【57】二人の行方
午後の講義に行くと、あいちゃんも尋ちゃんもいなかった。
一番後ろの席に一人で座ってると、澤田君が斜め前の席に座り、私に話し掛けてきた。
「桐生たちと何かあったの?来てないみたいだし、昼休みに桐生があっちこっち走り回ってたし」
「尋ちゃん、走り回ってたの?」
「すんげーキョロキョロしながら走ってたぜ。てっきり橘さん探してんのかと思って、図書館にいるって教えてもシカトしてくし」
頭をかきながら疑問符を浮かべる澤田君。
もしかして尋ちゃん、あいちゃんのこと捜してる?
講義が始まる前に電話をかけた。
まず尋ちゃんに。
『――留守番電話サービス……』
何コールしても尋ちゃんは出なかった。
あいちゃんにも電話をかけたけど、電源を切っちゃってるみたい。
「橘さん、どこ行くの?」
席から立ち上がっった私に澤田君が声をかけてきた。
「二人を捜しに行くの」
「捜すったって、ケータイ繋がんないんだろ?闇雲に捜しても……ほら、先生も来ちゃったし」
「でも……」
「何があったか知らないけど、二人のためにこの講義のノートしっかり取っておいた方がいいと思うぜ」
澤田君に言われて、講義も始まっちゃって、教室を出るタイミングを逃した。
一応メールも送っておこう。
講義が終わっても二人からのメールは来てなかった。
「オレも捜そうか?」
「え、あ……」
澤田君まで巻き込んじゃっていいのかな。
「ううん、私だけで大丈夫だから。じゃあね」
澤田君はそっかとだけ言うと教室を出て行った。
尋ちゃんはあいちゃんを見つけられたのかな?
澤田君の言うとおり闇雲に捜しても……でもそれしか方法はない。
まずは校舎の中から捜そう。本館にも別館にもいなければ体育館も講堂も図書館も捜そう。駐車場だって自転車置き場だって捜す。
大学内にいなかったらあいちゃんのマンションにも行く。街中も捜す。
電話だって何度でも――
ケータイの着信音が鳴っている。尋ちゃんからだ。
「もしもし、尋ちゃん!?」
『し、心配、かけちゃって……ご、ごめん、ね』
息切れしているのか呼吸が荒くて言葉が途切れとぎれだ。
「あいちゃんを捜してるの?」
『うん。でも、全然……見つからなくて……今あいちゃんのマンションに行ったんだけど居なくて……』
いつも明るく元気な尋ちゃんの声とは思えないぐらい震えている。
「尋ちゃん大丈夫?私もあいちゃん捜すから、ちょっとでも休んで」
『ありがとう……でもあたし大丈夫だよ。これからちょっとこの周辺を捜すね』
「うん……あっ、待って!」
『どうしたの?』
「いた――あいちゃん……」