第71話 - 普通じゃない -
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。。
来週からは出来るだけ頑張って投稿致します…
「ふーん、サラはそう言ってたの。」
「ああ…」
ベルゼ達はサラと別れてキャンプに戻り、物思いにふけているリエルと話をした。
「私もね今はもうそんなに怒ってないんだけどさ。。」
「え、さっきの感じだとまだ怒ってるのかと思った。」
「うーん、怒ってはないけど、サラがしてた研究は許してないって感じかなぁ。ベルゼなら分かるでしょ?」
「…うん、それについては全面的にリエルに同意だね。」
「だよね。でも、ある時気がついたんだ。普通じゃないのが、わたしの方なんだって。」
「え?」
「わたし達は転生者でしょ?普通の人は生を受けて成長して、いつか亡くなる。わたし達は前世の記憶を持って今を生きてる。前世で死んじゃう直前、死ぬって分かってすっごく怖かった。もっと生きたいと思った。普通はそうなんだって思い出したの。」
「まあ言ってる事は分かるけど…」
「長生きしたいと思う人の方が多いと思うの。サラも、魔法の深淵がいつまで経っても見えない。私の知識は浅はかだ。もっと長生きして研究するのだ。なんて言うんだよ。この世界で1番かもしれない魔法使いなのに。」
「研究熱心な事で…」
「そう考えた時に、不老不死の研究も必然だなって思ったの。同時に研究していた人体蘇生もそう。亡くなった人がもし生き返るなら、私も会いたい人だっているもん。それはわたしだけじゃなくてみんなそうだと思うし、悪い事じゃないと思うの。サラは凄い研究をしてたと思うよ。」
「でも亡くなった人を実験に使うのは…」
「わたしもそう思う。だから言い合いになったんだけどね!とにかく今はその研究も中止になったみたいだし、いつまでもぐちぐち言いたくないからね!」
少し笑顔になったリエルはどこか寂しそうでもあり、吹っ切れたような顔をしていた。
この笑顔をいつまでも守りたい。そう思ったベルゼだった。
「昔はいたみたいだけど、今は転生者って殆どいないらしいから、わたしはベルゼに会えて本当に良かったと思うの!ありがとねっ!」
ああ、天使よ…
スタンピードなんて忘れそうになるよ全く。
リエルは前世で亡くなって、再びこの世界に転生してから自身が転生者というのを隠してきたと以前聞いた。理由は今世は魔物を根絶する為に生きると決めたのに、転生者として持て囃されるのは嫌だったからと言っていた。リエルらしいと言えばらしいな。
でも普通の人に言えない苦しみや悲しみもあっただろうに…
「俺もリエルに会えてよかったよ。これからもよろしくね。」
言いたい事は分かってくれるかな。
分からなくても今は言葉と包容を受け取って貰えればそれで良いか。
♢
「偵察隊からの情報によるとスタンピードの先頭が間もなく視認できる模様!作戦は先ほども説明したが、サラさんが極大魔法を使った後、残りを他の冒険者で一掃!以上!各自、持ち場から離れずに待機!」
日が傾き始めた頃、偵察隊より魔物の群れが現地点に近づいていると情報が入った。
ここまで到着した冒険者の数は聞いていたよりも少ない。おそらく200人は下回っているだろう。
ミオドアルのギルドで聞いた6000の魔物を相手にするのは心許ない数だが、S級冒険者のサラが極大魔法を使うと言っていたし、いざとなれば俺もアルスローの街で使ったような極大魔法を使用するつもりだ。
だが、サラの前で異混魔法を使うのは、どうも憚れるんだよなぁ。
なんかあの目が怖い…?なんか見透かされてる感じがして嫌なんだよなあ。
…ま、とりあえずやれるだけやってみるか!
「先頭が見えたぞー!!!」
雲かと思う土埃、地震かと思う大群の行進、さらには地面が見えなくなる程の魔物の数。
「すげえ…」
誰かが呟く。
固唾を飲む音も聞こえる。
6000だった群勢は現地点に到達するまでに、その数を上回っているだろう。
おそらく1万くらいはいるんじゃないだろうか…
「ではいくぞ!」
ギルド職員に向かってそう言ったサラが一人、前に出る。
聞き覚えのない、聞いても俺には発音が出来ない呪文を淡々と述べていくサラ。その姿は凛として見惚れてしまう者も多いだろう。
時間にして15秒程。高まった膨大な魔力が収束するのが分かる。
「(来るっ)」
「では悪いが私の研究成果の糧となってもらおう。"忘却の鎮魂歌"」
呪文を唱え終えた後に一言そう呟く。
収束していた魔力が極大魔法となって形成されていく。
展開された魔法陣から放出されるのは、爆炎と猛吹雪。相対する2種の属性が共存し、魔物の大群に襲い掛かる。
「なんだこの魔法は…!!!」
「2種類の魔法を同時に…!?」
「すげえ!」
「これがSランク冒険者!」
「サラさん俺も凍らしてくれー!」
「これって…」
『主と同じ混合の魔法だな。』
「うおっ!びっくりした!」
あまり人目の多い所では姿を現さないクロが、例の如く耳元の影から話しかけてきたのだが、毎度いきなりだから驚くんだよなぁ。
『あの魔法を見る限り奴は特定の属性に長けているから混合の魔法が使える訳ではなく、どうにか2種類の魔法を展開しているようだ。それに一つ一つの魔法の精度と威力が違う』
そうだな。放たれた炎属性魔法と氷属性魔法が他とは桁違いに強いのが見るからに分かる。
だが、それにしても混合魔法とは…
「これが言ってた研究の成果か…」
辺り一面が焼け野原になり、魔物の氷漬けが散在している様を目の当たりにする冒険者達。
「フッ、こんなものか。まだまだ改良の余地はありそうだな。」
いやいや、そう言いますけど2/3は焼失もしくは氷漬けになってないかな…?
