第37話 - 冥府の使者 -
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見て下さる方やブクマ数が日に日に増えると筆が進みます。
何分初めての小説なので、誤字脱字や文章構成に難があるかもしれませんが、どうぞ暖かい脳内変換でご覧頂けたら幸いです。
皆様のおかげで無事、第1章が完結となります。
♢ モンスターフェスティバルから3日後 領主の館
「ベルゼ様、リエル様、ようこそいらっしゃいました。私はアルスロー家で執事をさせて頂いております、サージェスと申します。ベルゼ様は先日振りでございますね。」
「先日はどうも、今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「はい、アルノルト様よりお2人が到着されたら執務室にと、仰せつかっておりますので早速ではありますが、こちらへ」
(領主の館は初めて来たけど、思ってたイメージとは違うなぁ…もっと目が眩むようなキラキラしたのをイメージしてたんだけど…)
廊下に飾られている調度品は豪華絢爛というよりは、趣きのある感じだ。芸術品が館の雰囲気を害する事なく並んでいる。それに趣味も良い。アルノルトの屋敷は、イメージしていた貴族貴族したものではなかった。この世界の貴族はそういうものなのだろうか。。
コンコン
「アルノルト様。ベルゼ様、リエル様をお連れ致しました。」
「うむ、入ってくれ」
「失礼します」
「ベルゼ、それにAランク冒険者のリエル。よく参ったのじゃ」
「ほ、本日はお招き頂きまして、あ、ありがとうございます!」
「改まらなくて良い、ワシは貴族じゃが偉ぶりたくないのじゃ。その点はベルゼを見習うのじゃ」
「アルノルト様、俺は別にそんなつもりはないですよ…」
「お主はその歳でなかなかに肝が座っておるからな」
「はぁ…」
「まあよい、して先日はアルスローの危機を救ってくれて改めて礼をいう。感謝するのじゃ」
「と、とんでもないですぅ!」
「前置きはそのくらいにしよう。ワシは回りくどいのが嫌いでな、単刀に話そう。前よりベルゼにはワシの元で働いてみないか。と言っておったのじゃが、どうも誰かの下で仕えるというのが嫌だと断られておってな」
「そうですね。」
「ワシだって嫌々仕えてもらうのは心苦しいゆえ、今回はそうじゃなくてワシの話だけでも聞いて貰いたいと考えて、来てもらう事にしたのじゃ」
「「???」」
「以前よりベルゼの力に目を付けておったが、お主の気分を害して敵対する事は避けてきた。貴族が街でお主に声をかけた事は無かったじゃろ? お主程の実力を持った冒険者を、普通は貴族が放っておかないものじゃ」
「確かにお誘いはありませんでしたね…?」
「ワシらが相談した結果じゃよ。ワシらとてその力は欲しい。じゃが、執拗に迫って敵対されては困る。」
「なるほど。」
「下位とはいえ、竜をも倒す実力じゃ。その気になれば街の一つくらい地図から消す事だって可能じゃろう。それで色々考えたのじゃが、今日はワシの素直な気持ちを話そう。」
「「はい」」
「ワシはお主らと友好関係にありたいと考えておる。これはワシだけではなく、アルスローの貴族の総意じゃ。今後お主が冒険者と活躍し、その名が王都にも轟いた際は、王家からも声がかかるかもしれぬ。じゃが王家からの誘いは断れないのじゃ。それはお主も困るじゃろ?」
「それは困りますね…どうしても断れないんですか?」
「断れぬ。過去にどんな高名な冒険者でも断れた者はおらぬ。王家の言う事は絶対じゃからな。」
「そうなんですか……」
「そこで、ワシが提案するのは、アルスロー家の専属冒険者として動いてもらう。と言う事じゃ。もちろん、お主らの冒険に口出しする事はない。表向きはアルスロー家の者という事になるのじゃが、実際は名前だけで、今までと何ら変わりはせん。お主が冒険者として、どこでどんな旅をしても文句は言わん。じゃが表向きはアルスロー家の者ゆえ、他所で犯罪とかは辞めてほしいのじゃ。マジで。」
「そこはマジなんですね」
「王家や他の貴族に目を付けられて強制的に仕える事になってしまったら、そこで冒険者としてはお終いになるかもしれぬ。ワシらとしても目の前におる、有力な冒険者をみすみす他に取られてしまうのは惜しい…。お互いに悪い話しでは無いと思うがどうじゃろうか? もちろんお主が正式に仕える気になったらいつでも歓迎するがの。」
アルノルトの話を聞き、考え込む2人。
「……俺、いや我々は冒険者であり続けたいと考えています。詳細は省きますが、魔物をこの世界からいなくする…つまり魔王を倒す事を目標にしてます。なので、王家や貴族に仕える気はありません。」
「私も、というか魔王については私の我儘なのでベルゼの言う通り誰かに仕える気は無いです」
