第31話 - 黒の襲来 -
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カーン!カーン!カーン!
時刻は早朝。朝を告げる鐘の音が街中に響く。
夏より少し高くなった空を朝日が焼く。
モンスターフェスティバル最終日。
人々は商売の為、狩猟の為、祭りの準備と起き始める。
「んっ…ん……?」
もぞもぞ…
「…今日は布団がふわふわしてて温かいな…」
締め切った窓に陽が射し始める
…ふわふわ?
寝ぼけていた脳が覚醒する。
「いや、親戚中で来るなって言ったじゃん……」
「主、これには色々と訳があってだな…」
「あらー!あなた!起きたわよ!」
「おお!お初にお目にかかる!私達はシャドウクリーパーの一族。長をしているアルビナントと申す」
「主、父上達には主の言い付けを言ったのだが…」
「まあまあ!息子がお世話になる方にご挨拶するのが礼儀じゃないの!」
「母上…」
どうやらクロの両親、それにクロに似たシャドウクリーパー達が部屋中に所狭しともふもふしていた。もふもふ。
「…まあいいよ。お帰りクロ」
「ただいま戻ったのだ」
親戚を連れて帰ってきたのだった。
「この娘喰って良いか?」
「いや、リエルは食べちゃダメだから…」
親戚の方は食欲が旺盛のようだ。
リエルが同じ宿に越して来て、夜の冒険者を共にしてしまってからは、パーティメンバーだし同じ部屋で良くね?という事で、2人部屋に移って来たとは言え、体長1.5mほどある大型犬が大勢で集まれば床も見えないくらいひしめきあう事になっていた。
「主さん、息子を宜しくお願いしますね」
「愚息ではあるが今では族長の私より逞しくなったものだ。宜しくお頼み申すぞ」
「はい…クロにはいつもお世話になってまして…こちらこそよろしくお願いします」
(おい、なんでこうなったんだよ…部屋が大型犬で埋め尽くされてるじゃないか)
(すまないと思ってるのだ…父上も母上も息子の晴れの日を見ない訳にはいかないと退かなかった故…)
(晴れの日…?)
「なんだ息子よ。主殿に伝えておらぬのか?」
「あなたったらいつも肝心なところが抜けてるんだから!」
「…すっかり忘れておったのだ」
「どゆこと?」
「我らシャドウクリーパーは闇に仕えし一族。闇を司る者と契約する事が一人前の証となるのだ」
「そうそう、私達の息子が主人を見つけたと聞いて契約を見に集まったのよ!」
「クロ、契約って?」
「うむ、特に難しい事はない。今は仮契約とでも言ったところかのう。血の契約を交わし、本契約となるのだ。」
「そうそう、契約すればそれこそ一心同体になるのよ!」
この世にはテイムという魔物と契約をする事が出来る事は前から知っていた。契約した魔物を使役したりペットとして飼っている者もいる。それらをテイマーと呼ぶ事も。
魔物は上位種、下位種に分類され、上位種の中でも最高位にいる魔物はテイムの契約を結ぶと色々と特典があるみたいだ。
その特典は種族や属性によって異なるっぽいのだが、共通しているのは、使役して狩った魔物から得られる経験値や特性は共有されるらしい。これは人間の冒険者のパーティと似ているな。
その理由は分からないのだが、パーティを組む事によって得られる経験値が共有される。
これはリエルと臨時で組んだ時に初めて知った。
なぜ共有されるのかは分からないが。
パーティメンバーのステータスは"賢者の指輪"で確認する事もできるそうだ。
それは最近知ったのだが、リエルと臨時で組んだ時、リエルも俺のステータスを見る事は出来たのだが、いきなり覗くのは失礼と思って、最初は俺の口から聞いたみたいだった。そういう所は律儀なリエルお姉さん。
話しを戻そう。
シャドウクリーパーは闇の最上位魔物。
本契約をするとクロと俺は経験値も共有、ステータス欄の -特殊- も一部共有ができるそうだ。その点は人間と違う点かな。ああ、だからクロの母親は一心同体と言ったのか。
クロのステータスの -特殊- に関しては現状では俺にメリットはないらしいが経験値共有というのはありがたいな。実際クロも戦闘に加わる事も多かったし。
-特殊- に関しては今後に期待しよう。
「…今日のべるぜ…もふもふしてりゅ…」
「いい加減起きたら?」
「むにゃむにゃ…べる…ぜ…?」
「おはよう」
「あるぇ…ベルゼだ…?じゃあこのもふもふは…?」
「我の尻尾だ」
「クロ!戻ってた…えええええ!!!!!!!」
そう、この2人部屋は黒い大型犬で埋め尽くされているのだ。
「もっふもふ〜〜!!!!」
「気持ちは分かる。俺もそれやりたい!!」
寝起きドッキリ後のリエルは黒い絨毯に覆われて…もといモフってる最中だ。
「主さんのパーティメンバーは光の娘なのね!」
「これはまた面白い」
「あなただって昔仕えてた方のパーティメンバーだって面白い方が多かったじゃないの〜!」
「お父さんも誰かに仕えてたんですか?」
「うむ、私は闇落ちして魔族となった闇使いに仕えてたのだ」
「魔族…」
「人間からしたら魔族は嫌う種族であるな。逆も然りであるが」
「良いんですか?俺人間なんですけど…」
「私達は人間だろうが魔族だろうが関係ないのよ。みんな色んな種類の主人に仕えてるもの!」
そうなのか。
シャドウクリーパーは純粋に闇に特化してる者に仕えるだけなのか。ん?
