【51】友達から……
ファミレスの入り口前で車から降ろされ、澤田君だけが駐車場に向かった。
先に入って注文していいよと言われたものの、こういう場合は何を頼めばいいのか分からない。
ファミレスには家族でご飯を食べる時にしか来たことがない。
友達と行くのはハンバーガー屋さんかドーナツ屋さんばかりだったし……
何より初対面の人がいるし……
尋ちゃんのマネをすれば大丈夫かな?
「あたしトイレ行ってくるから、先に注文しちゃってて――」
そう言って尋ちゃんは席に着く前にトイレに行ってしまった。
「…………」
私、何でこうして初対面の人とファミレスで向かい合って座ってるんだろう……しかもいきなり二人にされちゃったし……
何か話しかけるべき?
それとも何か注文するべき?
「あの……」
「え?」
藤枝君が何かを言おうとしている。
「せっかくの休みに付き合ってもらちゃってごめんね。実はその……澤田に相談したら協力してくれて……」
何だろう、この空気。私よりも藤枝君の方が緊張してるみたい。
「俺……入学してすぐの頃から橘さんのことが気になってたんだ」
顔を赤くしながらそう言った藤枝君。
私はメニュー表を持ったまま固まってしまった。
ポカンと開けっ放しの口からは何も発せない。
少しそらされていた藤枝君の目が一直線に私の目と重なった。
まばたきすらできない。
「いきなりこんなこと言ったって橘さんを困らせるだけだって分かってる。だから、まずは……俺と友達になってくれませんか?」
「…………」
ピクリとも動かなかった私の体は、沈黙の後、首を縦に振った。
藤枝君とケータイのメアドを交換し終わるのと同時に澤田君と尋ちゃんがやってきた。
「わりぃ、わりぃ。駐車にすんげー手間取っちまってさ」
「トイレが掃除中だったから近くのコンビニまで行ってたの……って、ジュースだけ?望美ちゃん、パフェとかケーキも食べよーよ」
私の隣に座るなり尋ちゃんは店員さんにパフェを四人分注文した。
「おい、俺たちの分まで頼んだのかよ」
「別にいくつ頼んでもいいでしょ?食べない人の分は私が責任持って食べてあげる。どうせ澤田君の奢りだし〜」
尋ちゃんがニヤリと澤田君を見る。
澤田君は何か言いたそうに口を開いたけど、藤枝君をチラッと見ると引きつった笑顔になった。
「そうです。僕が奢りますからどーぞパフェを味わって下さい!」
尋ちゃんはこっそりと私にVサインをした。