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【58】まだ分からないの?


 尋ちゃんと電話しながら階段を下りているとあいちゃんが見えた。

 木に寄りかかってしゃがみこんでいるから顔は見えないけど、確かにあれはあいちゃんだ。


『――あたし、今から急いで大学に戻るよ』


 電話が切れるなりあいちゃんの所まで私は走った。


 こんなに近くにいたんだ。尋ちゃんは昼休みから捜してたのに……




 走って近づいてくる足音と荒い呼吸に気付いてあいちゃんが顔を上げた。


「望美ちゃん!?」


「あいちゃん、あのさ……」


 私が言いかけた時、あいちゃんは目をそらした。


「ちょっと睡眠不足でここで寝ちゃっただけなの。じゃあね、もう帰るね」


 大きな木の根元からバックを拾い上げたあいちゃんは私に背を向けたまま歩き出す。


「待って!」


 あいちゃんを追いかけて回り込んだ。


「あいちゃん……どうしたの?」


「どうしたのって何が?」


 目をそらしながらも平坦な口調で返すあいちゃん。


「ちょっと前からあいちゃんの様子がおかしいなって……尋ちゃんも私も心配してるんだよ」


「心配?」


「そうだよ。今日だってあいちゃんがいなくなっちゃったから、尋ちゃんは昼休みからずっと捜し回ってるんだよ」


「…………」


「何かあったんでしょ?私たちに話して。絶対力になるから、ね?」


 小刻みに震えてるあいちゃんの手を包んでそう言うと、あいちゃんがようやく目を合わせてくれた。


「もうすぐ尋ちゃん――!」


 パッと手を振りほどかれた。

 あいちゃんは一歩下がって私から距離を取る。


「何があったの?私たちが力になる?――まだ分からないの?」


 あいちゃんの目にうっすらと涙が溜まる。


「分からないの?ってどういう……」


 どういう意味なの?

 私も尋ちゃんも全然分かんないよ。


「望美ちゃんと尋ちゃんじゃ私の力にはなれないよ」


「そんなことないよ!私も尋ちゃんもあいちゃんのために頑張るよ」


「…………」


「だって私たち友達だよ。友達のためなら何だって――」


「原因がその友達でも?」


「え……?」


 原因がその友達って――私と尋ちゃんのこと?

 私が原因?

 そんな……私、あいちゃんに何も――


「尋ちゃんも望美ちゃんも……ヒドいよ」


 絞り出したような震えるあいちゃんの声で、胸が締め付けられたような感覚がした。




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