第14話 - 従兄弟 -
第14話です。
ブクマ、高評価ありがとうございます!
日に日に増えるのが本当に嬉しく思います…!
誤字脱字や稚拙な文章なのに大変恐縮ですが、めっちゃやる気になれるのです。 今後ともよろしくお願いします!
「よっと。しかしこの街も人が多いな。こんなに集まるのか。」
ベルゼは高台までやってきた。
そこは街を見下ろす事ができる櫓みたいな所だ。
「肉眼ではまだ見えないが、本当に1000体くらいいるなこれは…」
さて困った。このまま指を咥えてみているだけだと折角新たな拠点にした街が壊滅してしまう。それどころか多数の被害も出るだろう。できる事なら助けたいし、魔物も街に入り込む前に倒したい。
だが、どう考えてもそれをするには目立つ。魔物を全滅させられなかったとしても、絶対に目立つ。
エリースの二の舞になりかねないが、流石にあの時より状況は緊迫している上に想定被害が甚大だ。
「まあ仕方ないか。」
面倒な事になったらまた街を移動しよう。
そう考えていると
「うわっ、誰だお前!」
「あ、勝手に入ってすいません。俺は冒険者です」
「なんだ冒険者か。知らない顔だったから驚いただけだよ。俺は衛兵のカイムだ。ここは観光スポットだから出入りも自由だしな。と言ってもこの非常事態だから観光どころじゃないけどな」
「押し寄せてくる魔物がどの位なのか見たかったんですけど…それにしてもこの街の人は多いですね」
「ああ。冒険者も多いが、この数の大半は俺たち衛兵だな。あそこ光る鎧を着てるのがいるだろ?アレがこの街の衛兵隊長、サッゲン隊長。今回のスタンピードの纏め役で、俺の兄貴だ」
「お兄さんなんですか、凄いですね」
「兄貴はな。魔法と剣の才能に恵まれてるからな。それに比べて俺は……」
あ、なんか地雷踏んだなこれ。
「ま、まあ…それより今は魔物ですよ」
「そ、そうだな… 今までこんな数のスタンピードは初めてだ。Aランク冒険者もいない今、間違いなくアルスローは壊滅するだろうな」
「なんでAランク冒険者はいないんですか?」
「俺もよく分からんが、たまたまクエストで街を出ている者もいるらしいが、大半があるクエストに向かって消息を絶っているそうだ」
「ああ、謎の貴族だかの…」
「そうだ。簡単なクエストの割に報酬金が良いからと挑んだものの、全く帰ってこない者が続出したから秘密裏にAランク冒険者を中級ランク冒険者として送り込んだものの、そいつらも帰ってこないらしいんだ」
「ふーん。…やけに詳しいですね」
「ああ、この際だから言うがもしこのスタンピードを生き残っても誰にも言うなよ」
「はい」
「そのAランク冒険者達の失踪はどうやらアウストロル男爵家が関わってるかもしれないんだ」
「アウストロル男爵家?」
「ああ。この街2番目の勢力だな。アルスローを治めるアルスロー侯爵家を妬んでいるんだ。我が家こそ統治者に向いていると」
「あー面倒ですね」
「ああ、間違っても街中でこんな事言うなよ。不敬罪ですぐ捕まるからな」
「気をつけますね」
「そのアウストロル家の陰謀でAランク冒険者が失踪したっていうのは衛兵の間でもっぱらの噂なんだ」
なるほど。
Aランク冒険者失踪と、このスタンピード何か関係があってもおかしくはないな。
そういえばリエルもAランク冒険者だったな。
もしかしたら彼女も渦中にいるのかもしれないな。
「スタンピードが見えてきたな」
アルスローを囲む外壁の遥か向こうに黒い波となってこちらに向かってきているのが目視できた。
ベルゼは決心を固めカイムに言う。
「本当はのんびりしたかったんだけど目の前で蹂躙されるのも嫌だし、ちょっと俺も戦ってきますね」
「戦うって言ってもランクは…… お前何を!!?」
塔の手すりに足をかけたベルゼはそのまま飛び降りる。
「ランクはDですよ。それじゃあ行ってきますね!」
カイムは30年の人生で一番驚いた。
先程まで話していた少年なのか少女なのか分からない自分よりも遥かに若い子が、この塔から飛び降りた瞬間に心臓が止まりそうになった。
が、その彼は落下する事なく、ランクDと言い残し飛んで行ったのだ。幻の飛行魔法で。
この世界のパルミュラーテにおいて、鳥や魔物や、鳥系の獣人は飛ぶ事ができる。
