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第35話  ホウキ乗りの才能

 「それじゃ、もう一回。」

ルーカス先生はそう言うと、俺に、


「大丈夫だよ、君の前まで来たら、ホウキは止まる。そしたら次の指示を出すから、先ずは呼んでみて。」

と肩をさすってくれた。


「さ、どうぞ。」

「はい。」

スゥッと息を吸って、


「”来い!”」

とホウキを呼んだ。


さっきみたいに、しばらく地面でプルプルしたかと思うと、ホウキは俺の方へ一直線に飛んで来た。


「大丈夫だよ、ちゃんと止まるから!」

と言うルーカス先生の声で、俺はちょっと落ち着く。


大丈夫、大丈夫………。


1度目を閉じて、ゆっくりと開く。


さながら気分はどこぞのラノベのチート主人公である。

いや、チートであることがバレたらまずいってアダムさんに言われたんだけどね。


このペンダントのおかげでなんとかなるけど。


ヒュンとやって来たホウキは俺の目の前でピタリと止まる。


「ルーカス先生、止まりました!」

「そうだね。綺麗に止まった。普通ならもうちょっと過ぎたりするかもしれないんだけど、でも、本当にぴったりだ。君、ホウキ乗りの才能があるよ!」

パチパチ拍手されて、俺は少し照れる。


褒めて伸ばす系の人かと思ったけど、でも、やっぱりうれしい。


「それじゃ、今度は乗ってみよう。ホウキの柄をしっかり掴んで、飛び上がりながらホウキが自分の下に来るようにするんだ。」

「ムゥ………」

えっと、ホウキを掴んで、ジャンプ。


ホウキが自分の下に来るように操作。


軽い衝撃が走り、俺は体を固くする。


「リトニアくん、目を開けてごらん。ちゃんと乗れているよ。」

下の方から聞こえるルーカス先生の声に目を開けると、俺は確かにホウキに乗り、そして浮いていた。


すごっ………!


「よしっ、なら、そこでしばらく止まってみよう!」

ルーカス先生もだんだんとテンションが上がってきているらしい。


俺は頷きながら、ホウキの柄を握り直した。


しゃんと背筋を伸ばし、そして、


「あれ?」

ちょっとこの体制きつくないか?


もうちょっと、力を抜いて、楽に………。


力を抜くと、グルンと世界が逆さになった。


いや、ただ単に、俺が力を抜きすぎてホウキから逆さ吊りになっただけだけど。


「あぶないっ。」

と言うルーカス先生の声がしたが、俺は落ち着いていた。


俺はヒュンと一気に高度をあげ(逆さのまま。だんだん頭に血が上ってきてキツイ。)、それからホウキから手を離した


空中で体制を立て直すと、ホウキが自分の下に滑り込んできて、元の体制に戻った。


「………すごいね!でも、ホウキから力を抜いちゃダメだよ。わかった?危ないからね。」

「はい、すみません。」

ホウキから降りて頭を下げると、先生はウンウン頷いてから、


「でもすごいね。あんな一瞬でホウキを呼ぶなんて。それに………」

「来い、って思いっきり命令したら来ただけですよ。そんな、すごいなんて………」

大声を上げれば上げるほど早くくるみたいだ。


って、あれ?


さっき俺、声に出して呼んだっけ?


 一瞬俺の思考が停止したのを読んだのか、先生は言う。


「じゃあ、続きをやろう。次は少し旋回するように飛んで………」


慌ててふわっと空に舞い上がり、先生のいうようにくるくるし始めた。


うっ。

俺が苦手なタイプだ、三半規管が弱いんだよ。


片手でしっかりとホウキを掴んだまま、口元を抑えて、上を向く。


顎をワナワナと震わせながら息を吸い直す。


暖かい空気が肺の中に入ってきて、いつもならそれで楽になるのに、今回はそう簡単じゃなくて、頭が両側から超音波で攻撃されているようにクラクラし始めた。


それに連れて、ホウキもフラフラしてくる。


「リトニアくん!危ない!」

そう叫ぶ先生の声が遠くになっていく。


ホウキと一緒に意識を手放す直前、俺は杖をつかんで頭の中で考えた。


『下に空気のクッションを。それから、すぐにこのクラクラを治して、基準値の判定テストを受けられるように。』


そして、凄まじい速度で地面に落ちて行った。



 「………ニアくん!リトニアくん!」

ルーカス先生の声で目を開く。


リトニアくんと、オーリャさんが俺を覗き込んでいる。


「先生………オーリャさん………」

「大丈夫なの?」

「うん。ただ、ちょっと酔っちゃっただけで。なんともないよ。」

そう言うと、オーリャさんは腕を組んで重心を片方にして、はぁ、とため息をついた。


「ふん、心配して損をしたじゃないの!………でも、まぁ、なんともないなら、よかったわ。」

ほんと、テンプレのようなツンデレだ。


頰が少し赤くなっているのが見える。


グラウンドには基準値の判定テストを行うためにアーリャ先生がいた。

あと、校長先生も。


それ以外の生徒たちはグラウンドの外の客席にたくさんいる。


そんなに俺の基準値が気になるか?


でも、てことは、


「オーリャさん、俺のために残ってくれたんだ。ありがとう。」

そう、精一杯目を見て伝えると、オーリャさんはもっと顔を赤くしてフンッと背けた。


「別に、あんたのためなんかじゃないんだからねっ!」

今まで何回見たことがあるよってレベルのセリフだ。


片目を閉じて、もう片方の目で俺を見ている、ツインテールのツンデレ美少女。


アニメとかだったら人気キャラにランクインするな。



 「先生、俺、あの、基準値測るやつ、テスト、できます。やらせていただけませんか?」

正式名称がわからなくてそう言うと、ルーカス先生は心配そうな顔のまま、俺の体のあちこちをみると、


「………うん、問題なさそうだ。でも、何かあったらすぐに言うんだよ。」

と言って、アーリャ先生たちの方へポンと軽く背中を押してくれた。


オーリャさんは客席に向かいながら、


「い、一応、言っておくけどっ。」

と俺を軽く見て、


「が、がんばりなさいよっ。せっかくアタシがこの学校のことを教えてって頼まれてるんだからっ。」

ツンデレな激励の言葉をくれた。


「ありがとう、オーリャさん、頑張るよ。」

「大丈夫、リラックスだよ。」

グラウンドを少し整備しながら、ルーカス先生は言った。


 二人の言葉に、もともとあった自信がもう少し増えて、よし、と軽く拳を握りながら頷き、アーリャ先生の方へ小走りで急いだ。

 読んでくださってありがとうございます。

次は私が結構書きたかった基準値テストの回となります。

前回から二ヶ月くらい空いていることに気づき、やばくね?パソコン開いてすらなくね?となっております。

春休み明けにあるテストに備えなければならないので寝ますね。

お休みなさいみなさん。


頑張って近いうちにお会いできるようにいたします。

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