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美人姉妹

 「なっ……なんでお前達が俺の家(ここ)に来て……居るんだよ? どうして居場所が分かった? てか何しに来たんだよ……お前達は」


 俺は"悪夢"を見た時よりも圧倒的な量の汗を全身から湧き出し、一歩……また一歩と後退る。


 立派な体躯を持ちながら女性二人を目の前に、その行動は滑稽なものだと我ながら思った。


 「あら?急な訪問でビックリしましたの? 貴方を見つける等、私の"能力(チカラ)"を持ってすれば容易いに決まってるじゃない。それともぉ~二ヶ月(・・・)振りに私達に会えて嬉しさのあまりの驚きかしらぁ? 覚えていないのかしらぁ? お忘れですかぁ? ガイゼル、貴方が言った二ヶ月前の私達との大切な大切なお約束(・・・)を――」


 不敵に口元を緩ませ彼女は言う。


 栗毛色の少し癖の掛かった髪は腰上まで伸ばし、双鬢(そうびん)を三つ編みに結い、後頭部で一つに纏めて(テール状)にしている。


 出で立ちは最早、舞踏会に行くのかと思える純白の"カクテルドレス"風の艶やかな外見(デザイン)の衣裳を身に纏う。

 それと同色の"ストール"を肩から羽織っており、そのシルエットからしても華奢な体つきが分かる程に細身な身体……。


 ただし一つだけ異彩を放つ物を彼女は身に付けていた。彼女の目元を覆う漆黒の目隠し(バイザー)だ。

 相変わらず彼女はそれ(・・)が無いとまとな生活が送れない事を俺は思い出し、少し懐かしんだ。


 「えっ……あれはまぁ……社交じ――」


 俺は苦笑いを浮かべながら言う。

 でも彼女は俺に最後までは喋らせてはくれなかった。


 「ん? 社交辞令とでも言いたそうね? まさかその場しのぎとか仰いますかぁ~? 私の知る貴方はそんな酷い嘘つきさん(・・・・・)でしたかしら? 私の知っている"ガイゼル・ウォールズ"は誠実で誰にでも慈愛の心を持ち、世話焼きのお節介さんで、どんなに強い相手でも果敢に挑む強い信念を持つ。決して折れぬ強靭な精神(こころ)。それに渋くも大人の表情(カオ)の中に時折見え隠れする純心な少年の表情。23歳。身長185センチ、体重は――」


 「ちょっとぉぉ~お姉ちゃんまた(・・)暴走してるよぉ! さっさと例の話(・・・)を言いなよぉ! じゃなきゃアタシから話そうかぁ?」


 「アヒーナ(・・・・)!ちゃんとお姉ちゃんの口から言うからっ! 言うから貴女からは駄目よ! ねっ? 分かった?分かってくれる?」


 「オイッ! プリシラ(・・・・)、俺はお前達と約束なんてした覚えは何も無いぞ! 何か……勘違いをしちゃいないか?」


 姉の名は"プリシラ"。絶世の美女と言って良い容姿だが性格(中身)がヤバ過ぎて正直、関わるとろくな事が起きない俺の中では"不幸の女神"だと思っている。


 そして容姿端麗なのだが胸が全くもって無い。

 寧ろ可哀想な位に無い……もぉこれは"板"だ。


 対する威勢の良い方は彼女の妹で名は"アヒーナ"。小柄でプリシラに似た栗毛色のショートボブが彼女の元気な、天真爛漫な性格と相まって相変わらず愛らしいと思う。


 それと姉のプリシラとは雲泥の差と言える程のたわわに実る巨乳(・・)なのだ。

 正直、ついつい目が胸に向いてしまう、男の(さが)が憎らしい……。


 まぁどちらかと言えば俺は、アヒーナの方が話易く昔から行動するなら断然、アヒーナだった。それは決して"胸"が目当てと言うわけではない。


 「あらいやですわ! ガイゼルゥ~貴方から言い出したじゃないですか? 『キミ達を是非とも俺の嫁にしたい』と確かに言ったわよ!」


 「はぁぁぁぁっ? !俺が?何時ぅ~っ!? またお前の妄想(・・)何じゃないのか??」


 俺は咄嗟に馬鹿デカイ声を上げてしまった。


 ん? 待てよ……確か……そんな様な事(・・・・・・)、言った気がしなくも無いなとふと俺は在る事(・・・)が脳裏を過り、またイヤな汗が全身から涌き出て来るのを感じ顔が引きつった。


 「あれあれあれぇ~? お兄ちゃん何か思い出したみたいだねぇ~! んふふっ……」


 アヒーナはニヤニヤしながら俺へと滲み寄って来た。


 たわわな胸が歩む度に上下に揺れる。着ているブラウスの前ボタンが今にもはち切れそうな……寧ろブラウスの中に良くも収めたと言いたい程の大きさ(・・・)……可哀想なブラウス。


 俺は見てはいけないと思うもやはり、彼女の胸に視線が移ってしまった。


 デカイ……デカ過ぎる。姉妹でもこんなにも格差が在るのかと思う程に……デカイ。


 「あれぇ~お兄ちゃんさっきからアタシの胸ばっかり見てない? ん~そうだよねぇ。二ヶ月も独りっきりだったし"禁欲"って言うのかなぁ? さぞかし辛かったよね? でもお約束を果してくれたら(コレ)はお兄ちゃんだけの(モノ)になるんだよぉ! それだけじゃぁ~無いよ! アタシ自身だって、お姉ちゃん(プリシラ)だって、私達姉妹を全部(ぜぇーんぶ)お兄ちゃんのモノ(・・)に出来るんだよっ! そんな事、凄い幸せじゃない?」


 「ちょっ……アヒーナッ! な、何て品の無い事を言うのよっ!」


 プリシラは顔を真っ赤にしながら自身の胸元を虚空を撫でる様に両手で擦る。


 その仕草に俺は哀れみの念を抱いてしまった。


 「――た、確かにそんな事(・・・・)を言った気がするかもしれない……けどぉ――」


 「ガイゼルッ! 気がするかもではなくて確かに貴方は言いましたっ! 姉妹(私達)の純情を弄んだの? ならば益々、貴方には責任を取って頂かないといけないわね!」


 声を荒げるプリシラを目の前に俺は何も言い返せないで居た。


 「お姉ちゃんそんな怒らなくてもいいじゃん! お兄ちゃんがビックリして固まっちゃったよ! まぁ硬くなるのはお兄ちゃんの専売特許(・・・・)だけどねぇ~! あっ? もしかして違うトコ(・・・・)が硬くなっちゃったかなぁ~あははははっ!」


 「むぅ……私とした事がつい……ご免なさいガイゼル。私だってこう……ムキにはなりたくは無いのです。貴方さえ頭を縦に(・・)振って頂ければそれだけで良いのよ……」


 急にしおらしくなるプリシラに俺は少し申し訳ない気持ちに苛まれた。


 「それとアヒーナッ! さっきから下品な事ばかり言わないのっ! お姉ちゃん、恥ずかしいじゃないの!」


 俺は思い出す。


 事の始まりは二ヶ月ちょっと前、"魔竜"との戦いの最中で在る事を――――。

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