たことない。私以外で。
それで、たった今までのダイジェストを見て、ふと気が付いたことがあったのだが。
記憶の中で、母親は何と言っていたか。
『誕生日おめでとう、フェリシアちゃん』
そこで私はある1つの可能性に行き着いた。
あれ、私ってまさか「あすぷり」の悪役令嬢、フェリシア・バートランドだったりする?
いつも読んでくださりありがとうございます!