第9話 - 装備品 -
9話目です。
ブクマ高評価ありがとうございます…!!!
誤字脱字や稚拙な文章なのに大変恐縮です。
めっちゃやる気になれるのです。
今後ともよろしくお願いします!
「しっかしお前さんが相当腕が立つ冒険者だとは分からなかったな…」
そう語るのは昨日行った武器屋の主人。
「いやー正直自分でもここまでとは思ってなかったんですけどねえ」
これは本心だ。まさかあんな事になるとは全く思ってなかったのだ。
昨日、例のオークが一人の新人冒険者の魔法によって討伐され、それどころかその住処だった "西の森" のそのほぼ全てを消失させたという噂が街を駆け抜けた。
当然武器屋の主人である彼にも情報が入ってきているのだ。
「そうなるとオーク討伐でかなりの報酬が手に入ったから、装備を整えに来たという事か」
「そうですね。一晩考えたんですけど、ここまで騒ぎになっちゃったので、装備を整えて少し旅に出ようかと思うんです」
「おいおい!そりゃ本当か!ここの領主様はこんな高レベルな魔法使いを放っておく程無能だったか!!?」
「あーー 領主様とかギルド長とかとお会いして、この街にい続けてくれ!とか、好待遇を提示されて俺に仕えてくれ!とか言われましたねえ…」
「まさか断ったのか…?」
「断りましたよー 全部。」
「正気かお前? 一生遊んで暮らせるのになんで断っちまったんだよ!」
「そこは本気か?と聞いて欲しいですね。いやー 遊んで暮らせるのは魅力的だとは思うんですけど……まず俺は誰かに仕えたくないですね。特に貴族とかみたいなお偉いさんに。堅っ苦しいの嫌いなんで」
「まあそれは分からなくもないが…」
「次にこの街にい続けたら、いざという時絶対俺頼りになる可能性が高いじゃないですか。俺は縛られたり、命令されて誰かの為に戦うとか、したくないんですよ。自由気ままにのんびりと暮らしたいんですよ」
「まあ…それも分からなくもないが…」
「最後に噂で持ちきりのこの街に居辛いですね。憧れとかは嫌ではないですけど、変に恐怖されたり危険視されるのは嫌ですね。既にそういう目で見られてる節もありますからね」
「まあ……お前さんから魔法を取ったら危険のきの字もなさそうだが…」
「そりゃあ悪意を持たれて俺の不利益になる事をするやつには遠慮はしませんけど、すれ違う人に魔法を使う事はしませんよ。それでも…って事ですよ」
「ふーむ…」
主人はベルゼの言い分に完全に論破されてしまって何も言い返せなくなってしまった。
それどころかこの純粋そうな少年を不憫に思ってしまった。
実際この店の常連の中にも素性も知らないのに「アイツは危険だ」と言って煽るような奴もいた。昨日の今日でだ。
「というわけで少し旅に出ようと思います。この街自体は嫌いじゃないですし、噂もそのうち下火になるかもしれませんし、またそのうち帰って来ようかと思ってはいます」
「そうか…」
「なのでローブと杖が欲しいです!」
「……………ちょっと待っててくれ」
そう言い残して主人は店の奥に行ってしまった。
しばらくして戻ってきた主人の手には、黒を基調とした所々に赤の紋様が施されたローブと、指輪を持ってきた。
「このローブはウチの秘蔵…というか死蔵の品だ。先代…まあ俺の親父がな、王都で店を構えていた頃にある冒険者からの依頼で作ったものなんだが、作ったものの訳あってその冒険者は受け取る事が出来なくなってしまって、ウチの手元に残ってしまったんだ。このローブの製作費が馬鹿にならなくてな、家賃や物価の高い王都からこの辺境じみた所に移店せざるを得なくなってしまったんだが…。親父は固有スキルを使ってのし上がった、国指折りの製作者でな。それにこのローブの素材は最高級品だ。」
矢継ぎ早に説明しだした店主。その顔は今までとは違い、真剣そのものだ。
「昔々に討伐された"暗黒闇帝龍"の素材をふんだんに使い、赤の紋様は"灼炎暴深龍"の血と素材で施されたものだ。この世に2つと無い親父の最高傑作だ。親父が昔亡くなってからは俺の物になってるんだが。…………どうかこれを持って行って欲しい」
「いやいやいやいやいや!!!! 流石にそんな大それたもの買えませんよ!!!!!!!」
「いや、これを買える人間は今のこの世に存在するか分からないからな。だがな、そんな装備品でも装備しなきゃ箪笥の肥やしにしかならない。着てからこその装備品だ。それならば俺の見込んだお前に着て欲しいんだ!」
主人は普段とは違う、決意した顔でそう言う。
だが流石にそんな大それた物を、あざーすと貰い受けるのは忍び無さすぎる。冗談抜きで。
「お前は今後成長してこの国、いやこの世で最もなのある魔法使いになるような気がするんだ。勘だがな。そんな魔法使いが初めて装備を整えた店として有名になったウチが繁盛する。お互いに損は無えと思うんだ」
たしかにwin-winではある。
前世で他人に期待された事など1度も無かった俺は、今世で初めて他人に期待されて、そのうえ後押しをして貰っている。
もはや受け取らない方が失礼なのでは…とも思えてきた。
「そんなに貰い辛いなら、旅の道中で気が向いたらで良いからウチの店を紹介してくれや。お代はそれで十分だ!」
この最後のひと押しで根負けしてしまった俺は、俺には勿体無い程のローブを受け取る事にしてしまった。
主人によると、このローブは光魔法以外の魔法ダメージをカットするとのこと。それに耐寒耐熱仕様、ローブに対するダメージ修復が付与されている。すぎょい。
「それとこの指輪は買って欲しいんだが…」
「何の指輪なんですか?」
「この指輪は"回復の指輪"と言ってな。ダンジョンでたまに出てくるんだが、使用者の体力と魔力を大幅に回復してくれる代物なんだ。これは俺が仕入れて店で売ってるんだが、金貨50枚で良ければ買って行って欲しい」
(体力魔力回復の指輪はありがたいな)
「分かりました、そちらは買わせてもらいます」
西の森を吹き飛ばしてしまったのだが、そこに住んでいる魔物も一緒に吹き飛ばした結果、その跡地には約500もの魔石がドロップしていた。
その残念ながら討伐証明品がないので、冒険者ランクに影響はなかったものの大量の魔石を売り、かなりの旅費になってしまった。当初はその日の飯代を稼ぐつもりだったのに…
余談ではあるが、その西の森跡地一帯は魔法のせいで地面が抉り取られ深く陥没していたのだが、ある時からそこに水が溜まり、何故か枯れる事のない湖ができ、賢者の湖と呼ばれるようになったのもまた別の話である。
指輪を嵌め、ローブを羽織り、主人にお礼を言ってから店を後にする。
ちなみに杖は、「お前みたいな魔法使いには不要だと思うが、それでも欲しいなら王都の杖屋を頼ると良い。この店より品揃えが良いからな」と言われた。主人の父親の1番弟子がやってる店で、腕に関してはお墨付きだそうだ。王都に行く際には寄って行こう。
ご覧頂きありがとうございました。
明日も投稿もよろしくお願いします。
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