第72話 - 1分間 -
少し長くなってしまったので分けたのですが、72話は短めになってしまいました。
残りは手直しと書き足しをして今週中に73話として投稿します。
「って感じになったからそろそろ合図が来ると思う!合図が来たらリエルは魔物の動きを止めて!」
「りょーかいっ!」
ベルゼはギルド職員と話し終えるとすぐに前線にいるリエルの元へと戻ってきた。
「そーいえばティアは?」
「さっきチラッと見かけたけど手を入れて貰った剣を楽しそうに振っていたよ!」
ティアの手には、ティアの師匠が使っていた
" エターナルイデア"が握られている。
どういう訳か、ティアの師匠の手から例のクソ勇者に渡っていたようだが、ベルゼと対峙した時に剣を折られて負けたクソ勇者が捨てて行ったのだ。
彼は知らなかったようだが、折れていようが、歯がこぼれていようが魔力を付与すると復元するという、その名の通りの剣だったのだ。
もともと剣を使わなかったベルゼは、一応回収はしていたものの、"収納"の肥やしとなっていた為、ティアに譲った形だ。
そしてその"エターナルイデア"だが、名匠ファイストの手によって強度と切れ味が強化されたそうだ。
強化してもらってから初めてのまともな戦闘という事で、ティアは張り切っていたようだが、これは遊びではないのだ。怪我でもしなければ良いが…
「そういえばリエルの剣はどう?」
「わたしの剣ね!すごく良いよ!」
リエルも剣を強化して貰ったのだが、ファイストの手によってまさかの風属性が付与された魔剣へと成っていた。
属性が付与された魔剣は、使用者の属性や魔力残量に関わらず、その属性攻撃ができるのだ。
そういう魔剣は数が限りなく少ないのだが、テンションが上がってしまった為付与できるファイストは本当に凄いのでは…と思ったものだ。
リエルは軽快に風の斬撃を繰り出して魔物をなぎ倒している。さて俺はというと…
ファイストによって俺の杖も強化してもらったのだが、珍しい石と融合した結果、形状が剣か杖なら自由に変化できる新しい物へとなっていた。
現在の形状は剣…というより刀だ。
そもそも形状がベルゼのイメージで変えられる時点で意味不明なのだが、魔法発動の際はどの形状でも杖の効果が得られる。
それと、杖か刀のどちらかにしか形状が変化させられないのも不思議である。
ファイストさんまじぱねぇっす。
こんなヤバイもんばっか量産できるなら王都の中心に店を構えれば良いのに…
この刀はファイストによって名付けが行われたのだが… "黒刀・楳朱"ときた。
これにはファイストが元日本人かと思うセンスに驚愕したベルゼだった。
確かに見た目は黒の刀、所々に朱色に彩られてはいるが…にしてもだ。解せぬ。
だがそんな事は重要ではない。…のだ。
強化された元・杖は、魔法発動が強化され、近接では業物のような切れ味を誇っていて、魔物の群れをなぎ倒している。
だが、それでも終わりが一向に見えない。
数が多すぎるのだ。
すると突然迫撃砲のような閃光が空に打ち上げられた。
「冒険者諸君!!これから再び広範囲魔法が放たれる!戦っている者も負傷者している者も一刻も早く退くのだ!退く間は魔物の動きを止める魔法を使う!!その場に残れば広範囲魔法に巻き込まれる!即時撤退するのだ!これより60秒後、次に閃光が上がった時が発射の合図だ!それまでに必ず退くのだ!!!」
魔法で広範囲に届くよう拡散された声は先程、打ち合わせたギルドの職員だ。
上手いこと冒険者達にもその声は届いているようだ。
「リエル!」
「まかせてっ! 硬結の真価」
リエルから放たれた無数の光が一面の魔物の群勢へと突き刺さる。
ダメージが入っているようには見えないが、魔物は動けなくなっているように見える。
「魔物が止まってる!」
「おい!魔物が止まってる今のうちに退くぞ!」
「サラさんがまた極大魔法を放つのか!?」
「おいおい!さっきのやつみたいなのが来たら一溜りもないぞ!」
「グズグスするな!後衛まで戻るぞ!」
「負傷者は手を貸すぞ!」
「急いで退けー!!」
冒険者は、魔物の動きが止まったのを見るやサラが再び極大魔法を放つと思ったのか一目散に撤退していく。魔力探知でも人間は退いたのが確認できた。
「しかし魔物が止まってるって凄いなあ…」
「じゃあわたしも退くね!無理は絶対しないでよね!」
「ああ、分かってるよ!」
そう言いながらリエルはティアを見つけ、後ろの自陣まで走っていく。その姿を見送りベルゼは再び魔物の方を振り返る。
おおよそ3000くらいだろうか。
それだけの数の魔物がピクリともせず立ち尽くしている。
リエルは1分だけって言ってから、そろそろ俺も準備しようか。
「クロいる?」
『ここにいるぞ』
「良かった、あのさ申し訳ないんだけど俺が魔物の相手をしてる間、サラの動向をちょっと気にしといて貰えるかな?」
『構わぬがどうしたのだ?』
「いやーなんかあの眼で見られてる時に嫌な感じ?というか、変な感じがしてさ。」
『…分かった。では行ってくるぞ』
「あ、待って待って。クロも分かると思うけどサラはかなり強い…というか俺が出会った中で1番強い人間だと思うんだ。監視じゃなくて、気にしててくれればいいから。だから無理だけはしないでね。自分の命を最優先。これは命令ね。」
『ふむ、主の命令とあらば守らねばならぬな』
「じゃあよろしくね。」
『うむ、何かあれば影伝いですぐに来る故、呼ぶのだぞ』
そう言い残しクロは影へと消えていった。
ベルゼは抑えていた魔力を解放、混織霊気を発動するのだった。
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