「お父さんが仕えたその魔族って今は…?」
「ああ…主様は内戦において命を落とされてしまったのだ…」
「ああ…なんかすいません」
「良いのだ。もう前の事だからな。それに仕えている主人が先に死ぬという事は良くあるのだ」
「そもそも私達って長生きな種族だから主人が先に寿命とか色々で先に死んでしまう事が多いのよ」
「そうなんですか…」
(確かにクロも長命っぽい事を言ってたな…)
「さて主よ、契約の儀を行いたいのだが」
「あ、ああ」
「どこか広いところで取り行いたい。ゲートを出してもらえるかの?」
「わかったよ」
転移門。
転移魔法の瞬間移動から思いついた魔法だ。
以前、魔法研究中に発覚したのだが、俺が誰かと転移できるのは3人までだったのだ。
その為、転移を使って大勢で移動する事は出来ない。
一応大勢で移動するための魔法を考えた時、門を思いついたのだ。
空間と空間を繋ぐイメージで開かれた門をくぐるだけで転移ができる便利な門。
これにはデメリットもあって、転移は一瞬で移動できるが、門は開くまでに時間を要する。つまり一瞬のうちに移動はできない。
そして門と門を開いている間は魔力が消耗する。それも結構持っていかれる。
メリットは大勢で移動できるくらいかな。
「というわけで、魔力を結構使うから親戚の皆さんも急いで門をくぐってきてくださいね」
ベルゼはそう言うと、部屋と街の外…なるべく人が来ない草原に門を繋ぐ。
「私達の影移動に似てるわねえ」
「そうだな。人間でここまで大勢を移動できる時空間魔法を使える者がいるとは…」
「え、今なんて?」
「人間でここまで大勢を…」
「そのあと」
「時空間魔法」
「なにそれめっちゃ格好いい!」
「「「「えっ…」」」」」
「時空間魔法と知らずに使っていたのか…?」
「いえ、お父さん。ステータスで"時"と表示はされてるんですけど、それが何の"時"なのか知らなかったんですよ。人間で時空間魔法が使える人が少ないらしくて」
「そうなのか。人間は昔の方が強い者も多かったからそうなってしまうのだろうな」
「そうなんですか?」
「うむ。私が仕えた主人の時も人間と魔王が良く戦っていたものだ。その当時の魔王は歴代最強であったな。」
「へえ〜」
(すげー忘れてたけど、この世界は魔王が最強って言ってたな。なんか聞いてた話と若干違う点もあるけど………)
「とりあえず私達もこの後狩りに行くし、早めに儀式を終わらせちゃいましょ!」
「ああ、そうだな」
クロの両親、それに親戚の方々が描いた魔法陣の中心に俺とクロがいる。魔法陣の外側には一同が見守るように沿って並んでいる。
「では主よ。互いに血を一滴垂らすと契約が完了する」
「わかった」
俺はナイフで、クロは犬歯で皮膚を薄く切り血が滴る。
滴り落ちた血が魔法陣に触れた瞬間。
1人と1匹は光に包まれる。
脳内に入ってくる何か。イメージみたいな…何か。
なんだろこれ…温かいな。温泉に浸かってるみたいなそんな感じだ。
(きもちい…い……)
徐々に両者を包んだ光は収束していく。
「「「「「ワォォォオオオオオオオン!!」」」」」
光が収まるとシャドウクリーパー達の鳴き声が響き渡る。
「息子よ!良くぞ主人との契約を終えた!!」
「良くやったわね!これであなたも一人前ね!」
「うむ、これからは我が主の下、やって行く故」
「なんかこういうとこ人間の家族みたいだね」
「そ、そうだな」
「では主殿、息子を宜しく頼んだぞ」
「今度は私達の郷にも遊びに来てくださいね!」
そう言うとクロの両親や親戚の方々は俺やクロと言葉を交わして順番に影に消えていった。
「んじゃあ、改めてよろしくなクロ!」
「うむ!よろしく頼む!」
「いいなー!私も魔物と契約したい!!!」
「リエルはそのうち出会えるんじゃない?」
「娘よ、お主にもじきに現れると思うぞ」
「そうよね!楽しみにしておくよ!…えっ?」
「どうしたの?」
「クロの声が私にも聞こえるようになってる!!!」
「おお!良かったな…!」
「おそらく主を介して互いにパーティメンバーとなったからであるな」
「あーーなるほど。リエルは俺と冒険者パーティ、クロと俺は契約した事によってパーティみたいな感じだから…って事か」
「ふふ!改めてよろしくねクロ!」
「うむ、よろしく頼む!」
「さて、今日はモンスターフェスティバル最終日!頑張るか!!」
「うん!」「うむ!」
「まずは朝食を食べに戻るとするか!」
こうして2人と1匹は
改めてパーティとなったのであった。
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