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第1話  遅刻しても転校生とはぶつからない。

 「ピー、ピー、ピー、ピー、」

延々となり続く時計のアラームにうんざりして、俺は仕方なく起き上がって、時計の上のボタンを力任せに叩いた。


「ガシャン。」

と無残な音を立てて机の上からデジタル時計が落ちた。


本の上に着地。


 「わっ!」

俺は本を救出するために跳ね起きた。


時計を小説から引き剥がし、ベッドの上に放り出して小説の状態をみる。


 傷は………ついてないな。

ビニールカバーをつけておいたのが良かったか。


 昨日寝落ちしてしまった俺の責任だ………

「ごめんな、『愛おしのセレナーデ』。」


本の題名を読み上げて謝ると、可動式の本棚にしまいこんだ。


 それから時計を見直す。

「やべっ!」

起きるのが遅くなったのと、小説の状態確認で時間を食ってしまい、本来の起床時間である六時三十分からは大幅にオーバーした、六時五十分になっていた。


 ハンガーラックに直でかけてあったスクールバッグをひったくるように取ると、同じく吊るしてあった制服をハンガーごとつかんで一階へ持って降りる。


 「ちょっと凪和なお、うるさいわよ。」

紺のスーツをバッチリ決めている母が、キッチンから顔を出した。


「寝坊したっ!」

「寝坊したって言ったって………もっと静かにしなさい。」

「………はいは〜い。」

俺は言って、制服を自分の椅子の上において洗面所に向かった。


 バシャバシャ音を立てて冷たい水で顔を濡らし、クレンジングクリームでしっかりと肌を包む。

そのあと水でクリームを流しきり、清潔でふわふわな綿素材のタオルで顔を拭く。


 俺は結構な敏感肌体質だから、肌に関することは人一倍気を使わなきゃならない。


 例えば、試供品でもらったクリーム。

先日路上でいただいて、手に使ってみたところ。


 数分後異常に手が痒くなり、見ると大量の蕁麻疹が出来上がっていた。


 なので、それ以来自然素材を使ったクリーム以外は使ったことがないのだ。


 リビングに戻り、制服に着替える。

今はまだ夏だからカッターシャツにネクタイをしめて紺チェックのズボンを履くだけで済むが、冬になると、俺はこの上にベージュのベストを着て、さらに上からジャケットを着込んで、さらにその上に何か着ないと寒くて耐えられず、その重ね着に結構な時間を食ってしまうのだ。


 きちんと着替えた後、鏡のようになっている冷蔵庫の前に立って、自分の服装と寝癖を確認。

先ほど顔を洗っているときに髪が濡れたので、それで髪を整える。


すぐさま、髪はサラサラストレートに戻った。


 自慢じゃないが、俺は髪質には自信がある。

母も父もとても美しい深みのある紺の髪をしていて、俺はその二つをたった一人で受け継いだのだ。


 フルフル頭を振りながら前髪を少しなでつけて、うしっと気合い入れをする。

今日も頑張るぞ!


 「ほら凪和なお、朝ごはんよ。」

母さんが手早く俺の前にスクランブルエッグとバタートーストを置く。


トーストの食パンはいつも決まっていて、近所のスーパーのパンコーナーにあるふわふわでとても美味しい食パンは、トーストにしても美味しいのである。


 「母さんは食べたの?」

俺は手を合わせてから聞いた。


「えぇ、母さんは仕事にいかなくちゃいけないんだから。それじゃ、行ってきます。」

母さんはそう言うと、家を軽く見回してから、外に出て行った。


 俺の父さんは異常にマイペース、母さんはなかなかキビキビとはっきりしているので、掛け合わされた俺はちょうど良くなったのではないのだろうか。


 「もぐもぐ。」

しばしリビングに沈黙が広がる。


でも、小さな頃からずっとなので、もう慣れっこである。


 父さんも母さんも、二人とも優秀な社会人だから、とても早くに家を出る。

母さんは俺が生まれてから少し遅くなったらしいけど。



 「ごちそうさまでしたぁ。」

俺は音を立てないように気をつけながら手を合わせて、皿を持ってそれを流しに置いた。


 手をしっかりと洗ってから学校指定のスクールバックを覗く。


「今日の授業は………」

今日の授業を一つ一つ頭に思い浮かべながら教科書の確認をし、弁当一式が入っているかどうか見る。

それから、筆箱の中に不備がないかも見る。


シャー芯がすべてのシャーペンに三本ずつ入っているか、いつも使っている消しゴムにプラス予備用の消しゴムがもう一つ入っているか、定規があるか、コンパスがあるか、コンパス用の鉛筆三本と鉛筆削りがあるか、ボールペンがあるか、蛍光ペンが赤・青・緑・黄の色があるかどうか。


蛍光ペンで色分けするとテスト前のノートの見直しに役立つのだ。


 「よし。」

すべての要注意事項をコンプリートすると、俺は水筒にお茶を入れ始めた。


氷を入れてから、冷えた緑茶をなみなみと注ぐ。


 しっかりと蓋を閉めてから、ホルダーにしまい、スクールバックの中にしまった。


そして、スマホの電池が満タンであるか、モバイルバッテリーにコードがあるか、それも確認してから、ふと時計に目をやった。


 「あぁっ!」

この世の終わりかと自分で思ってしまうほどの悲鳴をあげて、俺はスクールバックをつかんで外に飛び出した。


 スニーカーは走っている間に足をねじ込み、少し変な感じがしながらも、ギリギリに学校に滑り込むよりはマシだと考えることにした。


 いつも通りの通学路を走っているはずなのに、いつもと違う気しかしないため、心の臓がぎゅっと萎縮する。


 50メートル走を走っている時よりも何百倍ものスピードが出ていることを自覚しながら、脚力の限界値を引き出した。



 しばらく大きく腕を振って走っていると、ようやく人がいるのを発見した。

ホッとした気分を感じながらも、スピードは決して緩めない。


 走りながら腕時計に目をやると、七時半を少しすぎていた。


嫌な予感を感じながらも、ようやく学校が見えてきて、ホッと息をついた。


 歩いていた生徒たちをビュンと追い抜き、下駄箱でうちばきに履き替え、二段飛ばしで階段を駆け上がった。


途中先生に怪訝な顔をされたものの、そんなことを気にしていられる余裕は俺にはなかった。


 教室に滑り込むと、俺は拳を握った。

「よかったぁ〜。」

と小声で呟くと、自分の席に向かう。


 時計を見る。

決して、遅刻ギリギリ、という時間ではない。

しかし、俺はこの時間帯に学校に来なければならないのだ。


 今教室にいるのは真面目そうな方々ばかり。

俺はまたホッと息を吐いて、筆箱を取り出して机の上に置き、校庭の方向を見た。


 当然朝なので、そこには誰もいない。

俺は少し微笑んで、うん、と一つ頷いた。


 今日も頑張るぞ!!


 ────このクラスの陽キャの皮を被った陰キャとして!

 読んでくださってありがとうございます。


今回も懲りずに応募してみることにしました。

ストーリーを考えるのはやっぱり楽しいですね。


ちなみに、お前こんな時期に応募を初めて去年から何も学んでないなと思われるかもしれませんが、そう言う訳じゃありませんからね!?

募集要項を、ちゃ〜んと読んだ上で、こうなんですからね!?


 それに、ちゃんと、前回応募してすぐ後くらいから書き溜めてあったので、ある程度の展開まではできていますからっ!


 それでは、次の話でお会いしましょう。

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