第3話 - エリースの街 -
3話目です。
よろしくお願いします。
探知魔法で調べた通りの方向に進んで来た俺は、外壁に囲まれた大きな街に着いた。これで探知魔法の有効性が確かめられたな。
「言葉って通じるのだろうか…」
そう、異世界転生系で最初にぶち当たる壁である。ご都合主義の転生の物語は何故か日本語が通じたりもするがこの世界ではどうだろうか…
「こんにちは……?」
「…? 外の人間か。その言葉は通じないぞ。声に魔力を込めてもう一度話してみろ」
え、なに。俺の言葉は通じないけど、向こうの言葉分かるんだけど??どゆこと?
頭にハテナを浮かべながらも、言われた通りというか声に魔力を込めもう一度話しかけてみる。
「こんにちは…通じてます…?」
「おお、通じてるぞ」
おー!良かった!
異世界転生最初の壁は無事乗り越えられたようだ。
「エリースの街へようこそ。俺はこの入り口を守る衛兵だ。街に入るのか坊主?」
「はい、入りたいんですけど、どうすれば良いですか?」
「はは、相当な田舎から出てきたんだな!この街というかだいたいの街は身分証を提示して拒否リストに載ってなければ街に入れるぞ。身分証は持ってるか?」
「すいません、身分証の必要がないくらいの田舎から出てきたので持ち合わせてないんです…」
流石に苦しい言い訳か?と思ったものの、衛兵は特に気にする様子もなく対応をする。
「そうか、ならまずこの紙を持ってギルドへ行くんだ。ギルドで身分証、ギルドカードを発行してくれる。それとこの石の上に手を置いてくれ」
衛兵から紙を受け取りながら言われた通りに石の上に手を当てる。すると、その石が一瞬光りまたすぐ元に戻る。
「これは登録の魔石と呼ばれる石でな。坊主みたいな初めて街に来るような人間が登録するんだ。これは万国共通でな、犯罪をして逃亡している罪人かどうかこれで判定出来るんだ」
「便利なんですね。もう登録は終わったんですか?」
「おう、終わったから行っていいぞ。ただ、身分証を発行せずに2日この街に滞在してると4級犯罪者になるから気をつけろよ」
「4級犯罪者…ですか?」
「そうだ。4級は軽犯罪だな。罰金を納めたら済むが、納めないと段々と重犯罪者になるから気をつけるんだな。このルールは国家間で決められて大体の基準はどこに行っても同じだ。ちなみに1級までなると即殺が許可されている。とまあ今のところ坊主には関係ないだろうが覚えとけよ」
「犯罪者になるつもりは無いですけど覚えておきます」
「それがいい。気をつけていけよ」
衛兵に挨拶をして教わったようにギルドに向かう。ギルドはこの大通りを真っ直ぐ進むと突き当たりにあるとの事でのんびり歩く。
大通りの両サイドは建物が立ち並びガラス張りの窓の向こうは商品が並んでいたりするから何かの商店っぽいな。賑やかで活気がある。
看板の文字は読めないが、絵も描いてある為だいたい分かる。
分かるのだが…読めないと不便だしなあ…
ん、言葉がそうだったように意識して目を使ってみるとどうなんだろう…
遠方を見るイメージではなく読むイメージで目に魔力を込める。
「おお!読める!読めるぞ!!」
そんな気はしてたので感動はそこまで無かったのだが、なんとなくこのワードを使ってみたかったのだ。
ここまで来ると、もはや何でもありの超便利みたいな印象だからね、魔法。
そんなこんなで衛兵に言われた通り突き当たりまできた。目の前の大きな建物がギルドだろう。
扉を開ける。
うん、イメージ通りだな。
ただ、残念な事に閑散としていてあまり人は多くない。
「こんにちは!どのようなご用件ですか?」
「こんにちは。登録をしたいんですけど…」
受付 と書かれたカウンターに行くと、気さくそうな受付嬢が待っていた。
衛兵に渡された紙をみせながらそのまま尋ねる。
「分かりました!ではこちらの石に手を当てて下さい!」
これは…衛兵の詰所で登録した登録の魔石…?
そう思いながら手を当てると先程同様、一瞬発光し登録が完了したようだ。
「はい、ありがとうございます!これで登録は完了しま……あれ?」
「どうかしましたか?」
「お名前が表示されてないんですよ。たまにある不具合なんですよね。申し訳ありませんが、もう一度手を当てて下さい。当てながら自分のお名前を念じて下さい」
あっ…
俺って今ノーネームさんじゃないですか!!
ステータスで見たNo nameの事をすっかり忘れていたな…どうするか。
前世の名前でも良いけど弥生としての人生は終わってしまったしなあ。
それにヤヨイとか日本の名前って珍しいのがテンプレの相場だし、「お前、転生者だろ?」とか人に絡まれても嫌だしな。せっかく新しい人生を迎えたのだから変えても面白いか…な?
