第32話 魔法動植物学………じゃないんかいっ!
というわけで授業が始まった。
一時間目は、”魔法動植物学”
おっしゃ、これは脳内の知識で行けるやつだっ!
一時間目から”魔法薬調合”とか来たら発狂してやろうかと思った。
ちなみにアーリャ先生は”魔法動植物学”と”魔法薬調合”と”数学”を担当してくれるらしい。
結構ハードだ。
ノートをとろうと思って荷物を見て見たら、ノートが一冊もなかった。
え。
でもこれを用意してくれたのはイヴさんとかアダムさんとかエラさんとかだよね。
ってことは必要なのに忘れるってことはないだろうから、いらない?
周りを見ていると、教科書しか出していない人がほとんどだった。
ノートを持っている人はいない。
え………?
ノートいらないの?
自分から話しかけるのは恥ずかしい、けど、
「お、オーリャさん。」
「何?」
「ノート、とらないでいいの?」
「………北ではどうだったか知らないけど、この国では基本取らないわよ。」
「へぇ。」
なんでも教えてくれるはずの脳内データベースだけど、どうやらこれが教えてくれるのは”知識”だけみたいだ。
───あ、いやでも、そんなことな、い?
よくわかんないけど、わかるのとわからないのがあるみたいだ。
魔法的な知識についてはわかるけれど、細かい地域のマイナーな慣習とかはわからない、ってこと?
それか、よほど大切なこと以外は教えてくれないとか?
魔法についてのあれこれは俺の元々の世界には全くなかった、存在しなかったことだし教えてくれるのかも。
ノートを取る取らないの違いは学校の教育方針とかによって違うもんな!
あ、だんだんわかってきたかも!
つまり、俺の元々いた日本とか、そうじゃなくても全世界になかった魔法とか国の話とかは教えてくれるけど、そうじゃなくて、住んでいる地域や活動範囲によって内容が前後するだけで、別に元いた世界でも別の地域ではこんなことはありましたよ、みたいなことは教えてくれないのかも。
ちょっと納得かも!!
そう思い、得意になった俺は、知らず知らずのうちにほおが緩んでいたらしい。
「ちょっとなんなの、リトニアくん、顔がすごいことになってるわ。」
とオーリャさんに怪訝な顔をされた。
「え、あ、ごめん。元いた国と違う、っていう事象ががわかると嬉しいんだよね。」
とテキトーを言ってのけると、オーリャさんは納得しかねるという顔で納得してくれた。
「それでは、前回の続きのページを開いて。リトニアくん、前の学校でここまで習ったかしら?」
オーリャさんが教えてくれたページから前のページは、見たこともない魔物が載っていたけれど、なぜか全ての動物について知っていた。
弱点から注意点から倒し方から、とにかく全部知っていた。
「はい。」
「それじゃあよかった。なら、今日は………」
アーリャ先生はそう言って杖を振った。
猫じゃらしみたいな、短い杖だ。
「この植物についてやりましょう。」
教壇に大きめの黒い鳥かごが現れる。
中にはたくさんの気持ち悪いピンク色の花が入っている。
「これの名前はわかりますね?リトニアくん。」
「えっ。」
突然指されて焦る。
でも俺の焦りとは逆に口は勝手に動き出した。
「ファントムフラワーです。」
さらに、『これは幻惑作用のある煙を吐き、それを吸うと三日三晩悪夢に見舞われる』と続けようとしたのだが、そこで先生が言った。
「正解よ。実はここはまだ習ってないの。みんなちゃんと覚えておいてね。」
それから先生は黒板に”ファントムフラワー”と書くと、
「それじゃあ、オーリャ、この生物の特徴は何かしら。」
「煙を吐きます。」
「その煙を吸うとどうなるのかしら。」
「三日三晩悪夢を見ます。」
「そうね。それじゃあ………」
そしてアーリャ先生はポン、とカゴを叩いて、
「今からこれが煙を吐くわ。悪夢を回避するための薬を作ってもらいます。完成しなかったら三日間悪夢に耐えないといけないわよ。」
そして綺麗な顔をイジワルく歪めた。
結局魔法薬調合じゃねぇか!!!!!!!!!
オーリャさんがため息をついて、俺に耳打ちしてくる。
「………これもあって、姉だって言いたくないの。イかれてるのよ。」
なるほどね。
………ってことは、これはいつものことってわけか!
だってみんなもはや諦めたような顔をして教科書を必死にめくり始めたもん。
先生は楽しげに杖をふって、教室の半分の机の上に器具がおかれた。
解毒薬を作るための設備である。
めっちゃちゃんとしてる!
「二人ひと組のペアよ、隣の子と組んでね。」
つまり、俺はオーリャさんとだ。
「足引っ張らないでよ。」
と睨まれるので、
「善処するよ。」
と笑って見せた。
多分大丈夫だと思うけど。
だって神様が全部教えてくれたし、俺はお菓子作りが得意なんだ!
調合が苦手なんてことはあり得ないと思うなぁ。(さっきまでビクビクしていたやつのセリフとは思えねぇ)
「材料は実験室から取ってくるなり温室に行くなりしてね。」
そして先生はガスマスクみたいなのをつけて教卓の椅子に座った。
みんながため息をついて、教科書に書いてある薬の材料をメモに写す。
「………はぁ。私たちも行きましょう。悪夢は嫌なの。」
オーリャさんがそう行って立ち上がろうとする。
俺が普通の人間だったら、「うん。」と言って一緒に材料を取りに行っただろうが、俺は違う。
第一俺は温室や実験室がどこにあるか知らない。
それで迷ったらこの時間内に終わらないかもしれない。
「行かなくても大丈夫だよ。」
俺がそう言うと、オーリャさんは、
「ここには何もないわよ?」
と呆れたように肩をすくめた。
「───魔法で集めればいいでしょ?」
俺はそう言って、小さくして制服の内ポケットにしまっていた杖を元のサイズにして取り出した。
読んでくださってありがとうございます。
チートななおくんを描くのが楽しいです。
もうね、自分がもし魔法使えたら何するんだろうを全部なおくんにやらせてます。
楽しいなぁ。
今怒涛の更新ラッシュなんでね。
誤字あったらご報告いただけると嬉しいです。
それでは次のお話でお会いしましょう。




