第16話 俺天才かもっ!!
俺はポン、と手を叩くと、
「ポーチャ、さんは、」
と言った。
ポーチャさんは俺の方を向く。
わかるかなぁ?という笑い方をして。
「多分、ですけど、」
と保険をかけて、下から、高いところに目のあるポーチャさんを見ながら、
「土の神様、で、あってますか?」
「………ふふ。」
少し溜めた後に微笑むと、
「正解!ポーは土の神だ!」
この悪そうな見た目で、一人称が”ポー”とか、ギャップ萌えで風邪引きそう。
なぜ俺が当てられたかと言うと、耳のピアスがなんだか植物のツタのように見えて、金と土だったら土の方が植物に関係あるな、と思ったからだ。
「ポーは土の神、ポーチャだ!土の中の成分を弄って植物の成長を促したり、大地の状態………岩とか、石とかを司る。後、地震を引き起こすんだ。」
「よろしくお願いします。」
俺が頭を下げると、ポーチャさんも頭を下げた。
すると、フィオさんが耳打ちしてきた。
「ポーチャって、植物の成長を促せるでしょ?リーツァも、植物を司ってるから、それで仲が悪いの。」
「なるほど。」
小声でそう返すと、俺は最後の一人の方を見た。
すると、その神様は恭しくお礼をして、舌を出した。
「そう、オレが金の神。名前はソルディっつーんだ。金運や金の廻りを司り、泥棒に罰を下す。ギターとピアノが得意なんだ。音楽が好きで、な。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
そう言いながら握手をする。
全員のことがわかったところで、ミーナスさんが言った。
「凪和くん、ぼくたちに対して敬語は使わないでいいですよ。」
「え?でも、神様、ですから。」
「そういうのは関係なく、友達みたいに接して欲しいのですが………。」
と言うミーナスさんだが。
神様に友達みたいに接せるわけないでしょ!
「別にいいって。ってか、僕たちがこうやって普通に話してるんだから、凪和も普通に話してよ!」
ニカッと笑うジンさん。
他のみんなも、キラキラした目で俺を見てくる。
「えー………」
そう言いながら、唇を曲げて、眉も潜めて、そんで、
「えっと、それじゃ、よろしく、みんな。」
と言った。
みんなの顔が、パッと華やいだ。
またみんなで机を囲むと、お菓子をつまみながら、俺は聞いた。
「他には神様はいない………の?」
「?」
全員が首をかしげる。
え、いや、あのさ。
「だって、他の国とか、宗教とかある、でしょ。」
「あぁ!」
リーツァさんが手を打つと、人差し指を立てて説明してくれた。
「実は、この世界では信仰対象が統一されてるの。だから、この世界の神様はあたしたちだけ。」
「へぇ!」
争いとかがなくてよさげ!
「こういうのも全部、凪和くんは知ることになりますよ、目覚めてから、ですけど。」
ミーナスさんが紅茶をすすった。
「どういうこと?ここって、夢、なの?」
「夢っていうか、神の世界、っていうか………」
みんなが複雑そうな顔をした。
説明しにくい異空間のようだ。
そんな感じで片付けよっと。
「今、現実世界にいる凪和くんは、王宮で倒れて、とりあえずベッドの上です。多分、後数分で目覚めると思います。そしたら、いったんぼくたちとはお別れです。ぼくらがそっちの世界に出向けないわけではないんですけど、神が普通に世界にいる、となると、大事件ですから。」
「確かに。あ、でも、なんで俺、倒れたの?」
「あぁ、その説明がまだでしたね。」
そう言うと、ミーナスさんは紅茶のカップをおいて、カップのふちをなぞり始めた。
「凪和くんはこの世界について知らないことが多すぎます。ですから、少しでも不自由がないように、この世界の全てを君の脳に送ったんですよ。でも、脳は一度に大量のデータを送られるとフリーズしてしまうので、倒れてしまったんですよ。」
「なるほど。ってことは俺、目覚めたときには全知全能?」
「まぁ、どこぞの賢者なんかよりはもっと素晴らしい知識を持っているでしょうね。」
賢者なんか、って。
言い方。
「ただ、魔法が使えるかは別ですよ。」
「え?俺、使えるよ?」
「そりゃあ、凪和くんは異世界転移者の勇者ですからね。だから使えるには使えるけれど、細かいことはまだできないと思う。それを、これから修行を積んで行ってもらうんです、現実世界で。」
そう言うと、ミーナスさんはお菓子のたくさん入ったカゴを俺の方に押した。
「もう少しいかがですか?」
「いただきます。」
俺はそう言いながら目についたチョコのお菓子をとった。
チョコは好物である。
「わたしたちはみんな凪和くんを応援してるからね!」
と言って顔の下あたりで二つの握りこぶしを作るフィオさん。
それに対して、ウンウンと揃って頷く他の神様たち。
「ちょっと、なんであんた真似してんのよ!」
「してねーし!ってか、全員同じことしてただろ!」
しょーもないことで喧嘩するリーツァさんとポーチャさん。
嫌いな相手が何してもムカつくっていうのはなんかわかるけれども。
この人(神)たち、ものすごく神様っぽさがないよな。ミーナスさんは神様っぽいけれども。
だってみんな、すっごく気さくだし、優しいし。
んで見た目はすっごく若々しい。
この人(神)たちに歳なんてあるのかな?
疑問は解決した方がスッキリする。
そう思ってぶつけてみると、ソルディさんが答えてくれた。
「明確な年齢はねぇな。生まれる、とか、死ぬって概念が存在しねーし。気づいたらいた、って感じ。」
「そうですね。まぁ多分、現実世界にいる方々がぼくたちの存在を信じ始めてから実態ができたんでしょうね。概念としてはそれより前から存在していたかも。」
神様たちもよく知らないようだ。
………それにしても。
異世界とはいえ、神様と話したり友達みたいになったりさわれたり、一緒にお茶したりすることになるとは。
つい二、三日前の自分に教えてやりたい。
きっとびっくりするだろう。
そう思いながら、紅茶を持とうと手を伸ばす。
「あれ?」
手が、少し透けて見えた気がした。
「あ〜!」
リーツァさんがドーナツを口に押し込んで、残念そうに言った。
「ね、ね、みんな!凪和くんもう帰っちゃうよ!」
「え!?」
「早くね?」
「あらぁ。」
「なんか、お土産持たせた方がいいのかしら?」
「おや、予想より随分早い。凪和くん、これを。」
ミーナスさんが俺に何かを手渡した。
紺のビロードの布が貼られた箱である。
「意識が戻ってから見てください。」
「僕たちからの贈り物だ!」
ジンさんがぐっと親指を立てた。
「あ、ありがとう!」
俺はそう言って頭を下げる。
「いいってことよ!」
とソルディさんが言って、俺の背中を叩いたところで、俺はだんだん目の前がかすみ始めた。
ヴァーダさんが小さな声で、「せーの、」と言うと、7人の神様は声を揃えた。
「「「「「「「それじゃあ凪和くん、また今度!」」」」」」」
もう神様達の顔は見えなくなっていたけれど、俺は叫んだ。
「はい!また今度!」
読んでくださってありがとうございます。
実は今現在、放送中の、世界の著名な女性たちの生き様についての番組を見ているのですが、とても素晴らしいですね!
自分の生き様を貫いて生きるというのはとてもかっこいいです!
ぼくも見習いたいです!!!
さて、次の更新は二日後。
ストックも今の所まだあります。
今の所。
なので、予定通りにできると思います!
それでは、また二日後、お会いしましょう!