「「「「「「「うおおおおお!!!」」」」」」」
「すげえ!!!」
「これがSランク!!!」
「サラさんすげー!!」
「その炎で俺も燃やしてくれー!」
「今の一撃でどれ程の数が倒されたんだ!!」
「冒険者諸君!あとは君らの番だ!サラさん、ありがとうございます!」
「「「「「「「うおおおおお!!!」」」」」」」
ギルド職員の号令と共にボルテージの上がった冒険者達の攻撃が一斉にが始まった。
右半分は近接職の攻撃、左半分は魔法職の魔法攻撃。
昂まった士気をそのままに冒険者達は攻撃を繰り出す。
だが、徐々に魔物の数は減って行くものの、微々たる数字だった。おおよそ3000の魔物に対して冒険者の数は多く見積もっても200。
いくら高ランク冒険者が200人いたとしても、魔物の中にも高ランクの魔物や、特定の属性攻撃が無効の魔物もいる。
1人の手によっておおよそ2/3も倒された為、冒険者達の負担はかなり減ったが、それでも分が悪い。徐々に押され始め、負傷者も出始めている。
その、1人で2/3を倒したSランク冒険者はというと、陣営の奥まで下がった後、魔法陣を展開しながら1人でぶつぶつやっているらしい。
研究熱心なのは良い事だけど、せめて事が終わってからにしてほしい。
かく言う俺達も前線に出てちまちまその数を削っていた。
「ねぇベルゼ!負傷者もかなり出てるし、チマチマやってるのキリが無くない?」
「俺も同じ事を考えてたんだよね!」
「いっそベルゼの魔法で吹き飛ばした方が早いと思うんだけど!」
「それも考えたんだけど広範囲の魔法は冒険者を巻き込むから撃てないよ!冒険者が一旦退避してくれれば撃てるけど、その間に魔物も進軍するし!退避する間だけでも魔物の動きが止まらなければ無理だよ!」
「…! 冒険者が退避する間、時間を稼げればいいのね!私の魔法で魔物だけを対象にして動きを止めるのがあるよ!でも1分しか発動できないけど!」
「! それならいけるかも!ちょっと責任者に聞いてくるよ!その間ここ頼めるかな!」
「うんっ!任せて!」
リエルの返事を聞くと、ベルゼは陣営後方にいるギルド職員の元へと瞬間移動する。
「うおっ!!いきなり人が現れた…!?」
「あ、すいません。責任者の人いる?」
いきなり何も無い所に人が現れたら驚く。
ギルドの男性職員を驚かせてしまった。
「どうした!!」
「あ、どうも。Bランク冒険者のベルゼです。今前線にいるAランク冒険者のリエルと相談して、ここまで来たんですけど、ちょっとだけ聞いてもらえませんか?」
「今、負傷者も増えてきて忙しいんだが…Aランク冒険者のリエルと言ったか?」
「相談したのはリエルですね。」
「無詠唱の輝姫か!その作戦を聞かせてもらおう!手短にな!」
「一応俺も広範囲攻撃魔法を使えるんです。一旦冒険者を退避させた後に広範囲魔法を放つとかなり数を減らせるかと思います。冒険者の退避する間、魔物の動きはリエルが封じられるそうです。」
「ふーむ…悪くない案だが…お前のその広範囲魔法がどの程度のものなのか分からない以上許可は出せないな…」
「まあそうですよね…あっ、以前アルスローでスタンピードを壊滅させた事はありますけど…」
「アルスローのスタンピード……?待て、お前!名前なんと言った!?」
「ベルゼですけど。。」
「竜殺しの驟雨か……!」
「あー…そう呼ばれてるのつい最近知ったんですよね…なんか増えてるし…」
「…驟雨ならば可能か…? それに輝姫の作戦ならば…!よし!このままではいずれジリ貧になってしまう!やってみよう!」
「おーありがとうございます。」
「くれぐれも無理はするなよ!それと全滅させられなくても良い、現状を打破できればそれで良いからな!」
「分かりました。冒険者の退避の合図はお願いします。それに応じてこちらも動きます!」
「分かった!」
では戻ります。と言い残したベルゼが一瞬で消える姿を、残されたギルド職員や居合わせた冒険者は唖然と見つめたのだった。
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