第20話 部屋広っ!お風呂広っ!そして俺でもほうき乗れるんだ!
王宮に帰ると、イヴさんが待っていた。
「おかえりなさい、アダム様、フェド様、ナオ様。」
俺は瞬時に、
「あの、できれば、様付けしないでもらえませんか?慣れないので。」
と言った。
イヴさんは一瞬驚いた顔をしたが、穏やかな笑顔を浮かべて頷いた。
「イヴ、ナオくんを部屋に案内して、もう少しくわしい部屋の説明をしておくれ。それと、部屋の鍵と、学園の制服と、説明と。よろしく頼むよ。」
「はい、あなた。」
そう言うとイヴさんは俺の方を見て、にっこりと優しく笑った。
イヴさんはアダムさんの青い目と違って若草色の目をした優しそうな女性だ。
「あざ、えっと、よろしくお願い、します。」
思わず、あざす、と言いかけた。
「ふふ。」
と笑うと、こっちです、と言って俺の手を引いた。
しばらく歩くと、大きくて細かい細工がされた白いドアの部屋に着いた。
そこの鍵穴に細い金属の板を突っ込むイヴさん。
え、鍵って、そんな雑なものでいいの?
と思っていると、鍵穴の中でガチャ、ガチャと言う音がして、イヴさんはそのまま板を回した。
そして扉が開く。
金属の板を引っこ抜くと、それは鍵のような形に変化していた。
しかし、しばらくしてすぐに戻ってしまっている。
「これは、鍵穴に反応して形が変わるのですよ。これがここの部屋の鍵です。どうぞお持ちください。」
そうして手渡された鍵を手に持ち、どうしよう、しまう場所がないと慌てていると、
「あら大変!そのお洋服はポケットがついていないのですね?入って着替えてしまいましょう。シャワーも浴びて、さっぱりしたほうがいいですよ、昨日は野宿だったのでしょう?」
そう言われ、俺は頷いて、イヴさんの後から部屋に入った。
さっき神殿に行く前にも思ったが、それはそれは大きな部屋である。
「とりあえず、教科書なんかの学園で必要なものは机の上に置いてありますからね。」
そう言われて、俺はあちこち見るのをやめ、机を見た。
なるほど、立派な木の机の上に、山と積まれた教科書たち。
それに………
「ほうきだ!」
俺は叫んで駆け寄った。
「俺でもほうきって乗れるんですね!」
魔力があれば乗れるらしいって俺の脳みそは言ってるけど、でもやっぱり少しは素質ってものがいると思う。
「それはもちろん。ナオくんは勇者ですからね。」
イヴさんは微笑ましそうな顔をしてから、パン、と手を叩いた。
「さぁ、とりあえずシャワーを浴びてきたらどうでしょう。着替えは準備しておきますから。」
と言われて、感謝と羞恥心がごちゃまぜになった感情が生まれた。
とりあえずお礼を言って、言われた通りに浴室に向かう。
服を脱ぎ、タオルを持って入ったところは、
「ひろっ!!」
と叫ぶほどの大浴場である。
え、え〜。
旅館のお風呂だってこんなに広くないぞというほどである。
いや、今のはちょっと盛ったけれど、でも旅館のお風呂と同じくらいだ。
どうなっている。
スペース、どうなっている。
そう思いながらも、俺は浴室の端の方にあった、なんか、最新鋭!って感じのシャワーを浴びることにした。
あったかい………体に染み渡るや。
アニメとかだったら、ここで、カポン………という効果音が入るのであろう。
ちなみにシャンプーやリンスもある。
めっちゃフローラルな香りがする。
ありがたく使わせてもらうことにした。
汗や汚れを落とし、真ん中にあった浴槽に入る。
「ああ〜!」
正確には、あに濁点をつけたような声だったと思う。
色々あって、今日1日で起こったこととはとても思えない量の体験の疲れが溜まっている。
しばらく浸かって遊んだりしていると、体はすっかり温まった。
浴室から出ると、フッワフワのタオルと、さっぱりした服が並んでいたので、ありがたく着させていただく。
ベージュでサラサラした生地のゆったりとしたズボンに、白いシャツに、紺色のベスト。
金色のボタンがついているけれど、多分使わないんだろうと判断し、ベストの前は開けてある。
ちなみにミサンガはつけたままお風呂に入ったが、全く濡れていない。
神様パワーかな?
ミサンガを撫でながら俺は脱衣所を出た。
イヴさんが待っていた。
「すみません、お待たせしました。」
「大丈夫ですよ。さ、ここのカバンに入っているのが学校で使うものです。ほうきは壁にかかっていますからね。あと、あそこの部屋はたくさんお洋服が入っているので、好きに着て構いませんわ。学校の制服の替えも一緒に入っていますから。洗濯物は脱衣所のカゴに入れておいてもらえばご不在の時に洗っておきますし、食事はわたくしたちと一緒に取りますわよね?」
え、毎日一緒に食事?
うわぁ………
と思ったけれど、イヴさんが期待しているようなので、俺は頷いた。
イヴさんはキュッと目を細めて笑う。
あまりに嬉しそうなので、とりあえず黙るしかない。
「それじゃあ、ここでゆっくりしていてくださいね。ご飯の時間になったら、メイドのエラが迎えにきますから。」
「はい。」
エラさん。メイドのエラさんね、よし。覚えた。
ウンウンと一人で頷くと、イヴさんはそれをチラッと見てから、部屋を後にした。
イヴさんの足音が遠ざかって、聞こえなくなると、俺は大きくため息をついてベッドの上に倒れこんだ。
読んでくださってありがとうございます。
実は今日、ボクの誕生日なんです。
というわけで、ボクは一人でそれを記念して、ボクが連載している「少年陰陽師」と「氷の王子様」と、この「ダンクリ」を、1話ずつ更新します!
頑張ってます。
次投稿するのは「氷の陰陽師」です。
あ、混ざっちゃった。
「氷の王子様」です。
それでは、また後でお会いしましょう。