第45話 - 折れる剣を -
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あの瞬間、俺は見えた気がする。
ティアが放った厨二感満載の技、"紅天十字斬り" あの技を身体強化していない目で見ていたけど、剣筋が見えなかった。だから次に繰り出す技をちゃんと見たい。そう思っていた。というか思い過ぎたのかな。
最後の技… "夢想一閃" だったか? それを繰り出す時、正確に言うと納剣してからの数瞬、ティアの身体に巡る"何か"が見えたんだ。ティアは一呼吸を置いた後、前世でいう居合みたいに納剣した状態から抜剣。多分4歩であの熊との距離を詰め、両断しながら熊の背後へと着地したような気がする。ぼんやりだったけどそんな感じに見えたんだ。
今考えると"紅天十字斬り" が見えなくて何か悔しかったんだと思う。俺、結構負けず嫌いだし…。だから絶対に「次の攻撃を視る」って考えてたんじゃないかなぁ。
視界に違和感を感じた直後、ティアの身体に巡る"何か"を視る事が出来たのかなって思うんだ。でもあの時だけだったし、もう記憶も曖昧なんだけど…って考えると本当は見えてないけど、脳が勝手にそう思い込ませてるのかもしれない。とも思えるんだけどね…
ーーーーーー
「さて、今日もダンジョン攻略頑張ろか!」
「うんっ!」
「がんばる」
「やっぱり朝はテンション低いのね…」
「ごめん、こればかりはいつまで経っても治らないの…」
「おい!アレが78階層に最も近いパーティか!」
「ああ、Aランク冒険者のリエルに、Bランク冒険者のベルゼ。こいつはアルスローに出没した下位の竜を倒したって噂だぜ!」
「Bランクで竜なんか倒せる訳ねーだろ!」
「ははは!俺もそう思う!」
「なんだ、お前ら知らないのか?」
「あん?何だよお前」
「このルーファスの街にアルスローから来た商人が竜の素材やそれを使った装備品を売ってるのを。」
「「は???」」
「嘘だと思うなら大通りに行ってみると良い。ただ、竜の素材だ。もう無えかもしれねえがな。運良くまだ売ってたら誰が倒した竜の素材か聞いてみるといい」
「「マジかよ!!」」
「ああ。それにこの前アイツらに絡んだCランク冒険者達がデコピンでぶっ飛ばされたんだ。それも一瞬で4人もな。あの真ん中にいるベルゼって奴に。」
「「デコピンで4人を……」」
「ああ…俺ァこのゴルティアダンジョンに潜って長いが、アイツらほど短期間であそこまで深く潜ってる奴を見た事が無えしな。俺なら遊び半分でアイツらに絡む事は絶対にしねぇな。まだ死にたくねえからな。ま、絡むならほどほどにな。じゃあな。」
「さ、さて。ダ、ダンジョンに潜るとするかな…」
「お、俺は竜の素材がまだ売ってるか、み、見に行こうかな!せ、せっかくだしな!」
「お前抜け駆けはズルいぞ!!」
「うるせえ!竜の素材が遠い王都に行かないで買えるんだぞ!」
「「 ……… 」」
「ま、まあせっかく売ってるなら見に行く価値はあるよな!」
「お前もそう思うだろ…?」
立ち話をしていた2人は人生で一番早く走った。街の大通りへと向かったその姿はもう、疾風の如し。
「へぇ〜70階層からは森じゃなくなるんだ〜」
「そうみたいね、まあ70階層に到達したのもたった1人だけだから本当か分からないけどね!」
「すごいなその冒険者…ソロで70階層まで行ったのか…」
「ルキフェルの話なら私の住んでた村でも有名だった。昔あったダンジョンを攻略して、このダンジョンにも足を運んでいたとか。かなり前の人だけど、凄腕の冒険者だったと。」
「ふーん。…あれ、ルキフェルってなんか最近聞いたな?」
「アルノルト様のお屋敷で話したじゃない? 無理矢理、士官させられて街を消しとばした冒険者って。」
「あの悪魔みたいな言われ方してた人か!」
「ベルゼが他人を悪魔と言うことがあるの」
「昨日も聞こえてたけど、人を悪魔みたいって言うのはどうかと思うぞ?ティア」
「聞こえてた…」
今日は66階層からスタートし、ダンジョンの中の森を進む3人。ダンジョン内に森が存在するのも可笑しな話だが、これまで攻略してきた上層の事を思うと深くは考えない方が良さそうだ。
「基本的にティアが前衛、リエルと俺がバックアップ。で、昨日の熊みたいな魔物なら良いけど硬い魔物が出てきたら俺とリエルで戦おうか。」
「うん!」
「ん」
3人は順調に魔物を倒しながらダンジョンを進む。
「くっ!硬い…!」
「ティア!そいつは俺がやるから俺の方と変わってくれ!!」
「ん!硬いがラビット・タイガー程度なら…!!」
「わかった!」
キーン!!
