第17話 おはようございます。そして、俺一人で行かなきゃダメですか?
なんだか体の周りがふわふわして柔らかい感じがしたので、俺は目を覚ました。
「あぁよかった、起きたね、ナオくん。」
その声でベッドの横を見ると、アダムさんとフェドさんが座っていた。
二人とも、ホッとした顔をしている。
軽く部屋を眺めると、ものすごく大きい部屋で、このベッドもかなりの高級品であるということだけが分かった。
「ナオくん、どこも悪いところはありませんか?」
一つ一つの言葉を確認するようにフェドさんが聞いてくる。
「はい、何も。」
俺は、今までのことを二人に話すか悩んだ。
でも、神様にあった、っていうのはちょっとどうかと思うから………
ま、いっか。なんか知識出さないといけない時に、全部知ってますよ、って言えば。
よし、解決。とりあえずそれでいい。
「しかし、なんだったんでしょう、急に倒れてしまうなんて。」
「あー、えっと………」
俺はそう言いながら、さっき片付けたはずの問題をまた考えないといけなくなった。
「確定じゃ、ないけど、」
やっぱりタメ語には慣れない。
俺は一つ一つ、矛盾が生まれないように言葉を選んだ。
「俺、今、この世界の全てがわかるんだ。学問のことでも、言語のことでも、抽象的なことでも、なんでも。多分、その全てのデータが一気に頭に流し込まれたことによる弊害なんじゃないかな?」
フェドさんもアダムさんも、口をポカンと開けた。
「えっと、勇者だから、神様がこの世界のことを全部俺に教えてくれたんじゃないかな?ってこと!でも、脳がそのデータの容量に耐えられなくて、ヒートしちゃったんじゃないかな、って、こと………」
だんだん声が小さくなった。
フェドさんが、
「勇者様というのは神様の使いですし、神様がナオくんに全てを教えた、というのなら、ありえない話ではないのでは?」
とアダムさんの方を向いた。
「あぁ………神様達はなんでもありだからね。でも、そういうことなら、よかったよ。体調不良とかだったらどうしたらいいかわからなかったし………ナオくんの体に起こることがこの世界で起きることとおんなじとは限らないから、」
と言うアダムさんの言葉を遮って、俺は言った。
「あ、それは大丈夫です。」
神様が教えてくれたこの世界の全てによると、この世界は時間の区分とかがちょっと日本と違うってだけで、病気とかはぜーんぶ一緒だ。
野菜の名前とか、お肉の名前とかも。
ブランドの名前とかは流石に違うけど。
そのことを説明すると、フェドさんがしみじみと、
「便利ですねぇ………。」
と呟いた。
アダムさんもそれに頷いた。
俺もそう思う。便利だ。
あぁちなみに、俺の誕生日は日の月じゃなく木の月23日だったようだ。
多分、俺が最初の月から六つとか言ったせいで、フェマさんが勘違いしちゃったのだろう。
「とりあえず、俺はもう全然大丈夫なので!」
「それは良かった。あ、ちなみにここは今日から君の家だよ。」
「ファ!?」
確かに、さっきイヴさんがお部屋を用意してくださっていたけど、こんな大きい部屋だとは聞いてない。
すげー、立派!
