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砂色

作者: 吉田夏帆史

書いていいのか分からないですが、昔自分がいた気のする世界のことを少しだけ

占いで見てもらったら、ゼータという、よくイメージされるグレイ宇宙人だったそうですw

私はそこで、できるだけ明るく?周りの人にいい影響を与えて、みたいな

なんか功績が認められて、少しずつ徳を積んで、この豊かな日本に産まれてこられた、とか言われました

荒れた大地

石だらけの、何も育たないほどの

時折吹き抜ける砂塵とにびいろの空

雨など降ったためしもない

晴れたためしもない

ここはいつでも同じで、でもいつでも同じじゃない

そんなところに、いつの間にか“私”はいた

私たちは、それでもそこにいた

いくつもある風穴を石で塞いで、手頃な石は腰掛けにする

みな、いつの間にかここにいて、またいつの間にか去っていく

何も育たない大地で、まるで魚がプランクトンを食べるように、私たちは皮膚から空気中の栄養を取り込んで生きていた

痩せきった大地と同じような、骨と皮だけの様相

身体も石のように固く、岩に寝転んでも痛くもない

ほとんどの者は、1日寝たきりのようにして過ごしている

食べる必要もなく、歩き回るほどに命は削られていく

そして命尽きれば、身体は砂へ帰っていき、空気中に漂い、生きている者たちの糧となる

そんな世界で、私は少し異端だったのかもしれない

目覚めればぼんやりしていることもあるが、良く岩山に登っていた

山とも丘ともいえないほどの、大股で3歩か5歩も歩けば登れてしまいそうなほどの山

それでも少し高いところから遠くを見るのが好きだった

遠くを見やっても、もちろん何もないけれど…

それから足元の、小石をよりすぐっては形の気に入ったものを持って帰る

私の風穴の中は、そんな石がいくつも並べられた出っ張りがあった

出かける気になれないときは、その石を手にとって、石同士で話をさせたりして

一人で会話劇のようなものを、ぼんやりとしては遊んでいた

私がそんなことをしているせいか、娯楽も何もないせいか、同じように石を集める人も幾人かいた

ただそんな人を見つけても、お互い「ああ、やってるな」と思うだけで何もない

時折、他人の風穴を除きに来る人もいたが、家主がいようといまいと、少し腰掛けて家の中を見渡して、そして去っていく

ただ他所の家が見たいだけなんだと思う

そういう人は、いいなと思う造りを見つけたら手頃な石を拾ってきて真似てみたり、尖った石を拾って少し細工をしたりなどしている

彼らは集っているのを見かけることもあるし、何かを交換しているのも見かけることもある

そういう人たちなんだな、と私はいつも外から見ていた

ここでは群れない人のほうが、多いような気がしている

砂と石と岩と、にびいろとにびいろとにびいろと…

私たちもにびいろだし、大地もにびいろ空もにびいろ

他所の世界の人がここを見たら、地獄と呼ぶかもしれない

私たちのことは餓鬼と呼ぶかもしれない

それでも私たちは、それなりにここで生きてはいた

眠って、起きて、それだけでも

そんな中でも工夫をする者たちもいた

風穴の造りを真似た彼らのような

そんな中でも皆、できる限りのことはしていた

小石を集めて遊んだりもそうだし、岩山に登って遠くをみはるかすのだってそうだった

そんなある日、いつものような岩山を歩いて、小石をよって探していると私は緑の見たことのない石を見つけた

綺麗だと思ったけど、不思議だった

こんな石、今まで見たこともない

手の中で転がすと、手の平に色が移る

試しに軽く地面を擦ってみた

緑の線が一つ、くっきりと付いて、砂塵がその色を少しさらっていった

私は思わず嬉しくなって、その宝物をいそいそと家に持ち帰った

帰って早速、壁に石で線を引く

岩山の稜線を、何となくで描いてみた

まるで夢みたいだと思った

けれど明くる日もちゃんと、その緑の石は部屋にあった

色が薄くなるたび、何度も稜線を重ねて、私の家には以前より人が訪れるようになった

入り口近くに腰掛けを据えると、皆じっとその稜線を見て、緑の石を探しに出かけた

辛抱強く探すと、意外と見つかるものらしい

同じように壁に稜線を描く人もいたが、石を見つけて尚、ここに見にくる人もいた

一人になると、こういう賑やかなのもいいなぁ、なんて宝物の石を手の平でそっと摘みあげながら思ったりもした

いつも来ていた人が来なくなることなんて、しょっちゅうで、それは少し寂しかったりもした

それでも私は嬉しくて、毎日緑の石に感謝しながら眠った

稜線を重ねる度、石はどんどん小さくなっていったが、いつまでも私の宝物だった

私は変わらず、小石を集めて遊んだりもしながら、それなりに楽しく毎日を過ごしていた

それが変わったのは、いつからだろう?

少し変だな?と思うことが多くなって、横になっていることが多くなって、外へ出歩くことが余り出来なくなった

行きたいと思う気力が、どんどん削がれていく感じだった

あぁ、そろそろだな、と思いながらも、部屋には自分で集めた気に入りの石たちがあって、稜線を見にくる人たちもいた

寝たきりのような私を、皆死んだのかと心配そうに覗き込んでは、生きていることに安堵する

そのうち、稜線を見に来ているのか、見舞いに来ているのか、よくわからなくなった

いなくなれば、砂にさらわれて、私は次はどこで目覚めるだろう?

にびいろの世界に煌めく緑色を思い浮かべながら私は目を閉じた

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