第11話 - アルスローの街 -
11話目です!
ブクマ高評価ありがとうございます!
日に日に増えるのが本当に嬉しく思います…!
誤字脱字や稚拙な文章なのに大変恐縮ですが、めっちゃやる気になれるのです。 今後ともよろしくお願いします!
どうしてこうなった。
俺たちはいつも通り商人の馬車を襲って、上手い事稼がせてもらった。そこまでは良かった。
アジトで今日の成果を肴に呑んでいた時だ。この子供の皮を着た化け物が突然現れたと思ったら瞬く間に俺たちは全滅。こうして縄で縛られている。
俺たちはこれから殺される。もしくは街に犯罪奴隷として売られよう。売られたら最後、馬車馬のように働かされ結局は死ぬだろう。俺に力があれば。いやこの化け物は、どんなに力を持った敵でも一瞬にして屠るだろうな。
ああ、真面目に生きていれば。
あの時道を踏み外さなければ。
そんな思いが頭を巡る。
「じゃあ後はお任せしますね。エリースについていけなくてすいませんね」
「いえいえ!盗まれた品と馬車を取り返して頂いただけでなく盗賊を犯罪奴隷として売ったお金まで頂けるなんて…。 というかむしろ良いんですか? 盗賊の持ち物は討伐した者に権利がありますし、犯罪奴隷として売ったお金も倒した者の物になりますけど…」
「ああ、気にしないでください。金銭には困ってませんし、一応俺も貰ってますからね!それにアルスローに向かってる最中なので盗賊を連れて歩くのは面倒になってしまうので」
「それはそうですが…」
「なら、機会があったらで良いんですけど、エリースの武器屋は良い品揃えだと、武器を探してる冒険者に言ってください」
「分かりました。そうさせて貰いますね!」
エリースを出てどうしようかと考えた結果、エリースより大きい街であるアルスローを思いついた。
さっそく飛行魔法で向かっていると、馬車の残骸に項垂れる数人を見つけて降り立つ。
話を聞くと、ギルド登録している商人でアルスローからエリースに向かっている最中だったとの事。
その道中で、盗賊に襲われ商品を奪われ馬車の一部を破壊され立ち往生していて困っていた所だそうだ。
同じギルド登録者として極悪非道な盗賊を許す訳にはいかない! というのは建前で、もう少し対人戦を練習したかったのだ。
探知魔法に引っかかった、崖に掘られた穴に20人の反応を頼りにそこへ行くと、酒盛りをしている盗賊がいたのだが………
「全く練習にならなかった…」
あっという間に全員殴り飛ばして気絶させてしまい、先程に至るのだ。
深々と頭を下げる商人に手を振り、姿が見えなくなるとまたフライで飛ぶ。
このままいけば、夕方にはアルスローにたどり着けるだろう。
幸い街道沿いにあるとの事なので、迷う事も無さそうだ。
この世界には盗賊と呼ばれる奴らが、少なく無いそうだ。見つけたら片っ端から練習台になって頂こう。
♢
「あれがアルスローか!」
眼前に見えてきた大きな街…というよりは都市だな。
魔力は全然問題なかったが、初めての長距離飛行という事で、休み休み飛びようやくたどり着いた。
ちなみに食料はエリースを出発する前に泊まっていた宿である"夜明けの宿"の女将さんのメーベルさんに頼んでいたのだ。
作ったのは主人のペドラさんだが、すごく美味い。何食分か作って貰い "収納"にしまっていたのだ。
"収納" は亜空間に直結していて、質量や大きさ関係なく入る。ただし、生きたものは入らないようだ。亜空間内は俺のイメージ通り、時間の経過がなく、食べ物も出来立てがいつでも楽しめるのだ。 異世界万歳!具現化万歳!
