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夢にまで見た異世界でのんびり冒険者をやりたい人生だった  作者: りるお
第2章 - 中級冒険者編 -
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第89話 - 討伐依頼1-






「はあああ!」


解放された魔力が体外、そして大気中に溢れ出す。


「うーん?確かに魔力がちょろっと増えた気もしないでもないけど、ステータスが上がってるからそういう事なのかな?」


普段、魔力の放出を抑えている。

最初は意識していないと漏れ出していたのだが、続けているうちに無意識で抑える事ができるようになっていた。

 逆に普段抑えているから、たまに解放した時に魔力が増えたように感じたのは錯覚だったのだろうと納得し歩き出す。


「そしたら、そろそろ探しに行くか。」


 今いるのはセレスタンの門を出て、しばらく歩いたところにある開けた草原だ。

 今日のターゲットはこの道を進んだ先にある岩地に出没しているそうだ。


 探知魔法を頼りに岩地を歩き進めてきたが、この先はひらけている。岩陰から様子を伺うと、今回のターゲットが上空を旋回している。


「ふむ…アレがそうなのか。初めて見たな。」



 鷲の頭と翼。下半身は()。体長おおよそ1.5m。今回のターゲット、Bランクの魔物ヒポグリフだ。突如この岩地に出没するようになり、通行する人間や馬車を襲っているとの事だ。


 前世のファンタジーに度々登場したのは、鷲の上半身に獅子(・・)の下半身を持つグリフォン。ヒポグリフはそのグリフォンと馬の間に生まれるらしい。今回のターゲット、ヒポグリフはざっくり言うとグリフォンの下位互換ある。ちなみにグリフォンは、魔族が騎乗すると言われ、魔族と親密な魔物である。強さもかなり上がり、ランクはAになる。

 ヒポグリフも下位互換とはいえ、Bランクの魔物。油断は禁物。そのために色々調べてきたからな。


 まず、ヒポグリフは魔力の探知に長けている。今は魔力を抑えているから良いが、遠距離からの魔法攻撃は察知され、回避される可能性が高い。

 次に攻撃。炎属性と風属性を得意とする。口から吐く炎と、翼を利用した風の合わせ技は、森を焼き尽くす事もあるそうだ。

 最後に弱点だが…特筆する点は無い。となると近距離での魔法、もしくは物理攻撃でぶん殴る。だな!


 という事で、転移で目の前に飛びそのまま攻撃する。というのが最強だろうが、今回は研究を兼ねて戦ってみようと思う。



 ベルゼは破源の瞳を発動。この段階でヒポグリフが反応する。


「この距離で反応するか。」


 ベルゼとヒポグリフの距離は、おおよそ15mはあるだろうか。破源の瞳を発動する際の微量な魔力に反応したのだ。



「グワァアアアア!」



 ヒポグリフがBランクなのは、グリフォンよりも温厚だと言われているからだ。だが、明らかに今のは威嚇だろう。いや、なんとなくだけど。


「討伐依頼なんでね。」


 そう呟くとベルゼは黒刀を抜き、岩陰から飛び出し、身体強化した脚で走り出した。


 ヒポグリフは空中からベルゼに向けて炎を吐き出す。


「全然温厚じゃないでしょ!即攻撃してきたけど!誰だよ生態図鑑作ったの!」


 ヒポグリフの討伐という事で、出発前に図鑑で調べてきたのだが……名も知らない図鑑の作者に小言を言いたくなる。


「だけどな。炎精霊の加護を受けた俺に、炎は効かないんだよ!」


 ダメージが入らないとはいえ、迫りくる炎にただ突っ込んでいくのは絵面的に嫌なものがある。ベルゼは反射的に身体を逸らして多少回避する。加護が無ければ火炎放射の余波でさえ、丸こげになりそうな絵面なのだ。


 ベルゼは魔力を解放し、イメージする魔法を、握っている黒刀に纏わせる。

 黒い刀身は稲光を発し、触れただけで感電させられるだろう。


「よし、とりあえず上手く行って良かった。」


 イメージするのは雷を武器に纏わせる。雷纏いの黒刀に無事なった事に安堵する。

 そんな事を言ってる内に、ヒポグリフは次の攻撃態勢に入っている。


「グワァアア!」


 両翼を羽ばたかせながら強風を作り出し、それに炎を混ぜ合わせる。


 風のダメージは無効化できないから、これはちゃんと避けるか。と思い、迫りくる風炎を転移で避ける。


「こんにち、はっ!」


 転移直後、挨拶代わりに雷を纏った黒刀を振るう。が、魔力察知力が凄いのか流石の反応速度で、わりかし全力で振るった刀の手応えが想定より軽い。流石はBランクの魔物。


「グルウッ!!!」


 だがその鳴き声からは、翼から胴体にかけて斬り下ろした傷は浅くは無さそうだ。


「やるな!」


「グルルルルル!」


 お前もな。と言われた気がしないでもないが、ベルゼは次の行動に移る。黒刀に纏った雷を解除し、距離を取る。


「反応速度は大体分かったけど、広範囲の魔法はどのくらい反応できるのかな!」


 魔法陣が展開し、ベルゼの左手から魔法が放たれる。


暴走する稲光ライトニングストライク!」



 魔法陣から放たれた稲妻が縦横無尽に岩地一帯を駆け巡り、攻撃対象を限定しない広範囲魔法が、大小様々な岩々を破壊し、その閃光は止まる事が無いままにヒポグリフを襲う。



「……やったか?」



わざとである。

わざわざフラグを立てたが、ヒポグリフは絶命に至らずも致命傷を受けてぐったりしている。


「グルルウ……」


「広範囲は避けようがないもんな。色々データが取れたよ。ありがとう。」


 せめて一瞬で。痛みをこれ以上感じないように。

 握った黒刀に力を込め首を斬り落とす。



「ふう。とりあえず無事依頼完了だな。」


 ヒポグリフの亡骸を収納するために、歩み寄ろうとしたベルゼだったが、突如として感じた強大な反応に、ぞわりとしながらも迷わず転移する。



その数瞬後、ベルゼのいた所に"何か"が降ってきた。相当な勢いで降ってきたと思われる"何か"は土埃の中から咆哮をあげる。



「グルアアアアアアアアア!!!!!」



 空気がビリビリする。躊躇わず転移して良かったな。

 元いた位置から20mほど転移で移動したベルゼはまず、ソレの強大な魔力を感じた。





「まさかグリフォンが出てくるとは…な。」



土埃が晴れて姿を現したのは、鷲の上半身に獅子の下半身を持つAランクの魔物だった。




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