絶対魔物やっつける君MK3
やって来ました王都クーゲルシュライバー、門番をサクッと洗脳し身分証明をパス。認識阻害魔法をかけたラスラは横をふよふよ飛んでいる、いいなー魔法無しで私も飛んでみたい。そのままてくてくと都内を探索する。
「なんで普通に入らないんですか?身分証あるんじゃ」
「いや、ちょっと学校卒業した時に色々あってさ」
「はあ、街に気軽に出入りできない程のことなんでしょうね」
呆れ顔でこちらを見るラスラ、別にそんなに褒めなくても宜しくてよ?
「まずは腹ごしらえしよっか、一日空の上で疲れたしね」
「全くとんでもなかったわ、しっかりくっついてないと振り落とされるし貴方はよく分からない魔法で石みたいになってお昼寝始めちゃうし」
「だって同じ景色ばかりで暇だったんだもの、それに変な魔法なんて失礼ね。あれは昔魔法学校で居眠りがバレないように開発した身体固定化の魔法よ、この魔法には私の青春がいっぱい詰まってるんだから」
「えぇ…」
呆れた顔でこちらを見るラスラ、絶対失礼なこと考えてる。
「こっちに美味しいお魚料理を出してくれるお店があるわ、さっ行こ行こ」
「ハイハイ」
『魚料理 シュラスコ』と書かれたのれんをくぐりドアを開ける、中に入るとカウンターに懐かしい顔が
「ヒイッ!も、もうメンキイダはあるだけ食べさせたろ!許してくれぇ!」
「今回はお客さんとして来たからそんな怯えなくてもいいよ、ホラホラ値段が高い順から料理もってこーい」
「たっ直ちに!」
むっふーん、なんと贅沢な気持ち。まるで王女様だふっふっふひかえおろーう。
「外道ですね」
「なにおう、私が何か悪い事をしたと言うのかね」
「さっきの店主の態度で一目瞭然じゃないですか、どうせ前魔法で脅したりしたんでしょう」
「失敬な、ここで前メンキイダって言う珍しいお魚があるって噂を聞いたからわざわざ森から来たら売り切れって言うから自白の魔法使ったんだ」
「ひどい……」
「そしたら今日の分はほんとにないけど明日また入るからそれを食わせてやるって言ってきたから憂さ晴らしに一日お魚に変化させて水槽に放置しただけだよ」
「お気の毒に」
「で、早朝店に来たら裏に届いてたし戻してあげたんだ。魚は美味しかったしおやじは人間に戻れたしうぃんうぃんだね」
「えぇ…?」
さっきからラスラの反応がよくない、せっかく面白い話を披露してあげたのに反応がこれではちょっとさみしい。
そんなこんなでこの店の昔話をしていると料理が来た。うっひょう美味しそう!
「えーログマの姿煮とカイリヤそうめん、イダロクのお造りにニガリタワのミソスープです」
「わーい!いただきまーす!ラスラも食べなよ」
「わあ、本当に美味しそう。いただきます」
まずミソスープをひと啜り、口の中を海属性にし魚料理スイッチオン。カイリヤそうめんは白く透き通り細く細くそうめんのように切られている。東の国の食器、ハシで四、五本とりショーユにつけ口に入れるとねっとりとした甘みに噛めば噛むほど旨みが出てくる。
次にイダロクの造り、持つだけでもっちりとした弾力が分かる、ショーユにつけ食べるとこれまたカイリヤとは別の良質な脂による上品な甘み、それがゴリゴリし過ぎず、柔らかすぎず心地よい弾力と共に歯を押し返し魚本来の旨味を楽しませてくれる。
とどめはログマの兜煮、人目はないからと豪快に横から頬肉にかぶりつく、砂糖とショーユ、主張しすぎない酒による何とも癖になる濃ゆい味が口に広がる。そしてあとから来る力強いログマの味!大型魚らしい豪快かつ大胆な肉の味がおやじの確かな手によりその旨みと食べ応えのみをうまく表に出されている。ここまでの腕の料理人はそうはいまい。しっとり、ぷりっとした身に濃いめの味が素晴らしく調和しておりああ、私は海底の城にいるのだと思わせてくれるのであった。
「あっ美味しい!すっごく美味しいですよご主人!」
小級生並の感想しか捻り出せないポンコツ妖精は捨て置きおやじに言う。
「いやー美味い美味い!やっぱりおやじの腕前は世界一だよ!いきなり来たのに悪いねえ!」
「あっ、いえいえ。ムノベー様がご満足頂けて何よりですハイ」
畏まってしまっている。お世辞では無いのだからもっと腕に自信を持って欲しいものだ。しばらく料理に没頭した後一息つく、ラスラが食べた所は急に消えたように見えるだろうがちっちゃいからバレなかったようだ。今は兜煮の目玉部分をちゅーちゅー吸っている、わかる。いいよね。割とよく食べる精霊だこと。
