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零王ーレイオウー  作者: ぐるこさみん
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人民不可 2


この国は、人という存在を四つのカテゴリーで分類している。皇族、華族、隷族、人民不可の四つである。

言葉から連想できる通り、皇族は、国を納める皇帝の家系を差し、華族は皇族を支える事を許された家系に与えられる称号である。隷族は、華族に仕かえる使用人、分かりやすく言い換えるなら奴隷に当てはまる。

最後の人民不可は、こちらも言葉の通り、人としては勿論、奴隷や愛玩具としてすら扱われる事はない、四つ目のカテゴリーとして分類される事さえ、烏滸がましい存在である。

分かりやすく四つと言ったが、この国には三種類の人しか存在してはいなかった。

透はこれらのカテゴリーの内、華族。ではなく隷族に当てはまる。

透自身もまた、買われ、飼われた存在だった。いや、買われたというと少し語弊がある。透が隷する切っ掛けの出来事に金銭は絡んでいない為、拾われ飼われたといった方が適切かもしれない。

いずれにせよ、例え隷族階級であったとしても、隷する華族次第では、今の透がそうであるように、華族と同等の生活水準を得る事も可能だった。

金持ちに飼われた犬や猫が、貧乏人の生活水準を超えるような、そんな感覚だ。

そういった意味では、透の運は良かった。近江文博に隷する事となった過程はどうあれ、透の置かれている環境は、多くの隷族は勿論、下手をすれば華族よりも恵まれているからだ。

隷族の情報を誰よりも持っている事は勿論、役所や不動産から華族の情報の大半を得ている透であるからこそ、それは確信を持って言う事の出来る事実だった。

透は恵まれている。華永区にある屋敷を自由に闊歩し、仕事で得る金も凡そ自由に使えている。行動範囲や門限など、場所や時間に対する制約も一切ない。

透は隷族でありながら、何一つとして縛られてはいなかった。生まれながらの首輪が付けられていたとしても、首輪に繋がれる鎖がなければ、隷族であれ基本は自由だ。

だからこそ透は、例え縛られていたとしても、縛られてはいなかった。

「何、難しい顔してるかな?」

 PC画面を眺めながら、そんな事を思考していると、すぐ近くのソファで寝転がりながら漫画を読んでいる女が、透に話し掛けてきた。

 話し掛けてきた女の名前は白雪未来。

未来は役所の書類上、透の家族で姉となっているが、隷族である透とは違い、正真正銘の華族で、文博の実子だった。

長く綺麗な黒髪に、黄金比で描かれる整った目鼻立ちは、美人に該当し、華のある一族という肩書や階級が、違和感なく当てはまる。スタイルも抜群であり、だらしなく着られた白いシャツの胸元からは、大きな谷間が見えていた。

「いつもこんな顔だろ」

「そう言わると、そうかな」

 未来は手元に置かれていた、ポテチの袋に手を突っ込み、ポテチをかじる。

ポテチを持たないもう一方の手には、新品の漫画が手放される事なく持たれており、未来はポテチを掴んだ手で堂々と漫画のページを捲った。

 ワンピースから見えるたわわな胸元よりも、透はこの一連の動作に目がいった。

「そして、私と話すと更に怖い顔になったかな。何でかな?」

「これは、ただの嫌悪だ」

 眉間にさらに深い皺が刻まれるのは、会話の際には決まって、未来がポテチ片手に漫画を読んでいるからである。

ポテチを食べながら、新品の漫画を読むなんてあり得ない。こう考える透は、綺麗好きのA型であり、ポテチの油を、ページを捲りやすくする為の潤滑油。位にしか思っていない未来は奔放なB型だった。

血液型占いやそこからくる相性など、透は一切信じてはいないが、透から見て白雪未来は全てにおいて相性最悪であり、苦手な人物だった。

「少し、傷付いたかな」

「こほっ、少し位は、そうであって欲しいもんだ」

「透は、人を傷付ける事が趣味かな?」

「そんな趣味はない」

「ふ~ん。是非そうあって欲しいかな」

 未来は会話をやめ、再び漫画に視線を落とす。

 透も青い光を放つPC画面に再び集中し、キーボードをカタカタと叩いていった。


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