第63話 - 裏路地にて -
王都初日編の後半です。
長くなってしまったので二分させてもらいました。
ちょっと短いですが、63話もよろしくお願いします!
「その余裕の顔はいつまで持つか楽しみだ…っな!」
振るわれた剣から目に見える斬撃が飛ぶ!
「魔族だか知らないけど普通に街を壊す勢いで攻撃して来んなよ!」
即座に闇の障壁を展開し、ベルゼごと家も吹き飛ばせる程の魔力が込められた斬撃を防ぐ。
「なに!?」
「結構魔力込めてたみたいだけどな。残念だったな」
そう言いながら黒の魔力弾を撃ち込む。
「グフッ…!!見えなかった…だと」
「呆気ないな。それでも魔族か?」
「ちっ!聞いてたより強いか。それにこの魔力…貴様こそ本当に人間か?」
「まだ魔力を解放し切ってないけどな。そろそろ俺に何の用があって付けてきたのか話してくれよ。」
「フン!我らは貴様のような人間の中でも力のある者を消すだけだ。」
「うわ素直に話してくれたよ。」
「驚嘆と称賛を込めてな。残念だが、今のままでは太刀打ち出来そうにないからな。出直してくるとする。」
「逃げられるとでも?」
「ああ、もちろんだ。」
突然男の足元に魔法陣が浮かび上がる。
「残念だが人間の力を見誤っていた。だが次会う時はこの程度だと思うな。」
「逃すか!」
魔法陣の光に包まれつつある男に向かって
再度黒の魔力弾を撃ち込む。
「逃した…か。」
魔法陣は光が収束すると、男共々消え去った。
魔法陣があった場所には多量の血痕が残されていた。
振り返り、殴って気絶していた方も見るが、こちらも跡形も無く消えていた。
「……魔族か。本当にいきなり出てきたな。」
ベルゼ達が王都に来た途端、襲ってきた魔族達。
それまで魔族と接する機会など無かった筈だが......
『主よ、すまぬ。転移魔法は我にも追えぬゆえ、途中で振り切られてしまった。』
「やっぱそうだよねー。仕方ないか。」
『設置型の転移魔法だったゆえ、発動に気がつくのが遅れてしまったな。』
ちらっと魔力を感じたのだが、流れを見る前に途切れてしまっていた。一瞬で転移魔法陣を設置していたとなると、かなりのやり手だと言う事だ。
「さて…お前も付けてきてたのは分かってる。出てこいよ。お前も魔族なのか?」
突然虚無に向かって話しかけるベルゼ。
「……やはり気がついていたか。」
一見ただの人通りの少ない裏路地。
姿が見えないのにいきなり声をかけられ驚く男。
途端に、透過していた体が顕になる。
「わりと早くから気がついてたよ。さてお前は何者なんだ?」
「そうか…。訳あって俺の素性は話せない。が、俺は人間だ。お前の力量を測るため見させて貰っていた。ああ、お前や仲間に手出しをする訳じゃないから、そう身構えないでくれ。」
身体が完全に顕著した男は金髪の若い男だった。
見る限り、ザ・イケメンって感じなのに鼻につかないのが羨ましい。
「何者なんだ。人の事を付けて監視しておきながら、素性は話せないとはおかしな話だと思わないか?」
「そうだな....少なくとも今は敵では無い。俺はこの国からの命で、名のある冒険者の実力を見るために動いている。」
「国から…か。と、なると…王家…」
「首を縦に振る事は許されていないんだ。すまないがこれ以上は聞かないでくれ。だが、この国で3人しかいないと言われていた無詠唱魔法を使い、最短記録でBランク冒険者に上り詰め、複数のAランク以上のパーティでやっと太刀打ちできる下位竜を単騎で討伐したという噂は既に王都まで届いている。とだけは言っておこう。」
「念のため先に言うが、俺は国には仕えないからな。それに既にアルスロー家に仕えてる事にもなっているし。」
「それは非常に残念だよ。噂が真実でなかったら良かったのにな。」
「本来、誰かに(もう)仕えるのはしたくないんだ。すまないが覚えておいてくれ。」
「ああ。お前には個人的にも思う所がある。俺からお前に無理強いはしたくない。」
「何だその思う所って。」
「まあそのうち分かるだろう。それでは俺もその件と今の件を報告しに帰るとするよ」
「色々と府に落ちないけどその感じだと、どうせ答えてくれないんだろ?」
「ああ、残念だがな。またいずれ会う機会があるだろう。」
男はそう言い残すと身体が透過し、姿が見えなくなっていった。
(まあ探知魔法に引っかかってるからどこにいるか分かるし、"この眼" だと体の魔力が流れてるが見えるから丸わかりなんだけどね)
透明になった男の、体を巡る魔力が路地から大通りに向かって歩いて行く光景。
本人は見えてないつもりなのだろうが、かなり滑稽に見えてしまった。
「しっかし王都に来た途端にこれか。先が思いやられるな…」
魔族の襲撃に、王家からの使い。
普通に帰っていたが、あの男透明化してたよな…?
そんな能力?がこの世界にもあるのか。。
『主よ、他の2人は大丈夫なのか?』
「うん、探知魔法で2人を見てるけど問題無さそうだね。」
リエルは武器屋みたいな所にいるし、ティアがいるのは喫茶店かな。
「腹も減ったし何か食べに行くか。」
『うむ!』
路地裏で尻尾を振りながら答えるクロと大通りへと向かうベルゼだった。
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