「なので、アルノルト様の提案は凄くありがたいです。」
「ならば…!」
「ですが、もう少しお話を聞かせて頂けますか?不躾ではありますが、その上で判断させて頂きたいと思います。」
「よかろうの」
話し合った結果を纏めると
・今後2人が冒険者として活躍した場合、王家や他の貴族に取り込まれる可能性が非常に高い。
・そのせいで冒険者としての活動が困難になり得る
・そこで名目上はアルスロー家に仕える
・アルスロー家に仕えてるという事で、王家も他の貴族も2人を無理矢理使役させる事はできないルールがある。
・アルスロー家は2人の冒険者に口出し、関与はしないが、アルスロー家からの援助等も予定していない
・でも万が一今回の竜みたいな案件があったら手を貸してほしい
・犯罪だけはやめてほしい。フリじゃなくてマジで。
・将来、冒険者稼業を引退した後は指南役等で正式に仕えてほしい
との事だった。
「聞けば聞くほど俺たちにしかメリットが無いような気がするんですけど…」
「ワシらにもメリットはあるのじゃ。お主らが活躍すればするほど、我がアルスロー家の評判に繋がる。家の評判が良くなると貴族の間でも有利な立ち位置におる事ができる。それに高名な冒険者を抱えているとなればアルスローの街も更に活気が出る。そうなれば街もどんどん大きくなるかもしれぬ。…ああ、もちろんお主らの名前を武器に立ち振る舞ったりはせぬから安心せい。」
「なるほど…お互いに取って良い事が多いですね」
「そうじゃな。じゃが、例えばお主らが犯罪者になってしまった場合、お抱えの我が家に飛び火する。逆も然りじゃがな。」
「そこはリンクしますよねえ」
「ワシとて暗い事をして家の名を落とす事はしたくないからの。これでも胸を張って生きてきてるつもりじゃ」
「(リエルどうする?今まで通り冒険者として活動できるし、とやかく口を出されないなら良いかなと思うんだけど。)」
「(そうね。私も同感だし、最近こういう事をする貴族も増えてるらしいから変な心配はしなくて済むと思うよ!)」
「(分かった!)」
「ワシと同じ事を考える貴族は最近増えておってな。貴族はお抱えにしたいが、冒険者はまだ稼業を続けたいという事が増えてきてな。それならば名目上は仕えておって、引退したら正式に。と、早いうちに唾をつけておくのが最近の流行りなのじゃ。要は今後の予約みたいなものじゃな」
「貴族ってもっとこう強引な感じなのかと思ってました…」
「ひと昔まではそうじゃったな。強引にでもお抱えにして取り込んでおったのじゃ。昔、貴族に取り込まれたある冒険者が、不満が溜まりに溜まって爆発して、街を一つ消しとばした事があってのう。それから貴族も強引にお抱えにする事は辞めたのじゃ。」
「うげえ…」
「下手するとベルゼもそうなってたかもね…」
「否定出来ない…。その冒険者はどうなったんです?」
「ワシも詳細は知らぬが、その者は上位竜"灼炎暴深龍"や"暗黒闇帝龍"をも討伐した者でな。目をつけた公爵家が強引に取り込んでから、不満ばかり言っていたそうじゃ。その不満が募り募って爆発、広大な公爵家の領地は今となっては更地となっておる。当然、その冒険者は死罪になる筈じゃったが、執行の前に逃げ、どこかでひっそりと暮らした。という話じゃ。」
「えぇ…公爵領を…めっちゃ怖い話ですやん…」
「今から50年も前の話じゃからな。その冒険者も流石に生きてはおらんよ」
「そうなんですね」
「《冒険者ルキフェルト》のお話ですよね!小さい頃、両親に良く聞かされました!」
「ワシもじゃ。悪さをするとルキフェルトに襲われるぞー!とな!懐かしいのう」
「可哀想なルキフェルトさん。冒険者なのに悪魔みたいな言われよう……」
「時間も無いゆえその話は置いておこうかの。お主ら、先の条件で良ければ契約を頼むぞ」
「「分かりました!!」」
2人は契約書にサインし話を終える。
「そういえばお主らパーティ名は決まったのかのう?」
「ええ…一応決まったんですけど、僕の提案じゃないですからね」
「?」
「パーティ名は"冥府の使者"となりました。」
「…ハッハッハ!そういうことか!お主には良くにあうのう!」
「むう…!」
「すまんすまん、して今夜の晩餐会ではそう紹介させてもらうからの」
「「はい」」
言わずもがな、この後開かれた晩餐会で大勢の人の前でネーミングセンスの羞恥プレイを受ける事になったのだった。
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次の投稿は明日になります。
明日からは第2章が始まりますのでよろしくお願いします!
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