第109話 - 対魔族 (1) -
17万PVありがとうございます。
今週はこの話と、もう1話投稿したいと思ってます。
リノラスが一度死んでからというもの、戦局は大きく魔族側に傾いた。
アガレスは青白いオーラを纏い、ベルゼに殴打や蹴りを浴びせている。
ベルゼも黒い魔力を纏い、その一手一手を杖で防いでいるが、魔法が使えない今、3回に1回は被弾し防戦一方の状態。明らかに不利な戦いに見える。
当のリノラスはというと、対峙するリエルとティアにより既に71回斬り伏せられ、特殊スキル"不老複命"によって72回目の復活をしていた。
「はぁ〜また殺されたわぁ。いい加減諦めてくれないかしらぁ?」
「しぶとい」
「キリがないっ!」
剣の攻撃では死にきらないリノラスを相手にしているリエルとティア。もちろん特殊"スキルサンライトウォーカー"で不意を突いて斬り伏せるだけではなく、光の魔力を剣に纏わせて斬ってみたり、ダメ元で魔族に効果がありそうな光魔法を使ってみたりするのだが、当然、剣が纏う光の魔力は不死に効果はなくただ斬り伏せるだけで、魔法無効の効果範囲内のため、魔法は封殺される始末。
それまで復活しては即座に斬り伏せ、復活までの少しの間で作戦を練り、復活しては斬り伏せる事を繰り返していた為、リノラスに攻撃させる隙を与えては来なかったのだが…
「光の魔力が無くなる」
「私も、魔力回復のポーション無くなった」
当然、生半可な攻撃は上級魔族には効かない。一手一手を全力で攻撃してきた2人は魔力やスタミナが切れかかり、肩で息をしている。
ティアの剣、エターナルイデアは魔力を注ぐと例え、ヒビが入ろうが折れようが元に戻るに戻る剣。注がれた魔力を剣に纏わせる事によって、その属性攻撃が可能になる。
そのエターナルイデアに注がれた光の魔力も残量が乏しい。
リエルはというと、サンライトウォーカーを発動しっぱなしで、様々な光魔法を行使してみたり、ティアの剣に魔力を注ぎながら戦っていた為、魔力残量が心許ない。
「そろそろ諦めて欲しいんだけどぉ」
一方のリノラスは、この2人にはその不死性と魔力無効を突破する術がないと踏んで、2人のスタミナと魔力が尽きるのを狙っていた。
殺されるのを甘んじて受け入れていた訳ではない。単純にリエルとティアの攻撃によって復活後即殺されていたが、人間いつかは体力も魔力も無くなると知っているからだ。
サンライトウォーカーで動きを読まれないように瞬間移動する。その変則的な動きにリノラスは未だに対応できていない。
リエルが牽制翻弄し、その隙をついてティアが一太刀入れる。リノラスの意識がティアに向いた途端、今度はリエルの剣が横薙ぎに振るわれる。
「もぅそろそろ面倒になってきたわねぇ」
その一言の直後、スタミナが切れかかっていたティアの動きが止まる。正確には止まってはおらず、動きが物凄く遅い。スローモーションを見ているかの様だ。
「!?…ティア!」
「体が思うように動かない」
ギリっと歯噛みするリエル。恐れていた事が起こってしまった。
不死性を持っているリノラスに隙を与えて好き勝手やられた場合、圧倒的不利になるのは目に見えていた。ゆえに、復活後即殺しリノラスが攻撃出来ない状況を作っていたのだが、ここに来てティアのスタミナが切れてしまい、そこを突かれた形だ。
「よくもワタシを嬲り殺してくれたわねぇ」
そのゆったりとした口調では伝わり難いが、リノラスは散々自分を殺した2人に当然怒りを覚えている。不死に近いとはいえ、痛覚はある。数十回も殺され、痛みと苦痛を味わったのだから当然だろう。
肉薄していた所にスピードが遅くなるデバフ魔法をかけられたティア。なす術など無くリノラスの掌がティアに向けられる。
「させないっ!」
迫る颯煌剣。が、その刃はあと一歩の所で間に合わない。
「滅尽の青炎」
0距離で放たれた青い炎の巨大な塊。ティアはなす術なくその業火に直撃、青白い炎に焼かれ、衝撃で吹き飛ばされる。
魔法発動に間一髪間に合わなかった颯煌剣はリノラスの首を分断し、胴体は転がっている。
「ティア!!!!」
斬り捨てた首など目もくれず、残り少ない魔力でサンライトウォーカーを発動し、ティアに駆け寄る。
「…ん、大丈夫」
横たわったティアは服は所々かなり焼け、傷だらけの肌が露出しているが、身体は至って無事だった。
「良かった…!」
「炎精霊の加護」
幸いな事に放たれた魔法は炎属性。以前ライアダム山で出会った炎精霊から加護を施されていた為、ダメージはなかった。が、咄嗟の事でその事を忘れていたリエルには心底ショッキングな場面だった。
「身体、思うように動かない」
リノラスから受けたデバフは解除されていない。どうしたら良いか、皆目見当がつかなかったリエル。このままでは…そう思っていた時。
「炎が効かないなんて思わないわよねぇ」
リエルの目には復活したリノラスが呪文を唱えている姿が映る。
「くっ!」
「もう遅いわよぉ。重力の足枷」
「「ぐっ!!」」
途端に身体が重くなる。まるで見えない何かが身体に乗っかっているような。
「アッハハハハ!!やっと虫どもが大人しくなったわねぇ!」
「ちっ」
舌打ちをするティアだが、デバフを掛けられた上で重力魔法で縛りつけられている為、殆ど身動きが取れない。
「さぁて…今までのお礼はどうしようかしらぁ」
身動きの取れないティアからエターナルイデアを奪い取り、その無防備な背中へと突き立てる。
「ぐぁあっ!!!!」
背中から突き立てられた剣は身体を貫通し、そのまま地面へと突き刺さる。デバフと重力魔法に加えて完全に動けなくなってしまった。
急所を狙わなかったのは、その残虐性か、嬲り殺すためか。
「ティア!」
「アンタにもお礼しなきゃねぇ!」
ティアとは違い、デバフがかかっていないリエルは重力魔法に逆らいながらティアへと這いずり寄ろうとするが、リノラスの蹴りが入る。
「ぐっ」
なす術なく蹴られたリエルは、息を整えながら視線をアガレスと戦っているベルゼへと向ける。
「…あらぁ。良い事思いついちゃったわぁ」
憎悪の笑みを浮かべたリノラスはリエルの視線の先にいる少年へと目をやるのだった。
「な、なにをするのっ!」
「アンタの大事な仲間を目の前で殺してやろうと思うのよぉ。どんな殺し方にしようかしらぁ。特等席で見せてあげるわねぇ」
リノラスの表情は既に悦に浸っていた。
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