第84話 - 魔力の対となるもの -
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「すごい…!本当にシーサーペントを討伐したんですね!!」
一向は当初の目的であった、シーサーペントの討伐を終え、ギルドへと報告に来ていた。
ティアの告白により完全に忘れていたが、ティアもリエルもやっと落ち着きを取り戻し、今後の話を終えた後、ふと首を斬り落とされ、海辺に転がっているシーサーペントを見て、海に来ていた目的を思い出したのだ。哀れなシーサーペントさん…
「普段シーサーペントは、海の中からあまり出てこない魔物です。漁船の被害も海の中からの攻撃が多く手を拱いていたんですが…しかも首だけにしか斬り傷がなく非常に状態が良いです!一体どうやって倒したのですか…?」
「海ごと斬っ」
「たまたま水面から出てきてたので、ズバッと行きました!」
「なるほど!高ランク冒険者さんは運も味方にできるんですね…!すごい!」
苦笑いのベルゼ。
「(ベルゼ!海ごと斬ったなんて絶対信じてもらえないよ!)」
「(まあ…そうだよな)」
ここは大人しくリエルの発言に乗っておいた方が面倒な事にならなくて済みそうだな。。
海ごとシーサーペントを斬ったなんて言ったら、この受付嬢から話が広まる可能性もあるしな。
初手は俺だったけど、仕留めたのはティアだし。
そう、ベルゼは平穏に暮らしたいのだ。
シーサーペントどころか、海を斬る冒険者なんてそうそういないのだ。
「おかげさまで、漁師の方々は再び漁に出れてるそうです!ありがとうございました!」
「それは良かった!」
なにせ魚介類は内陸部ではあまり食べれない程度には貴重なのだ。
肉は嫌いではないが、魚介も食べたい。
海が平穏になり、たくさん魚介類が食べれるのはありがたいな。と、本心は食にとらわれているベルゼだった。
「本依頼クリアにより、ティアさんは規定数到達となりましたので、Bランクへのランクアップに挑戦できます。いかがされますか?」
「っ…!受ける!」
「分かりました。では討伐報酬をお受け取りの後、ギルド2階に来てください!」
「やったなティア!」
「うん!」
「とは言ってもBランクからは試験が必要なのか。」
「あ、そっか。ベルゼは飛び級だもんね!」
「…飛び級っていうのか。なんやかんやで試験を受けずにここまで来てるんだよね」
「ずるい」
「ずるいって言われてもなあ。。ところで試験は何をするんだ?」
「Bランクからは、高ランク冒険者として振る舞わなきゃいけないから、試験は一般常識の筆記試験と、実技試験だったかな?実技は何日か、かかる試験だった気がするけど。」
「ま、詳しい話は宿に帰ってきてからだな。」
「分かった!2人は先に帰ってて!」
隠し事を告白したティアは、憑物が落ちたように明るくなった。もちろん以前に比べたら。の話ではあるのだが。
シーサーペントの報酬を受け取り、ティアとはその場で別れた。
宿へと向かう道中、先ほどまでのティアの事が頭をよぎっていた。
♢ 海辺にて
「というわけだ。さっきも言ったが俺たちは何も気にしない。それでもパーティに居たくないなら出ていけば良いよ。それは残念だけど。」
「…いる」
ティアの頭に生えた耳は、現在リエルのよだれでべちゃべちゃになっている。
「よし。なら良い。」
「でほ、ほんぼはほうふるの?」
「リエル、耳を食べながら喋らないの。」
いつもの逆では?
と思いながらも耳は食べ物じゃないし、甘噛み程度だろうからそれは言わないでいた。
「今後も変身魔法で耳を隠して冒険者として頑張るつもり」
「まあそれが波風立たなくて無難なんだろうけど…」
「いいの。慣れてるし」
まあ、ティアが良いならいいか…?
「ねえねえ、ところでベルゼが見た魔力みたいなやつって、氣のことだったの?」
一通り猫耳を堪能して、満足げなリエルの口からは聞き慣れない単語が飛び出て来た。
「そう。氣。私の両親…お父さんは獣人なんだけど、獣人は魔力を持っていないの。だから魔法は使えない。でも魔力の代わり…と言って良いのか分からないけど、獣人は氣を持っている。多分ベルゼが見たのは氣の流れだと思う」
「氣…かぁ。初めて聞いた。」
「獣人の持つ氣は、人間の魔力と同じで体内を循環してるみたいね。魔力とは似て異なるから、魔法は使えないけど、身体能力を格段に上げれるらしいよ!」
「なるほどなぁ。どおりでティアの技は早すぎると思ったんだよね。」
人間は魔法によって身体強化ができる。
だが、獣人の氣は身体強化魔法より格段に身体強化ができるらしい。
「私の身体強化はまだまだ。もっと上がたくさんいるよ」
「げ、まじか…」
ティアの速度でほぼ限界なのに、これ以上早いやつなんているのか。できれば戦うことがないと…いいな…
「この際だから色々と話すね」
それからティアは自身の過去をぽつりぽつりと語り始める。
2人はしばらくの間、黙ってその話に耳を傾けるのだった。
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