第67話 - 宮廷魔法使い長 -
昨晩投稿しようとしてたのですが、寝落ちてしまった為この時間の投稿になります……
投稿頻度が落ちてしまって申し訳ありません…
「王都に魔族ですと!!!!」
円卓に座りし1人、身なりの良い中年の男が叫んだ。
「ああ。俺がこの目で見たんだ。間違いない。」
「ああ…そんな…」
「ふふ、貴方が此処でのんびりしていると言うことはその魔族は既に討伐されたのでしょう?」
女は一見優しい笑みを浮かべるも、目の奥に滾るのが見て取る。
「いや、俺は手を出していない。1人の冒険者を付けていたみたいだが、その冒険者によって撃退されていたのを見ていたんだ。」
「なに?お主がいて魔族を殲滅できなかったのか!!」
「手を出さなかったの?…まさか貴方ほどの手だれでも逃す魔族でしたの!?」
「待ってくれ。俺も手を出そうとしたんだが、奴ら予め転移魔法を仕込んでやがって、一瞬で逃げられちまったんだ。」
「転移って…魔族は時空間魔法も使えるのか!?」
「いや、恐らくは…」
「奴の仕業じゃな。」
「奴って…まさか彼ですか!!」
円卓に座りし者達が勢い良く席を立つ。
今まで目を瞑っていた若い金髪の青年は、目を開けて力強く言う。
「ああ、そうだ。人間を裏切って魔族についた…元宮廷魔法使い長、"パディン" だろう。」
「「「「!!!!」」」」
「水魔法のエキスパートでありながら他属性魔法も使え、数少ない時空間魔法も使えるという……」
「奴め、厄介な事をしよる!!」
ドンッ!!
円卓を殴りつけながら怒鳴ったのは老年の男。
「ミオドアル伯爵、王の御前ですぞ。」
「む、これは失礼!奴の事になるとつい熱くなってしまう」
「よい。ミオドアルがパディンの件で憤慨する気持ちは分かる。…してミハエルよ、ご苦労だった。」
「ありがとうございます。」
「予期せぬ転移魔法とあらば魔族2名を取り逃したのは致し方あるまい。皆の者、ミハエルを責めるでないぞ。」
周囲の者達は一斉に頷く。
これが王の貫禄か。
「…ところでミハエル君、王都に潜伏している魔族は2名だけだったのかな?」
「それなら心配無用!うちの部下に広範囲魔力感知が出来る者がいてな。調べて貰ったんじゃが現状王都に潜伏している魔族はいないとの事だ!」
「さすがはミオドアル伯爵ですな!」
「ほっ…」
「それは良かった。。」
緊張で張り詰めていた空気がフッと柔らかくなる。
人間国の中心地で魔族が現れたとあれば一大事である。
取り逃しはしたが、撃退し現在王都に潜伏している魔族が居ないのであれば良い事だろう。
「近頃は魔族の動きも怪しいと聞く。くれぐれも注意するのだ。」
一瞬和やかになった空気も一変。
王の一言に、周囲の緩んでいた顔も引き締まる。
「これにて会議を終える。ミハエルよ、すまぬが、欠席した残りの者にも伝えておいてほしい。それと例の冒険者の件の報告を。後ほど参れ。」
「御意に。」
♢
「しかし王都にも魔族が入り込んでいたとは…我々も領地を守る為に冒険者を取り込む必要がありそうですな男爵殿。」
「うむ。骨のある冒険者を取り込むにはどうするべきであるか…」
「準男爵の私みたいな者には……そういえば本日は欠席でありましたが、アルスロー侯爵家は新進気鋭の冒険者を取り込んだとか…。」
「我も聞き及んでいる。なんでも竜を討伐したと噂のある冒険者だそうだな。」
「全く!お二人もそんな噂を信じておいでか?」
「「デルバート子爵…!!」」
「冷静に考えれば分かる。竜なんて人間が倒せる訳がなかろう」
「ですが…現に竜の素材が出回っているとお聞きしますが…」
「おおかた、竜の亡骸でも発見したのだろう。全く、アルスローのクソ爺も冒険者風情の噂を信じるまで耄碌したか。」
「ふうむ…」
「そ、そうですね…」
「しかし現宮廷魔法使い長が聞いて呆れる。魔族の2匹を取り逃がすとは。。」
♢
「へっくしゅ!」
「ベルゼ風邪でもひいたの?」
「いや、そんな感じじゃないかなぁ…?」
「なら良いけど…せっかく武器の強化も終わったんだし気をつけてよね!」
王都の繁華街を歩く3人。
一向は新しくなった自身らの武器を携え、人通りを行く。
ここはどんなファンタジー世界だよ!
と突っ込みたくなったが、ここは地球ではなく剣と魔法のファンタジー世界なのだ。
こんな事があっても不思議ではないのだ。
「まあいいか。」
昨日まで愛用していた杖が、おおよそ別物になってしまったが、イメージすれば瞬時に杖になる。まあ深く気にする必要はないだろう。
ぶっちゃけ言うと今の方のが手にしっくりくる。アルノルトと、竜の素材を使った刀には申し訳ないが…。
携えた剣を見ながらベルゼはそう呟く。
「いいんだ」
「いいんだね。」
名匠ファイストの手により魔改造された杖は、現在ベルゼの腰に剣として携えられている。
「さて無事剣を強化してもらえたし、次はどうするか。」
「魔物を狩りたい。」
「そうね!一旦ギルドに行って、めぼしい依頼があったら受けましょ!」
「そうだな。しばらく依頼を受けてなかったし、俺もAランクになりたいしなあ。これからの事を考えながら受けてみようか。」
「なんでAランクになりたいの?今まであんまり気にしてなさそうだったけど…」
「うーん……まあいいじゃん?」
はぐらかすベルゼ。
言えない…リエルにランク負けてるのが悔しいなんて恥ずかしくて言えない…
「ベルゼがAランクになるなら私も負けない。そろそろBランク昇格試験に受けれるはず」
「ほう、負けませんよティアさん?」
「無論私も負ける気はない」
「とりあえずギルドに向かおっか!」
一向は、王都内に建てられたギルド総本部へと向かうのだった。
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