【6】桜カーテン
昨日は一限目だけだから、早く家に帰って部屋の模様替えしたかったのにな……
日曜の昼下がり。
深緑色で縦縞のカーテンを外しながら心の中でそう呟いた。
新しく買った淡いピンク色のカーテンを付けると、部屋の雰囲気がガラリと変わった。
ピンクの背景色にそれとは違う明るさのピンク色の小花柄のカーテン。
春らしくて一目で気に入った。
「何かちょっと桜みたいかも」
桜は大好き。だから春が一番好き。ご飯茶碗も桜模様のを使っている。
「桜……あっ」
思い出してしまった。あの教室の中心でただならぬオーラを放っていた桜と龍のコラボレーション……
そっか、あのお方も桜が好きなのね!
「うぅ……やっぱりこれはプラス思考に考えるにはムリがあるよね」
吉岡君は何が好きなのかな……
「はっ!」
私ってば何考えてるんだろ。次はクローゼットを整理しなきゃいけないのに。
耳が熱くなったのかもしれないけど気づかないでおこう。
クローゼットには大学生になってから着るようになった服と、高校までよく着てたシャレっ気のない服が入り混じっている。
高校まではオシャレに全く興味がなかった。
大学生になった機に――少しでも可愛くなりたくて――振り向いてもらいたくて……
春休みに生まれて初めて若い女性向けのファッション雑誌を買って勉強した。
お母さんと行ってたお店じゃない所に行って、自分に合うのかドキドキしながら試着して、靴とかカバンも合わせて買って……
こうやって部屋の模様替えもして……
恋が私を変えた――ううん、それだったら一年前に変わっているはず。
恋と正面から向き合うことを決めた時。
私自身が変わりたいと思った時。
前に進もうと踏み出した時。
――変わる。
成長って言うのかもしれない。イメチェンって言うのかもしれない。大学デビューって言うのかもしれない。
でもこれが今の私であることに変わりないんだ。
付けたばかりの桜のようなカーテンをを開くと、春の風が顔を撫でた。
この窓から見える公園の桜の木は、もう、緑色の葉桜になっていた。
何があっても吉岡君への気持ちは変わらないだろう。