「そういやあの怯えた顔の可愛い娘さんはどしたの?」
「へい、娘なら前聞いたんですが北の方の料理に興味があるらしくて。修行に行ってますはい」
「ほーん、帰ってきたら是非食べさせて貰おっと」
うーん楽しみが一つ増えてしまった。
「ねーおやじー。私さー旅始めることにしたんだけど、なんかお魚が美味しい街とか知らない?」
「へっへえ、魚の美味い街ですか。そうですね、ここからさらに西にキダ・タローと言う港町がありますね」
「ほほう、どんな料理があるの?」
「そうですね、ここでも食べられますがやっぱり港があるので新鮮な刺身。あとは最近発明されたとかいうコタ焼きなるものがあるらしいですよ。中にコタって言う弾力のある魚を入れて焼き上げる団子らしくて、それに特製のソースやらかけて食べるそうです」
な、なんと気になる。絶対に行かなくては、旅の目的を忘れている気がするが明日にはもう出発しよう。
「よーしそこ行ってみよっかな、おやじ、お代は気に入らないやつの社会的失脚と護身用使い捨て魔道具(試作品)どっちがいい?」
「まっ魔道具で……」
お金なんてない、だからこその旅である。家から持ってきた筒状の魔道具をカバンから出し渡す。
「はいコレ、名前はそうね、絶対魔物やっつける君MK3!かな?」
「はあ」
「使い方はこう、気に入らない奴に筒の先っぽ向けて、ここの赤い魔法陣に指をかざすの」
外に出て街ゆくガラの悪そうな男に実演、刹那。音も光もなく生きる気力を無くしたように項垂れるするチンピラ(仮)くん。
「私の超全力の鬱化魔法を込めてあるよ、耐えられる人は心が無いか生き物じゃないか強力な魔物かだね。これならMK1みたいに爆発で周囲を吹き飛ばさないしMK2みたいに永久凍土にもしないから世界に安全自分も安全!」
チンピラくんの魔法を解除しつつ説明する。
「はあ」
「じゃっ!上手く使ってね!」
「へえ、毎度あり」
目玉にまだしゃぶりついているポンコツ妖精を剥がして外へ出る。
「もう!もうちょっといいじゃないですか!」
「もう!じゃないよいつまでしゃぶってんの、勝手にコロコロ動いてるように見えちゃうからちょっとは自重しなさいよ」
「せっかく久しぶりに美味しいご飯食べられたのに」
「これからもっと色々おいしいもの食べられるから我慢しなさい、次の目的地はキダ・タローよ。明日のために宿屋でもとってもう今日は休もう」
「まだお昼ですけど…」
「睡眠魔法自分にかければぐっすりよ、さっいこいこ。どうせならこの王都一番の宿屋に行こっか」
「やったあ、やっと布やほうき以外の所で休めます」
王都の中央辺りにドンとある宿屋の部屋を借りた。得意の洗脳で一発、ふっふん人間とはなんて儚く脆い存在なのか。
お風呂に入ってふっかふかのベッドに滑り込み魔法をかける、がふと思い出した。
「そういえば結局今日一日何も儲かってないんだけど、ガッポガッポって話はどうしたのよ」
「あれ、おかしいですね。うーん……アルティメット精霊加護カウンターグラーシアスで確認したら確かに今日発動したんですけどね」
何そのカウンター…
「えー?……ねえ、確か加護って周囲に及ぼすのよね」
「ええ、まあ」
「…………さっき私があげた魔道具売ったらいくらくらいになるかしら」
「人間の通貨に詳しくないしましてや魔道具の相場なんて分かりませんけど…ただ火がちょっと出るだけで使い捨ての魔道具かが街で十万ポコで売ってましたね、確か攻撃系の魔道具は需要が更に高いともどこかで聞きました」
そうなんだ……そっかあ……………………
楽しい楽しい通貨説明タイム
十ポコ=豚の餌1日2頭分買える 木片に彫刻 形は歪だけど重さがきっかり決まってるからドサッと計りで測ると便利だ
百ポコ=庶民向けのお魚2匹買える 銅の板に刻印
千ポコ=一日のご飯外食で済ませられる 紙に製造場所がガリ版印刷されてるよ
一万ポコ=治療魔法の料金がこれくらい
十万ポコ=馬車が買えるぞ 作成場所が掘られた腕輪になる。オシャレで手軽なので成金はいくつもジャラジャラつけてるぞ
百万ポコ=すごい 専属の魔法使いの手により形状記憶合金で持ち手の好きな形に収まっているぞ。その金属事に着脱、インゴットにする長い呪文が決まっているので安心だ
※クーゲルシュライバー基準