と、なると……………そうだなぁ。前世で使ってたハンドルネームでも使うか。
リアルより下手すると呼ばれ慣れてるし。そう思いながら登録の魔石に手を置き名前を念じてみる。
HNは前世で流行ってたソシャゲーに登録する際、決まらなくて困っていたところ、その時一緒にいた悪友に名付けられ、以降SNSや置き型TVゲームでも使ってたから長い付き合いの名前だ。
「はい登録完了です、ベルゼさん! それからギルドの説明をさせて頂きますね!」
そう言われてギルドカードなる物を渡された。
これが身分証として扱われるが名前と冒険者ランク程度しか書かれてない。詳細は登録の魔石に載ってるのかな。多分。
受付嬢の話をあらかた纏めると
・魔物を狩ったり依頼を受けるのが冒険者ギルド。
・商売事を行う商人がいる商業ギルド。
この2つを纏めてギルドと総称している。
今俺が来ているギルド内の登録所で簡単に登録ができ、それがこの世界の各地にあるそうだ。
この大きな建物の中も、2分割し半分が冒険者ギルド、もう半分が商業ギルドとなっている。
一例だが分かりやすく説明すると、冒険者が狩った魔物を売買するのが商業ギルドの買取窓口。商人たちが街や村を移動する際に、魔物や盗賊などから守ってもらうために冒険者に依頼するのが冒険者ギルドの窓口となっている。
昔は別々の独立した機関だったそうだが、都合上楽じゃね?ということで今では合併し、ギルドとなっているそうだ。
とりわけ不仲でもなく、こちらのギルドが上だ!とかいう輩もいないそうだ。競争とか差別も無くお互いの為に非常に協力的であるそうだ。平和な世界である。
【冒険者ギルド】
定番のランクがあり、下からE、D、C、B、A、Sでランクに見合った難易度のクエストの前後1つまで受注できる。上位者になるにつれ高難易度のクエストに挑戦できる。
クエストの内容は、街の人が個人的に依頼する雑務から天災クラスと呼ばれるドラゴンなどの討伐クエストまでと幅広くあるが、多くは魔物の討伐や護衛が主な依頼となる。
【商業ギルド】
元は商人達が組合として作ったのが始まりで、現在でもその役目を持ちつつ冒険者からの魔物の素材等の買取まで行っている。基本的に商人はギルドに所属する事で正規の販売店として商売ができるそうだ。逆に登録してない者はモグリとして扱われ客からも敬遠されがちだそうだ。
こんなところが受付嬢さんから教わった内容だ。概ね予想通りではある。読んでて良かった異世界転生物。
「やっぱ身体動かしてお金稼ぎたいから冒険者に挑戦してみて怪我したり才能がなかったら商人になろうかな」
前世もそうだったし。デスクワークをするより身体を動かして仕事をしたいと転職前も後もそういう仕事だったな…
「分かりました!特にギルドを変更するのに必要な手続きはありませんが、もし商人になる際は一声かけてくださいね!この正規取扱店の看板をお渡ししますので!」
そう言われて看板を見ると、ここに来るまでに多くの店で見た看板だった。なるほど。
とりあえず今のところ商売をする予定はないので、冒険者として活動しながら魔物を狩った際に商業ギルドにお世話になる感じかなあ…
「分かりました。そういえばこの街に来る道中でモンスターを倒したんですけどこれって換金とかできますか?」
「えっ…この大きさだとゴブリンソルジャーとかですか?冒険者登録の前にモンスターを狩るほどの実力だったんですね…!もちろん商業ギルドの買取窓口で換金できますよ!」
「ありがとうございます。それと最後にオススメの宿とか教えてもらえますか?」
「新人冒険者さんにオススメの宿は何件かありますけど、私個人的には "夜明けの宿" がオススメですね!場所は、ギルドを出て右に、突き当たって左に曲がってすぐのところですよ!」
「ありがとうございます!」
とりあえず一通りギルドについて説明を受け、問題なくゴブリンの魔石も全部で銀貨5枚に換金できた。
やはりモンスターの素材も売れるようで、焼かずに持ってこれていればもう少し上乗せされたようだ。
無事換金も終わり教わった通り、夜明けの宿に辿り着くことができた。もうすっかり夜になってしまった。
「すいませーん、今日泊まれますかー?」
「はいはい、泊まれますよ!1泊銀貨1枚、ご飯は1食で銅貨4枚よ」
「とりあえず2泊で、ご飯はその都度でも良いですか…?」
「大丈夫だよ。それじゃあ鍵はこれね。ご飯とか何かあったら声をかけてね」
そう言われて銀貨2枚と部屋の鍵を交換し、足早に部屋へと向かう。とにかく今日は色々な事があり過ぎた。少しでも早く横になりたかったのだ。
「部屋は狭くもなくて良さそうだな。掃除もちゃんとされてそうだし」
幸いにも当たり宿だったようだ。
ギルドの受付嬢さんに感謝である。
「本当に色々あった1日だったな。明日からも大変だろうけど頑張って生きよ…う………zzZ」
ー ステータス ー
Name ベルゼ
Lv. 3
HP 752/1520
MP 1102/1863
- 属性 -
- 固有スキル -
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