【62】百人のライバル!?
話そう。前にも話そうとしたことがあったけど、結局ずっと言わなかった。
尋ちゃんはよく何でも話してくれた。
今あいちゃんも胸の内を話してくれた。
話さなきゃじゃなくて、二人に話したい。
「私ね、二人にずっと言ってないことがあるの」
尋ちゃんもあいちゃんも私の目を見て聞いてくれている。
「……好きな人がいるの……ずっと、一年以上も前から」
二人とも好きな人って誰?とは追求してはこない。黙って優しい目で見てくれている。
「私は、高校の時から、吉岡君が好き!……なの」
二人は驚いた顔をしている。
「そっか、望美ちゃん、吉岡君のこと好きなんだ」
「そうなんだ〜……えっ、じゃあ藤枝君は?」
「今日、図書館で――」
「あ、全部言わなくていいよ。ああ、じゃあ、あたし望美ちゃんに余計なことしちゃったんだね」
「ううん。藤枝君とはこれからも友達として付き合えるし、藤枝君のおかげで気付いたこともあるし」
男の子の友達なんて小学生以来。好きになられたのなんて初めてだった。
今まで全然気付かなかった好きになられる方の気持ちを……
ずっと私は、吉岡君が好きだっていう自信が持てなかった。
好きなのに引け目を感じたり、諦めようとしちゃったり。
正面から向き合う方法が分からなくて、勇気がなくて。
藤枝君はちゃんと私と向き合おうとしてくれてた。
尋ちゃんの両手が私の肩をぽんぽん叩いた。
「よーし、あたしは望美ちゃんの恋を応援するよ!だからあたしのも応援してね、なーんてね」
「わ、私も何かできることがあるなら」
尋ちゃん、あいちゃん、ありがとう。本当にありがとう。
「なんたって、望美ちゃんの恋のライバルは何十人といるしね」
へぇっ?
「うーん、多分百人以上はいるんじゃないかな?」
ひゃ、百人!?
「頑張れ!ううん、頑張ろうじゃないか恋する乙女!」
テンションが上がったのか、尋ちゃんは外に飛び出した。
通り雨がちょうど止んだ。
「あっ、そういえば尋ちゃん。今日って確か華道部あるんじゃ──」
尋ちゃんのしまった!っていう声がしたかと思うと、尋ちゃんはあいちゃんの片手を引いて走り出した。
あいちゃんのもう片方の手が私を掴む。
体が引っ張られて、私も二人と一緒に走る形になった。
百人のライバルって言葉が頭にこだまする中、私たち三人は校舎へと入ってった。