第34話 魔法使いといえば。
俺たちが片付けを終えて雑談をしていると、授業の終了時刻がやってきた。
先生が、
「完成していない君達はどうにか頑張ってね。」
と言って消えていってしまった。
まだ完成できていないみなさんは絶望しているらしい。かわいそう。
と言うかどうにかって。投げやりにもほどがあるだろ。
いやまぁ、先生は投げやりにしてるわけではないんだろうけど、さぁ。
「手伝ってあげたほうがいいよね、」
と言って立ち上がろうとすると、オーリャさんは俺の手をつかんだ。
「何言ってるの!」
そして説明してくれる。
「そんなことしたら殺されるわよ!」
「へ!?」
「アンタ………この学園に通ってるのがどんな奴か知らないの?」
ぽかんとする。
脳内データが教えてくれないってことは、あっちの世界でも聞いたことあるような内容ってこと?
「みんな貴族よ。それも、このSクラスにいるのなんて、貴族の中でも伯爵やら侯爵やら公爵やらよ!?当然、みんなプライドが高いの。手伝ってあげましょうか、なんていったら、何されるかわからないわ。」
やったらダメよ。
そう言われて俺が頷くと、オーリャさんは、懸命な判断ね、と言うように頷いた。
「えーっと、じゃあ、次の授業は何かな。」
「飛行術よ。」
オーリャさんはそう言いながら立ち上がった。
「それじゃ。」
「え?ちょっと待って………」
と言うと、オーリャさんはからかうような顔で俺の手をパンと払いのけると、
「着替えにまでついてくるおつもり?」
と聞いた。
「いや、そうじゃなくて………ごめん。」
クラスにいた数少ない女子がクスクス笑う。
こいつら、さっき課題に間に合わなかったやつじゃん。
きっと、家の名前だけでこのクラスまで登り詰めたんだろうなぁ。
登り詰めた、と言う表現ではいけないな。
登り運ばれた?名前に運んでもらった感じだろうな………おっと。
ため息をついて席に戻ると、いつの間にかアーリャ先生が隣にいた。
「ね、リトニアくん。次、飛行術が終わったら、入学時に魔力の度合いを測るテストがあるんだけど。」
こないだ神殿でスキルは計ったはずなんだけどな。
それでも足りないのか。
「わかりました、心の準備をしておきます。」
と営業スマイルをしてみせる。
心の準備も何も、何をするかもわからないし。
とりあえず、俺も着替えた方がいいのかな?
この学校指定の体操服………ってか、ジャージに。
地味な色合いだけど、風通しが良く動きやすい。
俺の学校のジャージもこんなんだったらなぁ………
ま、俺運動苦手だから結構サボってたんだけども。
あ、誤解すんなよ。運動神経はそんなに悪くないかんな………多分。
ただ、登校下校の全力ダッシュをもってしても、全然体力がつかなかったんだよね。
あと、筋力も。
体質的にダメだったんだろうなぁ………。
俺は杖を軽く振ってパッと着替えると、手元に出現したさっきまできていた服を畳み、しまった。
えっと、どこに行ったらいいんだろう………
キョロキョロしてみたら、何人かがすでに教室にいなかった。
ので、廊下に出て、体操服姿の人たちの後をついていくことにした。
そのまま進んで、外に出て、あれこれうねうねし始めたかと思ったら、校庭みたいなところについた。
ぼっちで立っていると、だんだん人が集まってくる。
あ、ちゃんとホウキは持ってきてるぞ、ちゃんとな。
ざわざわと喋り声が広がる中、風を切る音がした。
強風が頭の上をかすめ、そして風の中から、ホウキに乗った男の人が現れた。
しっかりした体つきだけど、マッチョだってわけではない。
ただ、腕の筋肉は結構しっかりしてる。
ホウキに乗るのって、腕の筋肉がいるのかも。
「今日は初めての人もいるので自己紹介するな。ルーカス・リンドゥだ。どうぞよろしく。」
俺にちらっと一瞥くれてからそういう。
この言い方だと睨まれたみたいだが、全然そんなことはなく、むしろにっこり微笑まれたくらいだ。
オーリャさんよりももっと明るい茶髪をポニーテールにしている。
髪留めにかんざしを使って。
器用だなぁ。
「それじゃあ、いつものようにウォーミングアップなー。」
軽くひらひら手を振ってそう言うと、俺の方へ歩いてきた。
「君が、リトニアくんかな?」
「あぁ、はい。今日から転入してきました。」
背筋を伸ばして頭を下げると、
「固くしないでいいよ〜。それより、基本能力のテストはこの後なんだよな?じゃあ今は、俺と一緒にゆっくりウォーミングアップしていこう!」
爽やか笑顔である。
「は、はい………。」
距離感を掴めずにいるけれど、まぁでも悪い人じゃないだろうし。
「んじゃ、ちょっと移動するぞ〜。ホウキはここにおいて。」
みんなからある程度距離を取ると、先生は、
「まず、ホウキを呼ぶところからだな。」
「呼ぶ。」
「そう。例えば………」
そう言ってルーカス先生は自分のホウキを見て、
「こんな風に、自分のホウキを見て、呼ぶんだ。”来い!”」
ルーカス先生が凛と声を張ると、凄まじい勢いでホウキが飛んできた。
「あぶなっ。」
と避けようとすると、ルーカス先生は避けるどころか、飛び上がってホウキの上に軽やかに乗った。
その状態でコウモリのようにぶら下がると、俺に向かって手を振って、
「ほら、やって見て。」
と言った。
「はぁ………。」
俺は自分のホウキを見つめた。
「緊張しなくていいよ〜。」
先生はホウキから降りながら言う。
俺は息を吸って、精一杯声を張った。
「”来い!”」
ホウキが地面でプルプル震えたかと思うと、こちらへ一直線にやってきた。
「わ、わぁっ!?」
きてくれたことはうれしいが、残念なことに俺は、
「こ、これ、どうしたらっ!?」
そう叫ぶと、ルーカス先生は俺の前に出た。
ぐんぐん迫ってきたホウキを素手でぐんと掴んで止めると、
「大丈夫、追突してきたりしないからな。それにしても………」
「はい?」
「いいや、なんでもないよ。さ、もう一度やろう。」
俺のホウキをさっきの位置に戻したルーカス先生が、心の中で、
『一発目から呼べる奴なんて聞いたことねーぞ………。みんな2、3日かかったのに………。』
と思っていたことを、俺は知らない。
読んでくださってありがとうございます。
実は今現在絶賛!テスト期間!!
最悪☆
少年陰陽師の方書けてはいるので、えーっと………来週の金曜日くらいには投稿できるかなと思います。
いや、木曜日かな。
なんか今あれです、悪役令嬢もの?を書いてはいるんですけど。
でもなんかえっと………一から十まで令嬢が幸せなんですよね。
私はそう言うやつしかかけません。
あは。
それでは、次のお話で、できれば来週にお会いしましょう。




