第6話 - 文無しの転生冒険者 -
6話目です。
よろしくお願いします。
そういえば、手持ちのお金が心許ない。
残り財産は、銀貨1枚と銅貨6枚。
この世界の通貨は、
白金貨、金貨、銀貨、銅貨の4種類。
銅貨10枚で銀貨1枚。
銀貨10枚で金貨1枚。
金貨100枚で白金貨1枚となる。
わかりやすくて助かる。
この世界に来て初めての戦闘で倒したゴブリン達。その魔石を売ったお金がそろそろ底を尽きそうならば狩りに行かねばならない。
幸い図書館に行く前に寄ったギルドで永久不滅のクエストを受注している。
最低でもモンスターを1体討伐すれば銀貨5枚もらえる。
(あれ…この世界もしかしてチョロいのでは………)
いや!俺はたまたま与えられた力?があるからそう感じるからで、普通の冒険者はそうでもないのだろう!慢心する事なく冷静に生きよう。
でも無詠唱の事もあるから、なるべく他の冒険者には関わらないようにしたいなあ。
そんな事を考えながら歩いていると物凄く鼻を刺激する露店が目に入る。
(えっ、めっちゃうまそう…!)
それは前世で言うところのハンバーガーみたいな存在だ。照り焼きっぽい良い匂いが食欲をそそる。
「いらっしゃい! 1つ銅貨5枚だよ!」
「じゃあ1つもらおうかな」
「まいど!坊主、この街来たばかりかい?」
「よく分かったね、昨日来たばかりなんだよ」
「ここらじゃ見ない顔だからな!何かあったら遠慮なく聞いてくれな!」
「ありがとう、また来るよ」
ハンバーガーを食べながら通りを歩く。
通りは活気があり、食べ歩きも風情があって楽しい。
「うんっま!!」
この食べ物の名前なんていうんだろう…そんな事を考えていると1件の店が目に留まった。冒険者ご用達、武器屋だ!
(お金はないけど、どんな武器があるのかくらいは見ておきたいよね)
店内の壁に掛かった剣や槍、
ガラスケースの中に入った杖やアクセサリーなど所狭しと並んでいる。
「いらっしゃい、成り立てかい坊主」
「昨日冒険者になったばっかりだよ」
「そうか、装備はしっかりしておくのが冒険者の心構えだ。命を預けるからな!」
「ははっ、今日はどんな装備を揃えようか見にきただけだから、冷やかしになっちゃうね」
「そうか、お前さん戦闘スタイルは?」
「んー多分魔法使いかな?」
「なんだ多分って。お前さんの体型じゃ剣も槍もきついかもしれないから、そりゃそうか。」
「そうですねー」
主人の失礼な発言にムッとしたものの、受け流すベルゼ。
「魔法使いなら杖とローブだな!」
「杖って何に使うの?」
「杖はな、色々な効果を持つものがあるんだが…例えば詠唱短縮効果、魔力抑制効果、魔法威力増大効果とか本当に色々あるぞ。」
「なるほど…(便利そうだな)」
「まあ魔法使い目指すなら普通知ってるけどなガハハ」
「例えばこういう効果の杖が欲しい!でも店にない!って場合は作ってもらえたりは…?」
「おう、できるぞ!」
「なら今度お願いするかもしれないですね。ローブは?」
「ローブもピンキリだな。素材によって防御力や耐久性も変わるし付与効果付きになると値段も高くなるかな」
「ローブって憧れてたんですよね」
「そうか…男は剣が至高だと思うんだが…」
「はは……そういえば、魔石を入れる袋とかって売ってないですか?」
「ああ、収納袋は3件隣の道具屋にあるぞ」
「道具屋か…ありがとう、またきますね」
魔石を何個もポケットに入れて戦闘するのもしんどいので道具袋みたいなのが欲しかったのだ。
「こんにちはー」
「はいはい、いらっしゃい」
「お婆ちゃん収納袋ってありますか?」
「あるよ。こっちが金貨30枚、こっちが金貨5枚、んでこれが銀貨5枚だよ」
「何が違うの?」
「収納出来る量と持ち運びのし易さだね」
なるほど…
金貨30枚のやつは大容量&持ち運びしやすい
金貨5枚のはそれなりの収納量&ちょっとかさばる
銀貨5枚のは収納量が少ない&かさばる
って感じか…
どのみち今の所持金じゃ買えないか…
「ごめんお婆ちゃん、手持ちが足りないから収納袋は諦めるよ。…大きい布と縛る紐ってある?」
ふと思ったのだ。
大きい布に魔石を入れて包み紐で縛ってぶら下げておけば、求めていた道具袋として成り立つのでは、と。
所持金の少ない今はその程度で、どうにかしなくてはならないし、稼ぎが良くなってきたら改めて買えば良いのではと。
お婆ちゃんの道具屋で、大きめの布と麻紐を銀貨1枚で購入すると、いよいよ所持金がほぼ底をついた。
前世でもあったなー お金ギリギリ過ぎて生活苦しかった事。。
前世の転職前は家族経営の会社で、働けど上の人間が儲かるばかりで、それ以外の人はみんな愚痴ってたな…
前世の日本じゃよくある話だったけど、一向に苦しい生活から抜け出せず、若い人はみんなもがいてたなあ。
そんな事を思い出しながら気がつくと街の入り口まで来ていた。
「お前さん身分証は発行できたのか?」
「できましたよ!一昨日はお世話になりました。」
「それは良かった。今日はこれからクエストか?」
「そうなんですよ、お金稼ぎに行ってきますよ!」
「気をつけろよ、最近西の森に高レベル魔物が頻繁に目撃されてる」
「高レベル魔物ってなんですか?」
「話に聞くと多分オークみたいだな」
図書館の図鑑で見たな。たしか2足歩行の豚だったな。
「この辺りの冒険者では倒せないんですか?」
「この街の冒険者は最高でもCランクのパーティが1つだけだからな。数を集めたら、もしかしたら倒せるかもしれないが相手が群だと多くの犠牲が出てしまう。そうなると西の森よりも東にあるアルスローという街から上級者を呼ぶ他ないんだ。ただ、申請が通るのも、上級者がこちらにくるのも時間かかるからな。多分10日くらいはかかるんじゃないかな。」
「なるほど。それは危険ですね。気をつけますね!」
一昨日、世話になった衛兵に挨拶をしてエリースの門を出る。少なくとも1匹は狩らないと今晩のご飯も、明日からの宿も無くなってしまうので、頑張りたいところだ。それに魔法について色々試したいしな。
ご覧頂きありがとうございました。
次話より物語がようやく動き出します。
次話もよろしくお願いします。