そうこうしているうちに、アルスローが近くなってきた。流石に直接乗り込むとまた騒ぎになってしまうだろうと判断し、手前の街道に着陸し門まで歩く。
「こんにちは。身分証を拝見します。
「こんにちは、お願いします」
「えっ、その若さでランクDなんて、凄いですね! ありがとうございます、お返ししますね。ガヤート王国東部最大の都市アルスローへようこそ!」
「ありがとうございます。ギルドの場所ってどこですか?」
無事アルスローに入る事ができた。とりあえずギルドに向かうことにした。
ここアルスローは、人間の王が治めるガヤート王国の東部最大の都市らしい。高さ10mくらいの頑丈そうな外壁で囲われている。
街の大きさや人の多さもさる事ながら、エリースとはかなり規模が違う。
「まさに都会って感じだなあ」
入り口の衛兵に聞いた通りギルドに向かう道中立ち並んだ屋台で買い食いを楽しむ。お祭りみたいで楽しい。
この世界の食べ物は前世で見た事がある物もあれば初めて見る食べ物もある。
技術がそこまで進歩してないのだろうか、前世のコレが食べたい!と思っても難しいようだ。
だからと言って俺は料理の知識は皆無だ。なぜなら前世では料理があまり出来なかったから。
故に食べ物パンデミックを起こす事は出来ない。
その土地の食べ物を食べながら新たな街を散策する。
前世では旅行が趣味だった俺は、ワクワクしっぱなしなのである。
大通りを一通り食べ歩き終え、ギルドに到着する。
扉を開けると中にいた冒険者達の好奇な目。と、共に聞こえるように言ってるのか?と思うようなヒソヒソ話。どうやら同じギルドでも、エリースとは違う雰囲気だ。
「こんにちは!今日はどんなご用件ですか?」
「今日初めてアルスローに来たのでどんな依頼があるのかと思って来ました」
「分かりました!ではギルドカードを拝見させてください!」
手渡されたカードを見た受付嬢は驚く。見るからに自分より年下の、それも自分より可愛いと思った子が男…だなんて……
「どうしたのヘレン?」
ギルドカードを持ったままフリーズしている同僚に気がついた隣の受付嬢。
「えっ!その紋様は! しかもランクDなの…!?」
目に入ってきたランクに驚く。このギルドカードの左上に記されている紋様はエリース家友好の印だったからだ。
つまり、『この者に何かあればエリース伯爵が黙ってない』という事だ。
ちなみにまだこの事実をベルゼは知らない。というのもDランクに更新する際、エリース伯爵ことルクハルトがギルドに手を回し、ギルド長フェストと組んでギルドカードにこの細工を施していたからだ。
その事を知らない……というか異世界に来て数日しか経っていないベルゼにはそういう事が出来る事すら知らないのだ。
次にランクだ。一般的にDランクは初級よりは上。
だが、高ランクではないにしても、その若さでDランクだとは…。受付嬢は一瞬、伯爵家の者か?と思ったがエリース家は小さな娘がいるだけだし、何より目の前の少年の装いと雰囲気が冒険者のそれであると長年の経験からそう思った。
受付嬢の声が近くにいた人も聞こえたようで、同じような反応をする者、無関心を通す者、面白そうな反応をする者がいる。
「失礼しました。Dランクで受けれるクエストですと、こちらですね」
隣の受付嬢から小突かれてフリーズから立ち直った、ヘレンと呼ばれた受付嬢から受けられそうなクエストを聞く。
・ファングウルフ5匹の討伐 D
・サンダーボ 5羽の討伐 D
・スカルファングの討伐 D
・ファイヤーウルフの討伐 C
・ゴブリン隊の偵察 C
興味が湧いたのはこのくらいか。他はレアな薬草の採取だとか、遠方の街までの護衛だとかだったからだ。
旅目的ではあるが、来たばかりの街を楽しみたいし、魔法の考察も兼ねて実践で戦いたいのだ。
とはいえまずはDランククエストで様子見をしようと思う。Dランクになったものの、この世界に来てからはあまり戦闘はしてない。迂闊にもCランククエストを受けて死んでしまったら話にならないからな。
と言うわけでファングウルフ5匹を受注し、説明を聞く。
「ファングウルフは狼に似た猪です。ファングには珍しく群れて森に住んでます。群れなので油断せず戦ってください。あ、討伐証明は尻尾です」
「分かりました」
「以上で終わりですが他には何かありますか?」
「あ、オススメの宿ってありますか?」
「うーんそうですね、マップのこの辺にある"夕暮れの鐘"と言う宿が、ご飯も美味しくてその割に料金が安くて有名ですね」
「分かりました。ありがとうございます。」
まずは宿屋を取り、明日からクエストに向かおう。
そう思い、受付嬢のヘレンに礼を言いギルドを後にするのだった。
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