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水曜日
久しぶりの長い残業を終えて部屋に帰ると、この時間はいるはずの美里の姿が見当たらなかった。
――あいつ、どこに行ったんだ?
コンビニにでも行ったのだろうと思い、ソファーに座った。
すると机の上に一枚の紙が置いてあることに気づいた。
そこには美里の字でこう書かれていた。
――実家の母が倒れて入院しました。看病のため、地元に帰ります。今の病状からして、当分の間は帰って来れそうにありません。ごめんなさい。また連絡します。
読み終えてすぐに気づいた。
美里は実家に帰ったから、今はもうここの住人ではない。
だとしたら今このマンションに住んでいるのは、十五人ということになる。
その時、玄関のベルが鳴った。
終




