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第40話  神様にも学力テストがあるらしい。

 「今日やったのは、魔法薬作りと、飛行術と、テストと、国語と………」

「テスト?」

「はい。なんか、基礎能力を測る、みたいな」

「校庭を凍てつかせたり、燃やし尽くしたり、そういうの、大丈夫だったか………?」

ポーチャさんが菓子を食べる手を止めて心配する。


「さすがに大丈夫ですよ………アダムさんがペンダントをくれて、それで魔力が少し抑えられてるんです。」

と言っても、先生方にびっくりされるような扱い方をしたわけだけど。


「アダムさん………あぁ、国王か!仲良くやれてるようで何よりだな!」

ジンさんがにっこり笑う。

さすが日の神様、太陽みたいな笑い方だ。


「魔法薬作りはどうだったのぉ?ナオくん、初めてだから難しかったりしたかしらぁ?」

「あ、いえ、全然大丈夫でした。校舎内にある材料を魔法で取り寄せて、教室で調合しただけですし。」

「………あらぁ、すごいのね〜。さすが勇者様だわぁ〜。」

「でも驚かれただろ?」

「何がです?」

「寸分の狂いもなく、見たことないものを取り寄せるって、結構むずいぞ?」

「そうですかね?神様たちがくれたデータベースのおかげで、ある程度形はわかってましたし………」

「それも含めて、さすが、だな。」

ポーチャさんが頭を撫でてくれる。


「わわっ。もう、恥ずかしいですよ〜。」

口ではそう言いながらも、実は全然嫌がってない。

人にこういうことされるの、嫌いじゃない。

むしろ大好きだ。


まぁ、人じゃなくて神様だけど。


ポーチャさんもそれをわかっているのか、撫で続ける。


「でも、飛行術は得意そうだな!」

ジンさんに言われて、


「え、なんでです?」

と疑問文を返す。


「だって運動得意そうだもの〜。」

ヴァーださんにそう言われるが、しかし俺は、


「俺、あんまり運動得意じゃないです。むしろ苦手です。」

「あら、そうなの〜?」

「でも、平衡感覚は良さそうだな。」

頭を撫でるのをやめてポーチャさんが俺の髪を整えながら言う。


「それを言うなら体幹が強い、でしょ。」

「そうだった。」

全知全能であろう神様でも知らないことあるんだなぁ。

なんだか親近感を感じる。


そう思ったのを見透かしたのか、

「神様、って言ってもねぇ、ミーナスやジンはたーっくさん物事を知っているけれど、わたくしたちは全知全能というわけではないのよ〜。」

ヴァーダさんが微笑む。


へ〜、なるへそ。


「中でも、ポーチャはひどいんだよねー。」

いつの間にかリーツァさんが現れて、ポーチャさんの膝の上のかごお菓子を二つ取り上げて、一気に口に放り込んだ。


「あぁ!?お前に言われたくねーよ!!!」

一気にポーチャさんがガラ悪くなる。


さっきまでは見た目に反して優しい大学生のお兄さん、って感じだったけど、今は見た目通りのヤンキー、ってかんじ。


「何よ!体幹くらい、あたしでもわかるんですけどぉ?」

「でもこの間やった学力テストはポーの方が点数高かっただろ!!」

学力テストなんてあるのかよ!

神様に!???

一体どんな問題が出るんだ、一回見てみたい。


そしてこんなけんかしてるのに一人称がポーなせいで全然頭に入ってこねぇ。


女子だろうが男だろうが自分のこと下の名前で呼ぶのって、幼稚園か小学生の低学年くらいじゃないだろうか、っておもってたんだけど、ポーチャさんが自分のこと”ポー”って呼ぶのは可愛い………って言ったら息の根を止められそうだから言わないけど。


あぁでも、俺が言うのは許してくれるかも。この人はまるで兄貴みたいに俺のことを甘やかしてくれる。

リーツァさんが言ったらもっとひどい喧嘩になるだろうな。


「でも〜、」

ヴァーダさんが頰に手を当てておっとりと言う。


「結局、一位はミーナスとジンが満点で同じだったじゃないのぉ。あなたたち、どんぐりの背比べぐらいの点数差だったじゃない〜。ギリギリポーチャが最下位じゃなかっただけだわぁ。」

穏やかだけどかなりひどいこと言ってんな。


「で、でも、ヴァーダだってフィオには負けてただろ?」

「あなたたち二人とソルディには勝ったわ〜。」

ヴァーダさんも意外と負けず嫌いらしい。

つまり、学力テストの順位は、


一位:ジンさん、ミーナスさん

二位:フィオさん

三位:ヴァーダさん

四位:ソルディさん

五位:ポーチャさん

六位:リーツァさん


って感じのようだ。


 こうしている間にも二人は言い争いを続けている。

「ともかく!お前がポーよりバカだってことはこないだのテストでわかったんだから、ちょっと黙ってろ!」

「はぁ?あんたの方がバカでしょ!学問ができても、自分の畑もわからないような奴が頭いいわけないじゃないの!!」

「あぁん!?生まれ持った性質がそれだったってだけだろうが!!八つ当たりにもほどがあんだよ!!」

「ちょっと二人ともぉ、せっかくナオくんがきてくれてるのよ〜、そんなくだらない喧嘩は後になさいなぁ。」

ヴァーダさんが頑張っておさめようとしている。


ジンさんがため息をついてたくさんのお菓子が入ったカゴを持ってこっちへやってくると、


「これやるよ。そろそろ戻らないといけないだろうし。………あーあ、もっと喋りたかった。」

「あ、ありがとうございます。そうだ、ひとついいですか?」

「うん、いいよ。」

「今までの話聞いてると、リーツァさんが一方的にポーチャさんを恨んでるって感じなんですけど、でもポーチャさんもリーツァさんに怒ってますよね?」

「ああ、あれはね………最初は、リーツァがポーチャに喧嘩売ってる感じだったんだけど、だんだんポーチャもムカついて反論するようになって、そんで今みたいになったんだよ。自分は何もしてないのに一方的に悪く言われたら、誰だって腹がたつだろ?」

「あーなるほど………あ。」

聞きたかったことを聞いた途端に、体が薄れ始めた。


「ほらお別れだ。じゃあね。喧嘩してて見送れない二人と、なだめている一人の代わりに言うよ。また近いうちに、そう、できるだけ早いうちにおいで。」

「はい、きます。それじゃあ、また今度………」

「うん、バイバイ………」

手を振るジンさんの姿がだんだん薄れて行く。


 王宮に戻ったら、そろそろご飯の時間かもな。

 読んでくださってありがとうございます。

ポーチャの一人称、可愛くて私はとても好きです。

これからも彼らが登場することは多いでしょう、楽しみにしててください!

それでは、次のお話でお会いしましょう。

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