第110話 - 対魔族(2) -
あと数話で本章終了が長引いて参りました。。
いやでもあと数話なんです…
なるべく早く投稿します!
ティアが青白い炎を至近距離で受けた時は、冷や汗が走った。正直、炎精霊の加護なんて忘れてから、かなり焦った。この時たまにはステータスチェックはしようと心に決める。
…なんて余裕をかましてる場合ではないんだよっ!
このおっさん、スキルか何か分からないけど使い出した途端、青白いオーラが溢れ出してるし、今までが比にならないくらい強いんだが!
魔力を身体強化にかなり振り分けても何発かに1発は食らってるんだが、それがマジで痛え!
気を抜けない敵だけど、リエル達が気になってしまう。魔法が使えない今、こちらから動くには手札が少ないし、とりあえずの防戦。
どうにか隙を作り、まだ見せていない魔眼と黒刀の刀状態で状況を打破したいベルゼ。
ベルゼが着ている常闇のロープは、魔法なら全属性に耐性があり、物理に関しても防御力極大アップの代物。
致命傷には至らないが、それでもかなりのダメージが蓄積されている。
「よそ見をしてる余裕があるとはなッ!殴拏豪昇拳ッ!!」
なんてことはない。ただの物凄いアッパーだ。ベルゼも身体強化を施した目では捉えている。だが、物凄いアッパーは、ベルゼが咄嗟に構えた杖で相殺できるどころか、その衝撃で吹っ飛ばされる。
リエル達の方が気になってしまった故に、杖に込める魔力を見誤る結果だった。
「いってて…」
吹き飛ばされたものの、受け身を取りすぐに着地し、アガレスを視認する。
と、そこへリエルとティアが重力魔法で張り付けられ、身動きが出来ないティアに、エターナルイデアが突き立てられる。
ピキッ
既にアルノルトが討たれた時から漏れ出していたドス黒い感情が更に漏れ出す。
そして次の瞬間、リエルが何度も蹴られる様子が目に入る。
ビキッ
怒りは言葉にならず、血の滾った頭は思考を止めていた。
瞬間的に破源の瞳を発動する。スローモーションの世界で黒刀を杖状から刀へと変化させ、一瞬にしてアガレスへと肉薄し、その首へと突き刺す。
アガレスはこの瞬間、先程までの手を抜いた状態であれば確実に死んでいただろう。だが、現在纏っている青白いオーラがそれを許さなかった。
"青闘防叡"
それはアガレス唯一の特殊スキル。全魔力のほぼ全てを代償にする事で、一定時間攻撃力、防御力、感知力、スピードが強化される。それは通常時の約3倍にもなる、超身体強化である。
青白いオーラは強化された防御力の一つで、攻撃が加えられると瞬時に受け流す作用が働く。言わば自動防御となる。もちろん完全に受け流せる訳ではないのだが、かなりの被弾を防ぐ。
横薙ぎではなく、首の一点を狙った突き。ベルゼの渾身の一撃は、その効果によって少し受け流される。
「ぐううう!」
全てを受け流す事はできず、首ではなく既に潰された右腕の上、鎖骨辺りに突き刺さる。
「...........」
「その眼、隠しておったのかッ!」
腕を潰され、鎖骨を貫かれ砕かれ、残っている部分は完全にダラリと力なく垂れ下がるが、もう片方の手で突き刺さった刀身を握り、身体を分断させまいと押さえ込む。
「忌々しい邪眼を隠しておったとはなッ」
ベルゼにその声は届かない。
ティアが愛剣で刺され、リエルが執拗に蹴りを入れられている。
怒りが沸点に到達し、黒い魔力が漏れている今のベルゼはもう周囲の者の声など届くはずがなかった。
「ねぇ怒ってたところでどうにかなる訳ないでしょお?」
少し離れたところから声が聞こえ、身体が重くなる。
リノラスの重力の足枷だ。
自分にかかる重力だけが何倍にもなった様に感じられる。
重力の足枷で動きを止め、身体強化した脚で散々蹴られて横たわっているリエルの耳元で何か囁いた後、こちらにも重力魔法をかけたのだ。
「ぬははッ!どうしたッ!今のが最後だったのかッ!」
ベルゼに重力魔法がかけられた事を知る由もないアガレスは、再び拳や足の応酬をベルゼに浴びせる。
今までとは違い、重力が何倍にもなったベルゼは、その全てを被弾する。
「殴拏豪華拳ッ!!」
豪勢な技の名前だが、物凄く強い左手ストレートだ。アガレスも決着をつけにきたのだろう、渾身の左ストレートがベルゼの顔を捉える。
「...........」
その左ストレートに刀状態の黒刀を合わせる。
今までであれば杖状態のため相殺されただろうが、今は刃。そのストレートを振り切った瞬間、腕が縦に2つとなる。
アガレスは咄嗟に技をキャンセルし、腕を引き戻す反動を利用して後方へと飛び下がる。
着地した瞬間、アガレスの右胸には飛来した黒刀がズブリと突き刺さる。
ベルゼが左ストレートに合わせた黒刀をそのままの勢いで投げたのだ。
「ぐぁああッ」
猛烈な痛み。鎖骨を砕かれ、肩からの感覚がない。いや、それよりも追撃が来るッ!と、刀を投げた男の方を見やると、既に目の前にはいなかった。
その男は自身にとどめを刺す事もせず、一目散にリノラスの方へと向かっていたのだった。
本日もありがとうございました。




