第86話 - ボッチ -
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「はあ…」
「ふーん。Bランクの試験てそんな事するんだな。」
「わたしの時は、亜竜の討伐だったなー!」
「げ…」
「亜竜の討伐に比べたらよっぽど楽そうだな。」
この世界で呼ばれる亜竜とは、竜から派生したと言われる魔物。そのため大体強い。というのはざっくりしているが、これ以外になんと言えば良いか分からない。
その昔、ある1頭の竜と1人の人間が種族を超えて恋に落ちたそうだ。
彼らは短い時を共に過ごし愛を育む。
自分が先に逝く事を分かっていた人間は、自分の死後、どうか寂しくならないようにと子を成した。竜の寿命は1000年とも10000年とも言われている。
直系の子孫達は竜人族と呼ばる亜人の種族である。
それとは別に人間の死後、竜は魔物とも子を成す事になるのだが、現在ではそれらを魔物と、亜竜と呼ぶ。
例えて言うならば、ワイバーンや、リザードマン、エルダードラゴンなどがそうだろう。
もちろん、魔物の大半は魔王が生み出しているとされているが、中にはそう言った魔物も存在する。
しかしながら、亜竜も行動原理や組織図は他の魔物と同じである。
つまり、人間の血が入っているのを竜人族、魔物の血が入っているのを亜竜と呼ぶそうだ。
転生して、この世界の事を知ろうと色々な本を読み漁っていた時に読んだ、子供に読み聞かせるような絵本に書いてあったのだが…真相は学者にも分からないらしい。
「はぁ。なんで私の試験が不死系の魔物討伐なんだろう。リエルだったら一瞬なのに。むしろこの剣なら亜竜の方がよかった」
「不死系は光属性にめっぽう弱いからね!」
そう言いながらもリエルは、ティアの剣"エターナルイデア"に光の魔力を込めてあげている。
「ん。ありがとう」
ティアの受ける試験についても話を聞いた。
数年前に山間の村が人口減少で滅んだ。暫く経った最近になって、何処からか湧いて出たアンデットやレイスが棲み憑いて、街道や山中を彷徨いているらしい。街道を通る者や、少し離れているが近くの街にも被害が出てきた為、今回のBランク昇格試験となったのだ。
この世界での常識では、不死系の魔物は、基本的に強くない。むしろ弱いとされている。
というのも、攻撃手段が限られているのと、光属性への耐久がかなり低い。まるで俺の"特殊"のようだ。多分魔物にもそういうのがあるのかもしれないな。もちろん例外的に強い、高ランク魔物も存在する。それが魔物でありながら知性が高い、不死王や吸血鬼の上位種だ。
幸い今回の試験は特にランクの高い不死系がいる訳でもない。だが、村に棲みついた魔物というくらいで、数がかなり多いそうだ。
ギルド側も試験なんかで貴重な高ランク冒険者候補を失う事は望んでいない。
予め更に高ランクの、しかも光属性を得意とする冒険者を斥候として下見させているそうだ。尚、万が一の事を考え、試験当日もギルド職員や斥候に出た冒険者が同伴するそうだ。
なんというか…学校の野外実習みたいな感じだな。
「ティアが試験を受けてる3日間、俺達はどうしようか?」
そう、今回の試験は3日間で行うらしい。
久しぶりにリエルと2人きりである。
「その事なんだけど…ちょっとわたしも調べたい事があるっていうか…3日間、王都に行ってきても良いかな…?」
おっと、早々にボッチ確定じゃないですか?
「良いけど…調べたい事って?」
「お兄さんでしょ?」
「ああ…なるほど。」
「うん…やっぱりどうしても気になっちゃってね。ティアが試験を受けてる間だけで良いんだけど…」
「そういう事なら俺の事は気にしないで行っておいで。」
「ぼっち(ボソ)」
「聞こえてるぞ。」
「ひい!ぼっちが怒る」
笑いながらリエルの背中に隠れるティア。
本当に悩んでたんだろうな。
最初は独特な子だなと思ってたけど、亜人であることを隠しながら接して、打ち解けて、たくさん悩んできたんだろうな。
さっきも思ったけど、今はまるで憑物が落ちたみたいな表情だな。
人間だろうが亜人だろうが、これからも大事なパーティメンバーなんだ。烏滸がましいとは思うけど、ティアを、もちろんリエルを守りたい。
前世では何の為に生きているのか分からなかったけど、この2人が俺の今世の生きる目的なのかもしれないな。
リエルの後ろに隠れてるティアの頭に手を置きながらそんな事を考えた。
「ぼっちを謳歌してるから、早くBランクになって帰ってきな。」
「んっ!」
「ベルゼはどうするの?」
「そうだなぁ…ティアに負けないよう依頼をこなしてようかな。」
「ベルゼもAランクに向けて討伐の規定数に近づけた方が良いもんね!」
「うん、そうするよ。」
「じゃあ3日後にここに集合ね!」
各々頷き合い、自分のやるべき事に向けて準備する冥府の使者だった。
♢ ♢ ♢
「フォルカス様とリノラス様は、例の森によって大幅に進路を変更致しましたが、その後は順調に歩を進めています。このままいけば数週間で西方都市の攻略に着手出来るかと。」
「分かった。ありがとう。ル…プルフラス様の寛大な御心によって再びチャンスを頂けたのだからね。」
「下位とはいえ、まさかアルスローに差し向けた竜が討伐されるとは思ってませんでしたからね…」
「そうだね。過ぎた事を悔やんでも仕方ない。これからの事を考えよう。」
「あのお二方なら安心できますかね。」
「そうだね。僕がこちら側に来た時から、彼らの実力は目を見張るものがあったからね。」
「仰る通りです。今や魔王となったプルフラス様に、あのお二方は兼ねてより、魔族を平定する助力をしてきましたからね。」
「うん。王都の方でも動いてるみたいだし、西方もあの2人に任せて、僕らは僕らに出来ることをやろう。」
「ええ、そうですね。パディン様はどうなさるのですか?」
「おいおい、こっちにいる時はその名前で呼ばないでくれよ。」
「おっと、そうでしたね。失礼いたしました。バイロニー男爵様」
「そうだよ、せっかく高位変身魔法まで使ってるんだから。名前でバレたら阿呆みたいだろ?」
「そうですね。以後気をつけます。」
「もー。いいよ、そんなに畏まらなくても。僕は貴族共に会ってくるよ。」
「以前言ってた、自分がのし上がるだけしか考えていない無能貴族ですか?」
「そうそう。僕の役割は外側から壊す為の作戦指揮と、能無しのゴミ共を内側から壊す事だからね。」
「大役ですね。」
「まあでも、僕の変身魔法はSランク冒険者でも見抜けないからね。簡単だよ。じゃあ僕は出るからあとは頼んだよ。」
「はい。では私はこれで。」
静かに閉まったドアを見届けると、部屋の外には聞こえない声で呟く。
「ふぅ。ようやくルキフェル様の悲願へのスタートラインに立ったかな。待ってろよ人間ども。」
青年は窓の外を見つめる。
その瞳にはうちに秘めたるり憎悪が燃え盛っていた。




