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夢にまで見た異世界でのんびり冒険者をやりたい人生だった  作者: りるお
第2章 - 中級冒険者編 -
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第94話 - 単独行動2日目 -






昨日わたしは、お兄ちゃんに会うことは出来なかった。お兄ちゃんと言っても、わたしが勝手に呼んでるだけだけど…


昨日は早朝にセレスタンを発ったけど、王都ルートニオンに着いた時には、もう既に日は沈んでいたんだ。そんな時間に押しかけて合わせてくれと言っても詰所の衛兵に断られるのは目に見えてるからね!

セレスタンからルートニオンまでの道のりは、本当はもっと時間がかかるけど、ちょっとズルしたんだ。だから夕方にはたどり着けた。ベルゼほどの"ちーと"じゃないけどね!



昨日はそのまま宿に泊まって、1日目が終わっちゃった。なんだか1人旅も久しぶりだからちょっとワクワクするし、買い物とかもしたいけど、今回の目的はあの日からずっとモヤモヤしてる気持ちを晴らしたい。その為にベルゼに無理を言って一人でここまで来たんだから。


帰りの事も考えるとチャンスは今日だけ。

朝からしっかり頑張ろうー!







「Aランク冒険者のリエルです。宮廷魔法使い長のミハエル様に面会をしたく来ました!」


「嬢ちゃんAランクなのか!どうだい、俺と飲みに行かないか?」


「おい、勤務中だぞ」


「わーってるよ。冗談だよ、冗談。」


「ったく。…すみませんが、ミハエル様はただ今外出中でして、いつお戻りになるかも分かりません。」


「そんな…。どこに行ったかだけでも教えてもらえませんか?」


「申し訳ありません。魔法使い長様の動向をお教えする事はできません。というか我々も分からないのです。」


「そう…ですか。」


「嬢ちゃん、ミハエル様に何用なんだ?」


「あー…それはですね…」



前世の兄かもしれないんです。

なんて言える訳がない。ただ会って話をしたい。一目で良いから会いたい。本当にお兄ちゃんじゃないのか?改めて自分の目で見てこのモヤモヤした気持ちを晴らしたい。そう思ってここまできたが、何用かと聞かれたら答えようがない。



「察してやれよ。こんな可愛いお嬢さんだ。ミハエル様にだって彼女の1人や2人くらい、いるだろう。」


「そんなんじゃないですっ!!…もしミハエル様がお戻りになられたら、リエルが会いにきた。とお伝えください。わたしは明日の朝まで王都に滞在してます。宿は、南地区にある"泡沫の園"に泊まってる。とお伝えください!!」


衛兵の茶化すような冗談に少しだけ腹を立てつつ、捲し立てるように言い放つとリエルは、踵を翻してプリプリしながら去っていく。




どうしよう…出鼻を挫かれちゃったなぁ。まさか外出中、それもいつ帰って来るか分かんないなんて…

お兄ちゃんの足取りも分からない上に、お兄ちゃんの行きそうな所を知ってそうな人も多く知らないもんなぁ。

ベルゼがよく言うところの"詰み"って状態だよぅ…はは。



ため息まじりに顔を俯かせるリエルだったが、その目は諦めていなかった。



せっかく我儘を言って王都まで来たんだから、簡単には諦めないんだからね!


決意を胸にリエルはある場所へと向かうのだった。









「よおリエル。久しぶりだな」


「お久しぶりです!ウォーデン(・・・・・)さん!」


「お前、王都に居たんだな。つーかよ、いきなり来て俺様に合わせろなんて、リエルじゃなかったら断ってんぞ。…で、何用なんだ?」



彼の名は、ウォーデン。

Sランク冒険者にして、ここルートニオンのギルド長。そして全てのギルドマスターを統括をしている、ギルド総長(グランドマスター)。そしてわたしの師匠。


ちょっと前に起こったスタンピードの時に見かけたけど、忙しそうだったから話かけなかったんだ。頻繁ってわけじゃないけど、それなりに会ってるしね!



彼がグランドマスターになる前、まだAランク冒険者だった頃、短い期間だったけどわたしは彼に師事していたんだ。


その頃のわたしは転生して冒険者になったばかりで、とにかく魔物を討伐する事だけに躍起になって、きちんとした剣術も魔力の使い方も知らなかった。


たまたま彼に気に入られて、教えを乞う事ができたから今のわたしがある。本当に感謝してる。…って、その話は今はいっか。



わたしがルートニオンにあるギルド総本部に来たのは彼に会うため。というのも以前、ウォーデンさんから「今の宮廷魔法使い長とは仲が良い。」と、聞いた事があったから。宮廷魔法使い長…つまりお兄ちゃんと仲が良い。わたしが唯一王都で知っているお兄ちゃんと仲が良い人。

いきなり来て会わせてくれなんて、立場が立場だから難しいかなって思ったけど、運良く会ってくれた。



「王都には昨日着いたんです!あの…人を探してるんですけど…魔法使い長のミハエル様なんです。今朝何処かにお出かけになられたと詰所で聞いたんですが、あてが分かりそうな人はウォーデンさんしか居なくて…どうしても会いたくて無理やり王都まで来たんですけど、明日の朝には王都を発たなくてはいけなくて…」


「あ?ミハエルは……いや。アイツとは仲良くさせて貰ってるが、逐一どこに居るとかまでは分かんねーな。つーか昨日来て明日の朝に王都を出るったあ、なかなか強行スケジュールだな。」


「そうですね…パーティメンバーが昇格試験を受ける都合で、3日間だけ時間が貰えたので急いできました!」


「3日間ってお前昨日出発して昨日のうちに王都に着いたのかよ。よっぽどアイツに会いたくて来たのか…。すまんが俺に分かる事は無えが、気を落とすなよ。お前の事だ、詰所の衛兵に滞在場所とか伝えてもらうよう言ってんだろ?それなら案外ひょっこり現れるかもしれねえと思うけどな。」


「そうですかね…忙しい方がこんな冒険者にわざわざ会いに来てくれるとは…」


「会うさ。アイツ案外暇人だからな。それに立場的によっぽどの事がなければ遠くにも行けねぇしな。王都内を探し回れば見つけられる可能性もあると思うぞ」


「暇人って…笑」


「ところでなんでアイツに会いてぇんだ?」


「…内緒ですっ」


「おうおう、人に聞いといて内緒とはズルいな。…っま良いけどよ。」


「今は内緒にさせてください!わたしの中で踏ん切りがついたら言わせてもらいますね!」


「わーったよ。お、そうだ。今度はお前のパーティメンバーも連れて酒でも持ってこいよ。ずっとソロだったお前が組んだ奴等には興味があるからな。」


「…ぶっ飛ばさないでくださいよ?」


「はっはっは!気に入らなかったら分かんねーな!」


「もう!でもティアは女の子だし、ベルゼもかなり強いですからね!」


「俺様は女には手を出さねえからな。気に入らねぇ野郎だったら容赦なくぶっ飛ばすからな。はっはっは!」


「下手すると国が一つ消えそうだからやめてください…」


「そりゃ、一大事になっちまうな!…おっと、そろそろお前、アイツを探しに行かなくていいのか?王都は広いぞ?」


「そうですね!そろそろ失礼します!」


「おう。またのんびり顔出せよ。」


「はいっ!忙しいのにありがとうございました!」






心なしか先程までの不安は無くなっていた。

言葉使いは良くないけど、やっぱり師匠は師匠だなぁ。よーし!頑張って探そう!



ギルド本部を出ると、日は高く、空は晴れ渡っている。気を取り直したリエルはその日1日中、王都を走り回るのだった。






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