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第13話  少しずつ縮める距離

 俺はひとしきり泣いた後、ひどい顔が見られないように下を向いた。

そして、


「それでも俺は、やっぱり、勇者じゃないと思い、ます。でも、」

俺はまた熱くなり始める目頭を押さえた。


「アダム様や、フェドさんが、みなさんが、俺を必要としてくださるなら、俺は、俺に出来る精一杯をやろうと思います。」

フェドさんはパッと笑顔になり、アダム様はホッとしたように胸を押さえた。


「ありがとうございます。」

二人に頭を下げられ、俺は戸惑う。


「いえ、あの、………俺、お二人のおかげで救われたので。だから、できることをしたいな、って思ったので、だから、えーっと………頭を上げてもらえませんか?」

二人の顔を交互に見ながら言う。


二人は頭をあげると、相談を始めた。


「まずは何をしたほうがいいだろう。」

「神殿でスキルを図るのが最重要ではないですか。今もうすでにダンジョンを攻略できるほどのスキルはあるようですが………。それによって、今後の対応も変わってきますし。それから、学園への手続きもですね。後、勇者様はここで暮らしていただきますし………」

フェドさんがそう言うと、アダム様が


「なら、神殿に行っている間に部屋を用意してもらおう。」

と言った。


すると、パン、と手を叩く音がした。

音の方を見ると、さっきまでずっとアダム様の隣の玉座に座っていた女の人が立ち上がっていた。


「勇者様の部屋を準備しましょう。わたくしも手伝います。子供達の近くの部屋にしましょう。必要な服などは用意しましょう。剣や杖などは後でご自分でお探しになった方がよろしいですから。」

凛とした声でテキパキと指示をすると、その女の人は部屋から出て行った。


アダム様が、


「あれは私の妻のイヴ。」

アダムとイヴか。


「しっかりしていて、気の利く、私の自慢の妻なんだ。」

と、優しく言う。


 すると、フェドさんが口に手を当てた。

「どうした、フェド。」

「いえ………そういえば、勇者様のお名前を聞いていなかったな、と。」

「そういえばそうだね!すっかり忘れていたよ。」

そして、俺の顔を見た。


「あー、俺は畑下凪和はたしたなおです。凪和なおって呼んでください。」

「ナオ様。よろしくお願いします。」

「どうぞよろしく、ナオくん。」

「………」

黙ってしまった俺に、二人は慌てる。


「何か失礼なことを言ってしまったでしょうか………」

とフェドさん。


「やはり敬語の方が良かったのかな………」

とアダム様。


「あ、いえ!そう言うわけではなくて………むしろ、敬語の方が気を張ってしまって疲れるので、俺的には普通に話して欲しいんですが。」

「すいません、気づかなくて………」

「でも、そう言うことなら助かったよ。」

謝るフェドさんとは対照的に、アダム様は息を吐いた。


「勇者様が子供だとは思わなくてね、こう目の前にしてしまうと、どうも、自分の子供のように思えてしまってならないんだ。」

そう言うアダム様はやっぱりいい人である。


そっか、お子さんいらっしゃるんだよな、当然。


子供みたいだ、って思われても、日本人は童顔だし、何より悪い意味ではなさそうだから、嫌な気はしない。


「ええっと、では、私は君のことを、ナオくんと呼ばせてもらうよ。改めてよろしく。」

手を差し出され、握手する。


「で、では私も、ナオくん、とよびますね。敬語は………なんと言うか、クセなので………なので、抜けるのに時間がかかると思います、けど………。」

フェドさんとも握手する。


「私のことは気楽に呼んでくれて構わないよ。」

にっこり笑って優しく言うアダム様に、悪い印象も、緊張も、威圧感も何も感じないけれど、それでもやっぱり王様だ。


でも、俺のことを自分の子供みたいだって言ってくれる人の言葉には応えたい。


「えっと、なら、アダムさん、と呼ばせてもらいますね。フェドさんは、フェドさんのままで。」

「はい。」

「うん。」



 アダムさんたちに一歩近づけたような気がして、ちょっとホッとしていると、フェドさんが手を叩いた。


「私、神殿に連絡入れてきますね!」

そして走って広間を出て行く。


「神殿って、何するんですか?」

そう聞くと、アダムさんは、


「歩きながら話すよ。」

と言った。


それから、


「神殿では、君のスキルを測るんだ。何がどれくらいできるか、魔力はどれくらいか、ってね。」

「ラノベで見たやつだ!」

思わず叫んでしまい、アダムさんが首をかしげる。


「あ、えっとー、俺のいた世界での物語です。」

簡単に説明する。


「なるほど。君は物語が好きなのかい?」

「好きです!漫画とか、ラノベとか、アニメも好きだし、小説だってどんなジャンルでも………」

そこまで言って、気づく。


待って、この世界で俺の常識は通じないじゃん。

俺の言ってる単語の八割意味わかんないかも。


「なるほどね。この世界にもあるよ。ラノベ、って言うのはわからないけれど。」

そりゃそうだわな。


異世界転生ものが多いラノベで、この異世界からどの異世界に転生すればいいんだ、って話だよな。

すでに魔法が使えるところから魔法が使えない世界に移ったところで………


めっちゃ面白くなるじゃん。最高か?


あ、でも、ラノベだけがわかんない、ってことは、漫画とかアニメもあるってことかな?


聞いてみると、


「あぁ、あるよ。私の子供たちも大好きでね。特に長女と、あと、隠せているように思っているようだけれど、長男も大好きなんだ。」

「へぇ!どんなジャンルが好きなんですか!」

「それは君が聞くといい。きっとすぐに仲良くなるよ、みんないい子だし。」

「頑張り、ます。」

俺は友達作るの苦手なんだけどなぁ………



 そう思った途端、俺はもっと大事なことを思い出した。


「すいません、そう言えば俺、この世界のこと何も知りません。さっきアダムさんが少し説明してくれましたけれど、それでも、全然………」

「あぁ!それもちゃんと教えるよ。」

アダムさんにそう言われると、何もかもが大丈夫な気がする。


「よかった………」

俺はそう言って胸を押さえた。


すると、その途端だった。


頭が、脳が急に重くなって、目の前がグラグラして、吐き気がひどくなって。


そして、俺は倒れた。


バターンと、なんの予兆もなく。

 読んでくださってありがとうございます。

実は昨日ショッキングすぎる出来事があったせいで、投稿できませんでした。


もう嫌です。

はぁ。

会いたいなぁ。


 それでは次の話でお会いしましょう。

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