密かにテンションが上がっていると、アダムさんが詳しい説明を始める。
「あそこの部屋には服が入ってるから、好きなのを着るといい。君が好きそうなのを選んだから。」
ちょっと待って、服を入れるのはクローゼットでしょ。
部屋一つに収納するもんじゃないでしょ。
「食事は私たち家族と一緒にとれたらと思っていたんだけれど………嫌かな?」
「いえ、全然!むしろ楽しみです!」
やっぱここって王室なんだな、とか、お姫様や王子様と仲良くなれるかな、とか、漫画が好きな人がいるなら話したいな、とか、色々考えまくったのを全部吹き飛ばした。
それに俺、基本昔からずっと一人飯だったから、家族とご飯食べるとかいう経験がなくて、ちょっと嬉しい。
俺の家族ではないけど。
「それじゃあ、ナオくん、神殿に行ってスキルを測りましょうか。魔力料などから考えて、学園のクラス分けはおそらくSクラスだとは思いますけど。」
「そうだね。でも、固有スキルとかも大切だから、行ってみよう。」
そう言われて、俺たちは神殿に向かうことになった。
アダムさんが用意してくれた馬車に乗り、数分。
ちなみにこれはお忍びなので、王様がいる!とかって騒がれることはない。
神殿に着くと、神殿長様が出迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました、アダム様、フェド様、そして………」
下げた頭を一度あげ、より一層深く下げてから、俺に言った。
「勇者様。」
「こ、こんにちは。」
俺がそう言うと、フェドさんが小さな声で、
「気にしなくていいですよ。そんなに緊張しないで。」
と言ってくれた。
頷いてはみるものの、神殿長様がかなりの威厳をお持ちなので、無理である。
結構ご高齢なのかな?
着てる服はミーナスさんが着てたみたいな牧師さんの服とはまた違うけれど、似たデザインだ。
全部真っ白なんだけれど、布の材質が違うからか、違う色みたいに見える。
胸から下げた、銀でできた七つの輪っかがいくつも連なっているみたいなネックレス。
なるほど、これが、この世界での十字架みたいなものなのみたいだ。
俺の脳がそう言ってる。
神様、ほんと便利な機能つけてくれてありがとう。
あ、そういえば。
こっちに戻ってくる直前、ミーナスさんに何かもらったな。
そう思いながら自分の手を見ると、左手にミサンガが巻かれていた。
ぱっと見銀色なのだが、たくさんの角度から見ると、色が変わる。そう見える。
こげ茶色や金色、オレンジ色に赤色。黒色に緑色、そして青。
多分これは、それぞれの神様の色なんだろうなぁ。
かっこいいし、おしゃれ!
ありがとう、ミーナスさん!
と思っていると、フェドさんに聞かれた。
「そんなのつけてましたっけ?」
「え?あ、あぁ〜、服で隠れて見えなかったんじゃないですか?」
ありえない。俺は半袖の制服から半袖の服に着替えたんだ。
「へぇ。それ、角度によって色が変わるんですね。にあってますよ。」
「ありがとう。」
恥ずかしいけれど、嬉しい。
俺は手首に何かついていると結構落ち着くタイプの人種なので、ミサンガとかは好きだ。
足首につける人が多いとは思うが、俺は手首の方がいい。
「こちらへどうぞ、勇者様。」
と言われ、俺が歩き出すと、アダムさんとフェドさんは立ち止まった。
「え?一緒に来ないの?」
と言うと、二人は、
「私たちが邪魔できないからね。」
「そうですよ。私たちはここで待っていますから、行ってらっしゃい。」
と言った。
ひ、一人………
心細いなぁ、と思っていると、神殿長様は笑って、
「大丈夫ですよ。ちょっと水晶玉に触るだけなので。」
「はぁ………」
歩き出しながらも、なおも心細く何度か後ろを振り返る。
二人は、大丈夫!と言う笑顔をしていた。
それに少し励まされながら、俺は神殿長様が開けてくれたドアの向こうへ歩みを進めた。
読んでくださってありがとうございます。
昨日投稿できなくてすみません、すごく眠たくて。
さて、今回の凪和くんですが、敬語はいいと言われているのに、敬語とタメ語が混じり合ってますね。
ま、俺ももし同じ立場だったらそうなると思うので。
それでは、これからも凪和くんと、この作品をよろしくお願いします。
ブックマークなどもよろしくお願いします。
追伸:投稿頻度が落ちるかもです。一週間に一回は必ず投稿できると思います。………いや、二週間に一回かな?
どうぞよろしくお願いします。