だが、人間は自力で飛行は出来ない。ダンジョンでドロップする高価な魔道具があれば飛ぶ事は出来ると聞いている。あの彼は普通に人間に思えたし、年齢から言って高価な魔道具を持ってはいないだろう。一体何者なのだ。
街中で飛んでしまったからにはもう面倒事からは逃げられない。そう諦めてカイムの兄貴、衛兵隊長のサッゲンの元へと飛ぶ。
そんなベルゼの姿を見た人々は騒ぎ出す。
騒ぎを気にせず飛び、サッゲンの目の前に降り立つ。
集まっている多くの者達は何が起こったか信じられないといった表情でベルゼを迎える。
「貴様っ!何者だ!!」
部下と思われる1人がサッゲンを庇うように前に出る
「おっと、いきなり失礼しました。俺は冒険者のベルゼと言います。カイムさんからお兄さんでスタンピードに対応する纏め役だと聞いてきたんですが」
「貴様、出鱈目ではないのか!さてはかの家の…」
「待て。落ち着け」
「はっ、失礼致しました」
「俺は非常に驚いているんだ。この世界に魔道具も持たず飛行する人間がいるとは」
「それに関しては企業秘密って事で見逃してもらえませんかね…?」
「ははは!こんな時に悠長な奴だ。それで何用だ」
「正直あんまり目立ちたくなかったんですけど、あの数の魔物を見て、目の前で街の人が殺されたり被害を受けるのは嫌だなって思って来ました。俺ならもしかしたら少し時間を稼げるかと思いまして」
「言いたい事は分かる。だが、それはここに集まった者は皆同じ。飛行魔法を見たと言っても、お前にあの大群をどうにかできる力があるとは思えない」
「それはごもっともですね。僕はそれなりに魔力があります。が、今ここで大群をどうにかできる力を見せろと言われても難しいのが本音ですね」
「ふむ。…おい待て!お前ベルゼと言ったか?」
「そうですけど…?」
「一つ聞くが、もしかしてエリースからアルスローに来たか?」
「そうですね、色々あってエリースからこの街に来ましたね」
「そうか……お前が…か。」
「???」
「ゾルデは俺の従兄弟だ。あとは言わなくても分かるだろう?」
「!!!」
ゾルデは、ベルゼが元いたエリースの街の衛兵隊長である。
エリースにある西の森消失事件は3週間経った今となっては、このアルスローにも届いている。ましてや、その消失事件に不運にも立ち会っていたゾルデの従兄弟がこの目の前に立っている男だというのだ。
「あはは…そのベルゼです……」
「兄者はお前の事を褒めちぎっていたぞ!本当に珍しくな。その噂の張本人がアルスローの危機に立ち上がってくれるというなら助かる!」
「隊長!こんなどこの馬の骨とも知らないガキを!」
「落ち着け!お前…少し前にエリースから救援が届いていたが、すぐに取り消しになった件が、あっただろう?」
「そんな事もありましたね…ですが、今何故それを!」
「落ち着けと言っているんだ。救援が不要になった原因は覚えてるか?」
「なんでも新人冒険者が森ごと高レベル魔物を消しとばしたと……まさか!!?」
「そう、そのまさかだ」
「ですが、あれは噂話で……」
「兄者がその現場にいて、その光景を見ていたそうだ」
「あのゾルデ様が!!!??」
「ああ。兄者は嘘や誇張をする男ではない事をお前らも知っているだろう。ならば俺はコイツを信じようと思う」
そこへ新たな隊員が息も絶え絶えに走り寄ってきた。
「隊長!魔物の群れが近づいてます!!!」
「ぐっ…!もう来たか。ベルゼ、お前ができる限りでいい。時間を稼いでくれ!」
「分かりました!」
「頼んだ!他のやつはBプランだ!魔法を使える者はベルゼのカバー及び、撃ち漏らしを叩け!剣を使う者は街中に入り込んだ魔物の討伐だ!覚悟を決めろよ、俺たちのアルスローを蹂躙させるな!こちらが蹂躙してやるぞ!!!!」
『『『『うおおおおおおおおおお!!!!!』』』』
サッゲンの言葉に怒号が飛び交う。
やはり目立つ事になってしまったが、これだけの人達の為に力になる事を選んで良かった。
ベルゼはそう思い、外壁の上へと向かうのであった。
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次の投稿は明日になります。
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