出会い
僕は君を知っている、だって君は僕を…。
僕には何もわかなかった。
僕がこの世に生まれた理由すらわからなかった。
君に出会うまでは…。
3月、僕は中学を卒業し
4月、高校に入学した。
ただそれだけだった。
中学で友人がいたわけでもなく、日々時間を消費し続けるだけ。
着る服も困らず、食べ物にも困らず、住むところも寝るところもあった。
ただ、いつも1人だった。
もう孤独感はない、むしろ1人の生活に慣れていた。
寂しさもなく、その生活を変えようともしなかった。
5月、部活に入っていなかった僕は帰りのホームルームが終わると、すぐに教室を出る。
いつもと変わらないはずだったのに、少しの変化にも驚いてしまう。
下駄箱で靴を履き替え、駐輪場に行き、自転車に跨り漕ぎ始める。
校門を抜けた辺りで後ろから声が聞こえた。
「…って……待って!」
僕ではないだろうと、振り向かずにペダルを漕ぎ続ける。
「……くん!ちょっと待って!」
僕は慌ててブレーキをかけ振り向くと、走って追いかけてきていたのだろう、ハァハァと膝に手をやり下を向いている女の子がいた。
「やっと止まってくれた!」とまだ息が整わないまま顔を上げ笑ってみせた。
その子に見覚えがある。同じクラスのクラス委員長だった。僕は名前を思い出そうとして諦めた。他人に興味のない僕は名前を覚える気はなかった。
「何か用?」声をかけられたことへの驚きを隠すように低めのトーンで尋ねる。
「タタラくん、君は「………………」。」
返ってきた質問に少し口元が緩んでいたのは間違いなかったようだ。