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第9話  終わりの予感、当たってもらったら困るのだが。

 外に出てしばらくすると、ちょうどいい感じの裏路地を見つけた。

そこに隠れるように座ると、これからのことを考える。


 他の国なら指名手配なんてされてないと思うけど、そこまで行けるかどうか。

でもあのままあそこにいて、フェマさんに迷惑はかけられないし………


ここは薄暗いから、ライトを当てて見ないとバレないとは思うけど………


ちらっと大通りの方を見ると、王宮の兵士さんらしい人たちの姿が見える。

慌てて体を引っ込めた。

いろんな建物から人が出てきて、兵士さんからチラシを受け取って、首を傾げて否定する。

それから兵士さんがまた隣の建物に移って、みたいな流れができている。


これやばいな。

誰かに見つけられたら終わりじゃね?

俺は小さくなって膝を抱える。


これどうしようもねーじゃん。

フィクションならここら辺で優しい人が助けてくれそうだけど、ここは現実である。

天気はいいから、雨がどうこう、とかはないけど………



 とりあえず、見つからないようにすること、体感時間一時間ちょい。

「目撃情報がないな………」

と言う渋い男の人の声。

ゆっくり覗くと、ガタイのいいおじさん(階級が高そう)と、ヒョロイお兄さんたち(平社員くらいの感じ)が話し合っていた。


「やはり、聞き込みだけでなく、裏路地や、細い道などを歩いて探して見たほうがいいかもしれませんね。」

「そうだな。それぐらいの労力は惜しんではいけないな。」


あ、やばい。

終わりの予感。


ちょっと、ここから出よう。あの人たちがいる反対側の大通りに出れば………


 そっと大通りに出ると、フードをかぶって、下を向いて歩き出した。

早く歩くと不審者に見られそうだから、ゆっくり、普通に歩いて、ただ眩しいからフードをかぶっている人、を装う。


兵士さんはそこかしこを歩き回っているけれど、街の人たちは特に怯えている様子はない。

それどころか、楽しそうにパン(?)や果物(?)を勧めたりしている。

兵士さんもニコニコ応じているし、いい国だな、ここ。


追われるようなことがなければ、豊かに過ごせると思うんだけど。


道を歩いていると、お店の人に捕まった。


「ねぇそこの人!これ、買っていかない?」

美味しそうなパン(?)を勧められる。


「これ、なんていう名前ですか?」

フランスパンみたいなやつを指差すと、


「バケットパンだよ。この店でいちばんの商品さ。」

そう言われて、

(あ、この国の商品名、日本と一緒だ。)

と嬉しくなる。


「ただ、申し訳ないのですが今持ち合わせがなくて。さっきお使いで使い切ってしまったんです。」

そう言って、フェマさんからもらったバスケットを見せると、おばちゃんは納得したみたいで、


「そうなの。なら、また今度来てちょうだいね。あ!なら、このラスク持ってって!試供品だから、食べて感想を伝えてちょうだい。」

「わかりました。ありがとうございます。」

ラスクをいくつかもらうと、一つ、口の中に入れた。


「ん!サクッとしてて、優しい甘さがあって………あ、これはくるみ、ですか?」

日本での呼び方を口にしてみる。


「そうなの!キャラメルでコーティングしてあるのよ。」

あ、聞いたことある単語がたくさん。

助かる。


「これで自信が出たわ。ありがとう。これ、お礼よ。」

そう言われて、わら半紙らしき紙袋をいただく。


「塩パンって言ってね、しょっぱくて美味しいから、ぜひ食べて。」

「ありがとうございます。」

俺は微笑んで頭を下げた。



 バスケットの中に入れて、また歩き出す。

フードを深くかぶり直した。

ちなみに、フードをかぶっている人は結構いるので、怪しまれない。


よかった。


ただ、問題はバレるバレないではなく、俺に行くあてがないと言うことだ。

まず、のほほんと暮らしていた俺のような日本人にとって、野宿なんて考えられない。

と言うわけで、俺は今日野宿するわけにはいかない。


なんでかわからないが指名手配されているのだ。

宿なんかに止まるわけにもいかない。


せめて、テントが欲しい。

雨風が凌げる場所なら、まだマシだ。



 ………あれ?

俺は大通りで立ち止まり、首を傾げた。


頭の中に、大きな洞窟の映像が浮かんで来たからだ。

俺がちょっと高いヒールを履いてもたったまま通れるくらいの入り口で、奥行きも十分。

森の中?

木がたくさん生えている。

果実なども成っている。


おかしいな。

俺はこんなところを知らない。

昨日子供達を助けた時でさえ、俺はこんなところを見てすらいない。


たとえ視界の端に入っていたとしても、こんな中のことまで詳しく分かるはずがない。


どうなってる?

罠か?

いや、罠だとして、こんな面倒な方法があるか?

ってかこの世界では、頭の中に映像を送ることが可能なのか?

テレパシーのすごいバージョンだな。



 ………とりあえず。

この森を目指してみよう。


そう思うと、勝手に足が動き出した。

いや、あれだ。

魔法みたいな強制力がある”勝手に”じゃなくて、自分がその場所を知っていて、親しみ慣れていて、行き慣れているから、自然と行ける、みたいな”勝手に”なのだ。


おかしな話だ。

この世界に来てから疑問しかない。


ぐるぐるぐるぐる考えていると言葉にできない脳の疲労が押し寄せてくるので、俺は考えないことにした。

いいや、もう。


捕まるわけにはいかないが、それ以外は成り行きでなんとかなるだろう。

なってくれるだろう。


うん、森に行ったら、最低限住める環境を整えよう。


何がいるかな?

まずはあかりだろ。

そんで、食べ物。

フェマさんがくれた分では、たぶん二日ほどしかもたない。

それから防寒具。

あとは………


俺はその時、自分の空想に没入しきっていた。


だから、


後ろから何人かが俺のことをつけていたのに気づかなかったことに関して、俺は一切悪くないのだ。

 読んでくださってありがとうございます。

最近投稿頻度高めな僕。めっちゃ頑張ってる。


最近書くことが楽しくて楽しくて仕方ありません。

あと、技名とかって考えるのは大変ですけど、しっくり来るのができると嬉しいですよね。


 それでは、また二日後、第10話のあとがきでお会いしましょう。

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