『『ギャァアアアア!!』』
「こっちは終わったよー!」
「こっちも終わった!」
「私も終わった…」
晴れない声のティア。剣は綺麗に折れていた。
「ねえ!嫌な音がしなかった?」
「魔物の硬さ云々というか剣が限界だったみたいだな…」
「ん…。最近は無茶ばかりしてたから。今まで私を守ってくれてありがとう。」
八つ当たりで潜ったダンジョンで散々八つ当たりしたツケなのか。最後の魔物を倒した後に折れたのだから魔物の硬さが原因では無い筈だ。そもそも剣の寿命だったのか。そこまでは分からない。
折れてしまった剣を大事そうにしまうティア。
「私は今日はここで離脱する。申し訳ないが2人は残ってくれて構わない。」
「「いやいや俺(私)たちも戻るよ!」」
「私の都合だから迷惑をかけるのは申し訳ない」
「いや、俺たちパーティじゃん」
「そうだよ!ティア抜きで攻略しても面白くないもん!」
「2人とも…」
この2人について来て良かった。
そう涙目で2人を見つめ思うティアだった。
"冥府の使者"パーティのこの日の到達階層は73階層。
記録の78階層は上手く行けば明日にも更新できる。
帰路にてふとベルゼは思う。
しかし昨日のは何だったんだろうなぁ…
ティアの身体の中に巡ってた"何か"が見えた気がするし、その後の動きもリエルには見えてなかったけど、俺はスローに見えた気がするんだよなあ…
でも今は普通だし、やっぱり勘違いだったのかなあ…
「リエル、昨日ティアが1人で戦ってた時、最後の技は見えなかったんだよね?」
「え?最後の技は全く見えなかったよ?最初の技は少し見えたけど…」
「そっか」
「私の"夢想一閃"は身体の全神経を集中して動かして抜剣する技。多分見える人は私の師匠しか居ない。最初に使った"紅天十字斬り"でさえ大抵の人は見えないのにリエルはすごい。」
「ティアの師匠もすげーなぁ」
「ん、師匠は凄かった。でも師匠も突然私の前から消えてしまった」
「そうなのか…」
「ティアに教えれる事が無くなったから?」
「そんな事はない。でも私はまだまだ教わりたかった。」
「またいつか会えると良いな」
「ん…」
ギルドに戻り報告をした3人だったが、ベルゼは昨日の事を思い出していた。
ともあれ明日はティアの剣を新調してからのダンジョン攻略になる。
他人が作った記録をぶち抜くのは嫌いじゃない。
ティアとリエルが仲良く話している間、そんな事を考えるベルゼだった。
あの瞬間、私は見えた気がする。
ティアがあの熊を倒した直後、ベルゼの片目が変色しているのを。
普段は両眼とも綺麗な紅色なのに、あの時ベルゼの右眼は虹彩の部分が漆黒のような色…瞳孔の部分が金色に見えた気がするんだよね。でも次に見た時は両眼ともいつもの紅色だったんだよね。ベルゼも何も言ってこないし、もしかしたら見間違いなのかな…?
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