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【47】みんなのもの


 間をためてから尋ちゃんは口を開いた。今にも笑い出しそうな顔をして。


「スッゴくかわいい顔だった」


 へ?……うん、確かにそうですけど……


「それで、わあーこんな男子いたのかーって思ってたら、あっさり問題解いちゃったの!カッパも私たちもびっくり!その時はまだみんな吉岡君の名前知らなかったんだけど、カッパが遅刻を取り消すために名前を聞いたから一気に知れ渡ったってわけ。顔よし!頭よし!ファッションよし!おまけに最後に見せたあのちょっと恥ずかしそうな笑顔!」


 尋ちゃんの声が高くなり、目を輝かせて言った。


「あれでもう女子のハート鷲掴みよ!講義が終わった途端に色んな子が吉岡君に声を掛けまくってたんだから」


「尋ちゃんもその一人だけどね」


「違いますー!あたしが落とした学生証拾ってもらったから、ついでにお友達になろうと――あいちゃんだって吉岡君と話してたじゃん」


 きゅーっと胸が締め付けられた。


 ほんのちょっと前まで吉岡君の友達は私だけで、吉岡君との会話も笑顔も私だけのものだって思っていた。

 なのに、私が数日いなかった間に吉岡君には友達がたくさんできてて、吉岡君の笑顔もみんなのものになっちゃった……


 本当は今日、二人に吉岡君のことを話そうと思ってたのに、二人の方から教えてもらっちゃったな……


「うっしゃーっ!」


 突然尋ちゃんがガッツポーズをして叫んだから、驚いて顔を上げた。


「何!?」

「どうしたの!?」


 私とあいちゃんの問いにVサインを出して笑う尋ちゃん。

 もう片方の手にはケータイが握られている。


 ケータイ?メールとかで何かあったの?


「懸賞でKaTのライブのペアチケット当たった!」


「おー、サンキュー!そんなに行きたきゃオレが一緒に行ってやるよ」


 尋ちゃんの大声を聞きつけたのか、澤田君がいつの間にか現れた。


「はぁ?誰がアンタなんかと行くのよ」


「でもそれペアなんだろ?」


「誘う相手は最初から決めてるんだから!澤田君はお呼びでないの。しっ、しっ」


「うわ桐生ヒドっ!生野さんもそう思わない?」


 突然話をふられたあいちゃんは耳を赤くして、小さな声でそんなことないよと答えた。


 あいちゃんの様子がちょっとさっきまでとは違うような気がする。


 澤田君が去ってから、あいちゃんが普段通りの口調で話題を変えた。


「そういえば、吉岡君、望美ちゃんのこと知ってるみたいだったね」


「えっ、でもあたしたちが吉岡君のこと知ったのが、望美ちゃんが休んだ日だよ。いつの間に?」


 二人の顔が私を向いた。


「私は……」



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